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大山加奈選手、岩隈久志選手、ライコネン選手、浅田真央選手、阪神タイガース他好きなものがいっぱい。幸せ気分を発信したいな

家族のできるまで(4)

2009-12-09 21:20:22 | リョウマくん


 キョウコさんはリョウマくんを連れてお散歩に行くことにしました。
リョウマくんの洋服は、病院へ行く時用に買ってあります。リョウマくんがいつまでいるのかわからないので、とりあえず2着だけです。
キョウコさんはそのうちの一着をリョウマくんに着せて、出かけようとしました。
リョウマくんは何だか靴が履きにくそうです。見ると、随分小さいようです。
キョウコさんはまず、リョウマくんを靴屋に連れて行きました。

靴屋のおじさんは、ものをはっきり言う人です。
「お母さん、だめじゃない。こんなに小さくなるまで履かせてたら。それに、何、そのつぎはぎだらけのぬいぐるみ。新しいの買っておやりよ」
キョウコさんは、ちがうんだけどなあ、と思いましたが、事情を説明するのも面倒なので、適当に頷いていました。
おじさんは、リョウマくんの足より少し大きめの靴に中敷きを敷いてくれました。
「きつくなったら、これをとれば、もう少しはけるよ。このぐらいの子供はすぐ大きくなるから、こまめに見てあげないといけないよ」
新しい靴は、晴れた日の空のような青い靴でした。
キョウコさんはリョウマくんの手を引いて、道端の花を見ながらぶらぶら歩いて行きました。
花の名前はよくわからないので、
「かわいい実だね」とか、



「春の花みたいで、きれいだね」とか、



 
「秋っぽいね」とか、言っていきます。
リョウマくんはクマさんを抱いて黙って歩いています。

小さな子供を連れて歩くのは、意外と神経をつかいます。
後ろから車が近づいただけでドキッとします。
キョウコさんは早く帰りたくなりました。

やがて、おうちに着きました。
キョウコさんちにも、猫の額ほどの小さな庭があります。
キョウシロウさんもキョウコさんも、ガーデニングに精を出すような性分ではないので、どこかから種がとんできて、勝手に芽吹いた草花ばかりです。



クローバーは、滅多にむしられないので、大きな顔をしています。
隣に咲いているのは、キョウコさんが勝手に「こんぺいとう草」と名付けている草です。
ピンクと白のこんぺいとうのような花をつけています。
一年中咲いていますが、春になると花の数も増え、色も鮮やかになるので、きっと春の花なのでしょう。

その晩、リョウマくんはこの家に来て初めてお風呂に入りました。
リョウマくんはなぜかお風呂をこわがって、なかなか入ろうとしなかったのです。
この時も心配そうにキョウシロウさんを見上げて、何度も「顔つけない?」と聞きました。
「顔なんかつけねえよ。こわかったら、おれにしがみついてな」
リョウマくんは言われた通り、湯船の中でキョウシロウさんの首にしがみつきました。
キョウシロウさんも、リョウマくんが安心できるよう、しっかり抱いてやりました。
お風呂から上がると、キョウコさんが体をふいて、薬を塗ってくれました。
キョウコさんが薬のふたをあけると、リョウマくんは「ぬりぬり」と呟きました。
「そうだよ。ぬりぬりしようね~」

 ぬ~りぬりぬり ぬ~りぬりぬり

リョウマくんも、小さな声で歌います。

 ぬ~りぬりぬり ぶたのしっぽ

ぬりぬりが終わると、ぱふぱふです。
リョウマくんは「ぱふぱふ~」と気持ちよさそうに言いました。

それから二日ほどして、来客がありました。
スーツに身を包んだ男女の二人組です。
何だろうと訝るキョウコさんに、男性の方が言いました。
「わたしたちは児童相談所の職員です。こちらで子供が虐待されていると聞いたものですから」
(虐待?)
思いもかけないことを言われて、キョウコさんは目が点になって固まってしまいました

(つづく)