BE HAPPY!

大山加奈選手、岩隈久志選手、ライコネン選手、浅田真央選手、阪神タイガース他好きなものがいっぱい。幸せ気分を発信したいな

殿、見参!

2016-03-01 20:43:49 | 殿


 もはや覚えていらっしゃる人の方が少ないかもしれませんが、うちのゆるキャラ、クマたんとキョコタンちの近所には時空の穴が開いていて、戦国時代とつながっています。
二人はその穴を通じて時々21世紀に遊びにくる明騎野(あきの)の国の殿様と仲良しです。
21世紀に来ても、歴史を変えるようなことはできないので、殿のなさることというと…


      クマキョコと一緒に大河ドラマを見る


あと、スポーツ観戦なんかも時々なさいます。
特にごひいきチームはないようですが、赤いユニフォームのチームを見ると、「ここは赤備えか」と興味を引かれるようです(^^ゞ
今年の大河は戦国ものなので、殿は色々参考になるようです。
明騎野の国も小さいので、殿は、「わかる、わかるぞ、昌幸殿~」と、昌幸様のご苦労に共感しているご様子。

ところで、クマキョコはどちらも頭のつくりがシンプルなので、昌幸様の知謀についてゆけません(@_@)
殿なら、くさっても戦国人なので、かみくだいて説明してくれるかも…

 「殿、前回のはどういうことだったのか、もう一度説明して下さい」
「北条がだまされたことしかわからんかった~

「だから、最後に説明しておられたであろう。あの通りじゃ」

殿も本当にわかっているのかはさだかでない…

GO

2011-01-09 21:26:53 | 殿


 大河ドラマ『GO』。
くの一3姉妹が戦国の世を舞台に大活躍する予定です。
彼女たちが使えるのは、あのお殿様。
最初のミッションは、今日から始まるNHKの大河ドラマ『江』の内容を探ってくること o(・_・= ・_・)o
さっそく、長女が時空の穴を抜けて21世紀へ行き、第一回を見てきました。

大河ドラマでも、連ドラでも、ヒット作の後は、「もう次のは見ない」と思ってしまうものですが、『ゲゲゲの女房』の次の『てっぱん』が面白いように、『龍馬伝』の次の『江』も面白いかも。
主人公の江は、浅井長政とお市の方の間に生まれた三姉妹の末っ子。
茶々は後の淀君、江は二代将軍秀忠の妻となります。
第一回は、鈴木保奈美演じるお市の方が長政に嫁ぐところから、浅井家の滅亡まで。
大河ドラマはいつも序盤がまったりとしているのですが、今回はいきなりスピーディーな展開でした。
何より印象的だったのは、配役がすごく適材適所だなあということ。
信長、秀吉、長政、光秀、どれも「まさにこの人」という感じがしました
成長後の三姉妹はまだ予告映像しか見ていませんが、これもなかなかはまっているようです。
この後の歴史の流れを知っていると、彼女たちの前途に待ち受けている運命の厳しさが思い遣られますが、三人とも強さを持った女性のようなので、凛々しい「女のいきざま」を見せてくれたらなあと思います

「…というわけで、なかなか面白うそうだと思われます」
「そうか、そうか、また戦国時代に人気が集まりそうか?」
「おそらく」

殿はご機嫌で、お手当をはずんで下さいました。
でも、次はもうちょっと忍びらしい任務をお願いしますね ヾ('-^*)

雪兎

2010-01-21 21:48:08 | 殿


 安住の侵攻を撃退して明騎野に平和が戻って少し経ったある日のことです。
於京さんが戦後お見舞いにやってきました。
実を言うと、安住が明騎野に攻め入ったと聞いた時、甲子屋では、明騎野への売掛金はこれでパァだと覚悟したのです
ところが、まさかの勝利だったので 於京さんは戦勝祝いに、樽酒と豪華おつまみセットを持って行きました。
「こたびのご勝利、まことに祝着にございます」m(_ _)m
城では早速大宴会が開かれ、村人達にも酒がふるまわれました
於京さんは、今回の戦いで壊れた武具の修理や、新しい武具の注文をたくさん受けて、ほくほくして帰って行きました

温暖な明騎野ですが、この日は画像の都合上積雪があったことにします
また寒くなるようなので、皆様もお体気をつけて下さいね



明騎野戦記(後編)

2010-01-18 21:57:29 | 殿


 山名隊は明騎野のおとり部隊と交戦しながら、少しずつ飛水城の南門に向かって進んで行きました。
城に近づくにつれて道は細くなり、一列縦隊でしか進めなくなりました。安住軍にとっては多勢の利が生かせなくなりますが、今回は人数が少ないことを気取られずにすんで好都合です。
山名は城に近づきすぎないよう軍を塩梅しながら、檜垣隊が東門を破った合図ののろしを待ちました。

檜垣隊の前にそびえる東門はしんと静まりかえっています。門の手前に、防御柵のつもりなのか、申し訳程度の生け垣が設けられています。
安住の騎馬武者達は、そんなもの蹴散らしてしまえとばかりに突進しました。
城門が眼前に迫った時、突然、生け垣が火を噴きました

殿は朝早く、守備兵の大半を東門側に移動させました。
生け垣の陰に鉄砲隊を隠し、残りは城内にこもって息をひそめていました。
鉄砲隊には、合図があるまで撃たないよう厳命しました。
夜明けと共に、檜垣隊が迫ってきました。
騎馬隊がぐんぐん近づいてきますが、殿はまだ合図を出しません。
先頭の騎馬の蹄が生け垣にかかろうかという時、殿は「撃て!」と采を振りました。
十分に敵をひきつけたところで一斉射撃をしたので、面白いようにあたります。一発撃つと、お手軽部隊が弾ごめのすんだ銃を射手に渡します。檜垣隊の騎馬武者はばたばた倒れました。
檜垣重正はやむなく一時撤退を命じました。
敵が射程圏外まで後退すると、殿はすぐさま鉄砲隊を城内に戻しました。替わってお手軽部隊が、第二派の攻撃に備えて準備をほどこしました。

東門の銃声は山名時忠の耳にも届きました。山名は首をそちらに振り向けましたが、合図ののろしは上がりません。
発砲したのが敵であれ味方であれ、銃声がするということ自体、不測の事態が起こったということです
山名は足軽鉄砲隊に東門の様子を見に行かせることにしました。状況を見定めるとともに、味方が危地に陥っているようなら、横合いから援護射撃をさせるのです。
足軽達は連絡道に駆け入りました。行く手をふさぐ丸木の大柵に手をかけ、息を揃えて押し倒します。よいせ、よいせ。
威助どんは、丸木に、忍びの使う糸刃(ワイヤーカッターのようなもの)を結び、それをあらかじめ削っておいた岩の根本に回しておきました。敵兵が柵を倒そうと押すたびに、糸刃がぎこぎこ岩の根を削ります。柵が倒れると同時に、大岩が崖から切り離されて、敵兵の頭上に転がり落ちました。
ろくに戦闘もしていないうちに損害が出て、山名は呆然としました。
自分達にも城方がどんどん弓矢と鉄砲をうちかけてきます。山名はしかたなく、いったん後退し、東門側の様子を確かめることにしました。

檜垣隊は態勢を立て直すと、鉄砲足軽、弓足軽を先頭に再び東門に向かいました。彼らに敵の鉄砲隊をいすくめさせておいて、騎馬隊が突進するのです。
足軽達は鉄の盾をかざして進みます。明騎野は小国のわりに鉄砲の保有数が多いので、弾防ぎを用意してきていたのです。
先頭の足軽が、地面に張られた紐に足をとられて倒れました。土の色と同じ色の細い紐だった上に、鉄の盾が目隠しになって、気づかなかったのです。紐は脇に立つ大木の枝に結ばれています。紐が引かれて枝が折れ、枝にはさまれていた丸太がどどっと落ちてきました
後続の足軽が大急ぎで丸太をどけて仲間を助けようとしました。檜垣は、彼らに叫びました。
「ええい、道をあけろ! 丸太などそのままでよいわ!」
檜垣には焦りがありました。今回の作戦は、檜垣隊と山名隊が手早く飛水城を落とすことが前提になっています。ここで手間取っていると、本城を攻撃している主君の軍も危険にさらされます。檜垣は馬にむちをくれ、丸太の山をひらりと飛び越えました。騎馬武者達が次々と後に続きます
ところが―
ちょうど着地するあたりの地面に鉄びしがまいてあったから、たまりません。馬が倒れ、武者達も地面に放り出されました。檜垣の側近の時任継義(ときとうつぐよし)は何とか丸太の山の手前で馬を止め、後続を停止させました。丸太の前後で軍が止まってしまったところへ、城壁の上から銃火が降ってきました。
殿は、ひとしきり銃撃を浴びせると、城門を開いて討って出ました。敵はたまらず逃げ出しました。どんな強敵でも逃げる時は不思議に易々と討てます。殿は、首はとらずに一人でも多くの敵兵を戦闘不能にするよう命じました。
敵が一定の距離まで後退すると、殿はひき鉦を叩きました。深追いは禁物。なんといっても、相手の方が人数が多いのです。調子に乗って追いかけて行くとこちらがやられてしまいます。

檜垣隊は例の崖道のところまで退却しました。崖の上に、南門から退却してきた山名隊の姿があります。山名が馬を巧みに操って崖道を下りてきました。
「どういうことだ。東門にも兵がいたぞ
「どうやら、われらは明騎野にはめられたようだな。小幡は寝返るふりをして、われらをたばかったのだ」
二人は歴戦の強者らしく、すぐに次の方針を打ち出しました。明騎野勢が彼らの逆をついたのなら、南門の方が兵力が少ないはずです。二隊は合流して、手薄な南門を破ることにしました。崖道を上れる者だけ大急ぎで上らせて、南門に向かって突進しました。

このなりゆきに、一番驚いたのは勘解由でした。
自分の策通りに準備が行われていたことを、ちゃんとこの目で確かめたのに、これは一体どういうことでしょう
お手軽部隊は、南門の防護柵と一緒に東門の柵も作っていました。骨組みだけならどちらも同じなので、勘解由が別の場所を見分している隙に、東門の分はそちらへ持って行って艤装を施したのです。
勉強と称して勘解由につきっきりだった若侍は、実は東門の作戦準備を勘解由に気づかれぬよう、彼を誘導する役割でした。大岩の細工や、丸木の罠を仕掛ける時は、彼が勘解由を上手く別の場所に連れて行ったのです。
兵を移動する時は、殿と正木老人が、最後の手順確認といって軍議を開き、彼を足止めしました。
勘解由が神経をとぎすませていれば、あるいはその動きに気づいたかもしれません。しかし、勘解由は殿を甘く見ていました。ひよわで脳天気なバカ殿とばかり思っていたのです。
勘解由は、明騎野を手土産に安住に召し抱えられるという野望が潰えたことを悟らざるをえませんでした。もちろん、明騎野にとどまることもできません。彼に出来ることは、何とか明騎野を脱出することだけです。また浪人に逆戻りですが、命があれば再びチャンスがめぐってくるかもしれません。

山名・檜垣の両隊は、南門に突撃しました。
白兵戦になれば、安住武者は一騎当千。明騎野勢を破る自信はあります。檜垣は、南門に攻め入ったら、城に火をかけるつもりでした。できれば飛水城は無傷で手に入れたかったのですが、既に大幅に段取りが狂っています。本軍との連携を考えると、力業でもいいから、とにかく早く飛水の城兵を黙らせなければなりません。
連絡道の脇を風のように走り抜けた時、突然大地に大穴があきました。
先鋒の騎馬が落とし穴に落ち、後から来た騎馬は穴に落ちた味方に躓いて転倒しました。
大岩のあった連絡道の崖上に明騎野兵が現れ、安住軍の側面を攻撃してきました。城の中からこの崖の上に出られる通路がつくられているので、東門の兵がそこを通ってかけつけたのです。こういう小国の山城は、天然の地形を上手く利用して作られているものです。
さしもの安住兵も大混乱に陥りました
特に、年若い兵や、下級の兵は、指揮官の命令もきかず一目散に逃げ出しました。彼らには、飛水城に続く道が生き物のように自分達に襲いかかってくるように感ぜられたのです
上級武士達は何とか秩序を保って退却していますが、飛水城攻めは完全に失敗です。伝令がこの事態を本軍に伝えるべく疾走しました

本城を守っている大殿様と茶飲み友達は、安住軍の猛攻に懸命に耐えていました。
こちらも少ない人数で何とか敵に損害を与えるべく、工夫をこらしていますが、安住勝利も智慧のある武将です。大軍を巧みに駆け引きして、火のように攻め立てます。城方は押され気味です
不意に、敵方の圧力が弱まりました。敵の旗が反転し、安住軍が後退し始めました。
城方は何が起こったのかわかりません。罠かもしれぬと慎重に敵の動きを見守っていました。
敵はどんどん後退して行きます。どうやら安住に帰って行くようです
城方は知らないことですが、飛水城攻めの失敗が総大将に伝えられたのです。明騎野勢を挟撃するどころか、このままでは自軍の側面や背後を衝かれかねません。安住勝利は引き際を心得た大将です。即座に撤退命令を出しました。

こうして明騎野は危機を脱しました
この合戦の戦功第一は殿とされました。身内に内通者を抱えながら、安住軍を撃退して城を守ったのです。大殿様は大喜びでほうびの金銀を下さいました
殿はそれを家来一同で頭割りにしました。一人ずつ名前を呼び、ねぎらいながらほうびを授けました。「あの生け垣はよくできていたな」「あんな大穴をよく短時間で掘れたな」「そちの射撃はまことに正確であった」等々。
最初は、「おれの方があいつより働いたのに、頭割りなんて不公平だ」と思った者も、殿の言葉を聞いて、「なるほど。あいつも活躍したのだ」と納得しました。中には、「おれそんなにすごいことをしたのですか?」と驚いている者もいます。でも、したのです。みんなで勝ち取った勝利です

勘解由はいつのまにか姿を消していました。
こういうキャラクターはしぶといので、また思いがけないところで名前を聞くかもしれませんね

(おわり)



明騎野戦記(前編)

2010-01-17 21:05:18 | 殿


 戦国時代も新しい年を迎えています。
殿の国、明騎野(あきの)は新年早々危機に見舞われています。

明騎野は小国ですが交通の要衝に位置しているので、近隣諸国は都に旗を立てるにはまず明騎野をとるべしと考えています。
特に隣の強国、安住(あずみ)は、虎視眈々と明騎野を狙っていますが、国境に聳える険しい山に阻まれ、なかなか攻め込めません。
その安住が、年明けと共に、せっせと明騎野攻めの仕度を始めたのです。
どうも、明騎野の軍師、小幡勘解由(おばたかげゆ)が安住に内通しているらしいという、ただならぬ情報が殿と家老の正木宗衛門(まさきむねえもん)にもたらされました。
勘解由は、大殿様の参謀として何度も軍功を立て、その信頼は絶大です。しかし、数ヶ月前、兵糧米の横流しがばれて、国境の小さな砦の守備に左遷されてしまいました。安住はそれに目をつけて、勘解由に接触したようです。
左遷されてくさっていた勘解由がこれに応じ、安住は彼から内部情報を得て、今が好機と戦の準備をしているのでしょう。
殿は父の大殿様にこの情報を伝えましたが、大殿様は勘解由の裏切りを認めたくないご様子です。それでいて、思い当たるところもあるらしく、結局、勘解由には本城ではなく、支城の飛水城(ひすいじょう)を殿と一緒に守らせるという中途半端な措置をとりました。大殿様はこのところ病気がちなせいか、優柔不断になっているのです。

飛水状の守備を任された殿と正木老人、勘解由らは早速軍議を開きました。
勘解由は、城の南門に軍備を集中させるべきだと進言しました。
安住から飛水城をせめるには、南門と東門の二通りの道筋が考えられるのですが、東門に通じる道はところどころひどく狭くなっていて、進軍に適しません。安住はおそらく南門に通じる道を選ぶでしょう。飛水の守備兵は小勢なので、これを二手に分けるよりも、一箇所に集中させた方がいいと思われます。
勘解由は、敵を確実に南門に導くためにおとり部隊を出し、南門に向かって退却させながらおびきよせるという策を立てました。南門の前には千鳥掛けの柵をつくり、敵がもたつくところへ弓と鉄砲をうちかけます。城壁に辿り着いた敵は、頭上から丸太を落として追い落とします。
実にもっともな作戦なので、誰も文句をつけられません。
飛水状の兵達は、勘解由の作戦に従って準備を始めました。

戦仕度となると、お手軽部隊が大活躍します。
熊谷入英直実(くまがいニューウェイなおざね)は、千鳥掛けの柵を作り終わり、今は鉄砲隊が銃撃するための柵を作っています。
殿は、後ろに鉄砲隊がいることがわからないよう艤装しろと命じたので、直実は木の枝や葉で柵を隠しました。苦労したのは銃眼の配置です。あまり規則的に並べると敵にわかってしまいますし、かといっててんでんばらばらでは鉄砲隊が撃ちにくくなったり、射撃の効果が薄れてしまいます。
直実は、鉄砲隊に、立って撃つ者、中腰で撃つ者、腹這いになって撃つ者に分かれて貰うことにし、何とか自然な感じに銃眼を配置しました。

林威助(はやしいすけ)どんは、丸太の罠の作製を命ぜられました。
大木の枝に丸太をはさみ、枝の先端に紐を結びつけて、地面に張ります。敵がこの紐に足をひっかけると、枝が折れて丸太が敵の頭上に転がり落ちるという仕掛を工夫しました。
南門の手前には、東門への道へ続く連絡道があります。敵にここを利用されないよう、威助どんは丸木の大柵でふさぎました。連絡道に面した崖には、一部が張り出した岩場があります。威助どんはそれを見て、いいことを考えつきました

小幡勘解由は、内心ほくそえみながら、戦の準備を見分しています。
勘解由の献策は決して間違ったものではありません。安住が普通に攻めてくればこの作戦で十分撃退できるでしょう。
しかし、今回は自分が内通しています。
大殿様は、初めて一軍を指揮する若殿の参謀になってくれと言っていましたが、飛水城の守備に回されたことで、疑いをかけられていることは何となくわかります。勘解由はこの戦いのどさくさに紛れて、明騎野を退転するつもりでした。
明騎野は、どんなに身分が低い者でも意見を言え、いいと思えば採用して貰えるという家風があります。勘解由も流れ者でしたが、大殿様に意見を取り入れて貰い、何度も勝利に貢献しました。今では譜代の重臣に劣らぬ身分に取り立てられています。
それなのに、あの程度の横流しを咎められるとは、と勘解由は腹立たしくてなりません。
(まあいい。どうせこんな小国にいてもたかが知れているのだ。それに比べて、安住は大国、当主は天下に野心満々だ。うまくいけば、天下分け目の大戦で、思う存分腕をふるえるかもしれぬ)
飛水城の南門に続く道の途中には、東門への道に下りられる抜け道があります。道ともいえぬ崖道ですが、軍というのは、馬の蹄を置ける余地さえあれば何とか移動できるものです。勘解由は、夜のうちにそこを通って、飛水城攻撃隊の大半を東門への道に移動させるよう、安住に伝えていました(連絡道をつかえれば一番いいのですが、そこだと明騎野勢から丸見えですからね)。
残った一部は陽動部隊として、明騎野軍の作戦に引っ掛かったふりをし、南門に向かわせます。この部隊は、東門から攻め入られたことに明騎野勢が気づいた時、彼らがそちらへ向かえないよう足止めする役割があります。
こうして、無防備な東門からやすやすと攻め入った部隊と、陽動部隊が、明騎野勢を挟撃して殲滅するという作戦です。彼らが飛水城を占拠する頃には、安住勝利(あずみかつとし)率いる本軍が明騎野の本城に迫っているはずです。飛水城攻撃隊は、今度は本城を背後から衝き、本軍と連携して本城を落とすという段取りです。
何も知らない明騎野勢は、せっせと南門の防備を固めています。
若殿の側近の若侍が、それを見ながら、勘解由にあれこれ質問してきました。この青年は、思いがけず勘解由と同じ陣で戦えることになったので、少しでも彼から軍略を学ぼうと、つきっききりで教えを乞うているのです。
この若者も、この戦で戦死する運命だと思うと、憐憫の情がわいてきて、勘解由は親切に質問に答えてやりました。

いよいよ安住軍が攻めてきました。
飛水城攻撃の司令官檜垣重正は、東門へ続く道に軍を整列させました。
夜間に険しい崖道を移動するのは非常な難行でしたが、強国安住の軍勢は粛々と遂行しました。
一方、山名時忠率いる陽動部隊は南門への道を行軍して行きます。
夜が明け、朝霧が晴れれば戦闘開始です。
風に吹き流される霧の向こうに、明騎野のおとり部隊が現れました。

(つづく)

茶飲み友達の逆落とし

2009-08-03 20:02:13 | 殿


 殿の同盟国に敵が攻めてきました。
敵は大軍。城の四方をひしひしと取り囲んでいます。
殿は援軍を差し向けたのですが、蟻一匹はいる隙間のない重囲になすすべもありません。
ただ一つ、敵の背後を衝ける場所があるのですが、そこは屏風のようにそそりたつ断崖絶壁。
義経の逆落としもかくやという難所です。
義経は、「鹿が降りられるところを馬が降りられないはずはない」と言ったそうですが、この絶壁は…

鹿もひいています

「御大将、これはもう無理でございます。残念ですが引き上げましょう」
と、家老が進言します。
殿の家来は皆、「無理をしない」「自分のペースでゆっくりと」がモットーなので、困難が立ちふさがるとあっさり引き下がってしまうのです。
あの主君にしてこの家来ありです

しかし、切り込み隊長の茶飲み友達は勇敢です。
茶飲み友達は家来に命じて、薄い板の上部を平坦に、下部をややふくらみをもたせて削ったものを馬の体の前後につけさせました。
さらに、馬の下腹部から後ろ足の間を通って上にはねあがるような形状の板もつけさせます。

「これをつければ、崖から転がり落ちることはねえから安心しろ。
行くぜ


そう言って、茶飲み友達が真っ先に崖を駆け下りていったので、家来達も仕方なく後に続きます。
すると…

不思議な力が馬の体を壁面に押しつけ、まるで平地を行くように崖を駆け下りることができました
思いがけないところから攻めてこられて、敵はびっくり仰天 大混乱に陥ります。
その様子を見た城方が、あうんの呼吸で討って出、両軍はみごと敵を挟撃し、さんざんにやっつけました

戦いが終わって、家来の一人が茶飲み友達に、あの不思議な力は何なのか訊ねました。

「馬にウィングとディフューザーをつけてダウンフォースを発生させたのさ
F1マシンのダウンフォースは、理論上は天井に逆さにはりついて走れるぐらいなんだぜ」


茶飲み友達の説明は家来達にはちんぷんかんぷんでしたが、一人だけ理解した者がおりました。

クマ谷入英直実(くまがいニューウェイなおざね)

「なるほど、馬の体の下を流れる空気の速度を速めて気圧を下げれば、下向きの力が働いて馬の体が地面に押しつけられるのですね」

彼はその後、板の削り方や角度を研究して、より多くのダウンフォースを得られるウィングやディフューザーを開発しました。

彼の祖先は、源平の戦いで敦盛の首をとった熊谷次郎直実。
子孫はおそらく、空力の天才エイドリアン・ニューウェイと、クマガイ博士でしょうね。

「またそんなデタラメを」
「クマガイ博士はともかく、エイドリアン・ニューウェイはいくら何でも無理があるのでは?

この戦いは、「茶飲み友達の逆落とし」と呼ばれ、末代までも語り継がれましたとさ。めでたし、めでたし…

「何がめでたしや。21世紀の技術が戦国時代に洩れもれやんか~
「その時歴史が変わった

四月一日

2009-04-01 19:00:00 | 殿

 北の方  西中島南方
あるいは
 北政所  淀屋橋の君


   ふしぎ男さんに頂いたローカルネタです。

「オチを知りたい人は大阪へ来て、地下鉄御堂筋線に乗ってみよう! 
「新幹線でおこしの方は 新大阪から中百舌(なかもず)行きにご乗車下さい」
「千里中央行きに乗っちゃダメだよ!」

ところで、殿。いつの間に側室まで…

「知らん! おれは独身だ 

北「まあ、殿ったら、おたわむれを。毎日膝枕してさしあげているではありませんか

西南(?)「あーら、殿はわたしのような、妹みたいな元気なおなごが好きなのよ。そう言って下さったわよね?

「……(全然身に覚えがない)

側室ばかりか、正室すら身に覚えのない殿。
でも、現に二人の女性が、



火花を散らしているのです。
これは一体、どういうこと?





ここで、種明かし。

「殿、エイプリルフール特別企画楽しんで頂けましたでしょうか?
提供は、あなたの暮らしに便利の花束 甲子屋でございます」


戦国時代にエイプリルフール? なんという南蛮かぶれな…


 今日から4月ですね。
4月は卯月の他に、花残月(はなのこりづき)、夏初月(なつはつづき)、清和月(せいわづき)ともいうそうです。
清和月というのは、いかにもフレッシュな感じがしますね。
「風光る」というのも、四月を表す言葉だそうです。
4月は何かと環境が変わることも多いので、わたしは何となくわさわさと落ち着かないイメージがあるのですが、瑞々しく輝く月にできたらいいなあと思います

エイプリルフールが日本に伝わったのは明治時代だそうです。
欧米では、この日についていいのはホワイトライ(罪や悪意のない嘘)に限られ、ユーモアを含んだ嘘が歓迎されます。
新聞などが何食わぬ顔で嘘の記事を紙面に混ぜ込んだりもするようです。
アメリカのラジオが「火星人襲来」のニュースを流したのも、たしかエイプリルフールだったんじゃないでしょうか。

殿がひっかかった嘘はホワイトライになるかな?

「結婚してたらシャレにならんけど、独身やからギリギリセーフちゃう?」

キョコたんはこのいたずら、許せるようですね。

「殿はどちらの女性がお好みですか?」
「おれは赤ん坊の時に母上と死に別れたので、年上の女性に弱いのだが、妹タイプも捨てがたいなあ…」

マザコンの上に優柔不断かい


ちなみに、四月一日と書いて「わたぬき」と読むこともあります。
こういう名字の方もいらっしゃるようですね。

それでは皆様、本年度も夜露志九

A happy this current year! 

殿と赤い跳ね馬

2009-03-30 21:27:12 | 殿

  「よそ見してると、ふり落とすわよ」

 昨日はブラウンGP効果か、アクセスも仏血義理でした
バトン様、バリチェロ様、ロス・ブラウン様、ありがとうございます。
もちろん、見て下さった皆様、どうもありがとうございます  m(_ _)m  m(u_u)m
今日はまたもローテーションの谷間なので、殿の登板です

「そのため息は何だ?」

いえいえ、人生もアクセスも山あり谷ありですよねっ
それでは、殿に愛馬「炎(かぎろひ)」との友情物語を聞かせて貰いましょう 


 炎は南蛮貿易で伊太利から日本に輸入された馬です。
もとの名前は「テスタ・ロッサ」というそうですが、戦国時代の日本人には耳慣れない名前なので、「炎(かぎろひ)」と改名されました。
足が速く、スタミナもあり、赤みがかった茶色の毛は汗で濡れると血のような真紅に見えます。まさに「汗血千里駒」。

炎はとてもわがままな馬です。
千里の駿馬の素質を持っているのに、人を乗せるのなんていんや~
鞍をつけようとしただけで、いやがって逃げ出します 
一人で自由に野を駆けるのが好きなのです。
食事にもこだわりがあります。
「今日はこの場所に生えている草が食べたい!」と思うと、そこ以外の草では満足できません。
ある日のこと、炎がお気に入りの野原を走り回ったあと、お気に入りの草を食べようとすると…

なんということでしょう。
炎が「今日はここ」と決めた場所に、人間が寝ているではありませんか 
もちろん、だからといって別の場所に生えている草を食べようなどと思う炎ではありません。
鼻先で人間を押してどかそうとしました。

「ん? なんだ? ここの草を食べたいのか?」

人間はKYなわりに察しがいいようです。すぐに起き上がってくれました。
しかし、炎が特に好きな草の先っぽは人間の着物にへばりついてしまっています。
もちろん、「それじゃあ、しかたないわね」と思うような炎ではありません。
人間の身体に口を押しつけ、へばりついた葉を食べ始めました。
人間は、またも炎の意図を察してじっとしてくれています。
炎はこの人間になんとなく好感を持ちました。

炎が人間にくっついた草をきれいに食べ終わると、よだれでべとべとになった人間はその場を立ち去ろうとしました。

「ちょっと待ちなさいよ。このあたしが好感を持ってあげてる以上は、一緒に遊ぶのが筋ってもんでしょう」

炎は前足を跳ね上げて、フェラーリのロゴのような格好をしました 
そして、その足を人間の両肩にのせて、その場に座らせました。
そして、人間をなめたり、蹄の先でつんつんしたり、肩のあたりを甘噛みしたり、鼻でふんふんしたりして遊びました。
気がすむと、今度は人間を背中に乗せて、またフェラーリのロゴのポーズをしてあげました。
鞍も手綱もないので本当は危ないのですが、炎は大サービスしているつもりです。
人間は乗馬が上手いようで、落馬もせず楽しそうに乗っています。

「あんた、やるわね。たいていの人間はあたしがこれをやってあげると落っこちちゃうのよ。それで、自分がヘタなのを棚に上げて、あたしのことをあばれ馬だっていうの」

炎はわがままだけど利口な馬です。
どうせ誰かに飼われなければならないなら、乗るのが上手い人のものになった方が得だわ。
こうして炎はその人間の愛馬になりました。
人間は殿様だったので、炎もいい扱いを受けられます 

もちろん、殿の愛馬になったからといって、おとなしく殿の言いなりになるような炎ではありません。
殿が「あちらへ行くぞ」というサインを送っても激しく首を振り、両者の間に長いサイン交換が行われることもしばしばです。

「そんなんで、戦の時に大丈夫なんですか?

戦の時は炎も殿のサインに従うようです。
だって、殿が負けて、乗るのがヘタな人の手に渡ったらいやですからね。
炎は長いスパンで損得勘定のできる、とても利口な馬なのでございます。



「まとめて話してよー」
「炎は草を食べようとして、殿の愛馬になりました」
「えー
「めでたし」


甲子屋方式

2009-02-27 23:18:41 | 殿
   陣羽織のカラーリングを変更しました

「景勝殿のような派手なのがよい」
「結局、この三色になるんだネ 

 
昨日ちょっと暖かかったと思ったら、今日は激寒。
天気予報によると、明日はまた暖かくて、今日より5度ぐらい気温が高くなるそうです。
季節の変わり目特有の寒暖の差ですね。
ものすごく寒い時よりも、案外こういう時に体調を崩しやすいので、皆様もお気をつけ下さいね。
自然は結構フェイントをかけるので、ひっかからないようにね 

虚弱体質の殿にはこの変化はてきめんで、風邪を引いて寝込んでしまわれました。
殿はしょっちゅう熱が出たり、腹痛をおこしたりするので、いつもお薬を持ち歩いておられます。
飲み薬だけでなく、湿布や包帯まで持ち歩いているので、さながら歩く薬局です
お城の殿のお部屋には、小さな引き出しがいっぱいついた薬箪笥があって、ありとあらゆるお薬が入っています。
おキョウさんは、殿の国へ来て間もなくの間は水が変わったこともあって、ちょっとお腹を下してしまいました。
殿は気前よく薬箪笥からお腹の薬を出して飲ませて下さいました。

「殿のお薬箪笥は見事なものでございますねえ。これだけたくさん引き出しがあると、どこに何が入っているかわからなくなりませんか?」

殿は体で覚えていらっしゃるようですが、おキョウさんは引き出しにラベルを貼ることを提案しました。
もし、殿が自分で薬を出せないほどお苦しい時に、いちいち何段目の右から何番目などと説明しなくても、他の人がすぐに出してあげられるようにというのです。

「甲子屋では、その人でなければわからないことは極力なくすようにしております。
台帳にはお客様ごとに、契約内容や進捗状況を書き込み、それを見れば他の者にもすぐにわかるようになっております。
また、仕事はできるだけ二人以上で担当し、一人が抜けても他の者がフォローできるようにしております」

「ほう、それはなかなかいいやり方かもしれんな」

だから、おキョウさんがこんなに長期間店を開けても、ちゃんと回っていくんですね。
というわけで、お城の薬箪笥には、おキョウさんがつくったラベルがきれいに貼られています。

「おキョウは字もきれいじゃな。ほんに、何でもできるやつじゃ」
「器用貧乏というものでございます。何か一つを極めろとよう言われますが、どうも自分にはそれができませぬので、それなら器用金持ちになろうと決めて、よろず屋を始めました」
「器用金持ちか。(そのガメツさなら)なれるのではないか?」
「ありがとうございます

ほめてない、ほめてない 

阪神の華―よろず屋於京事件帖

2009-02-25 22:13:16 | 殿

「殿のためなら戦うよ」
「言葉のわりにくつろいだ姿勢じゃな

「『巨人の星』…?」「『浪速の華』…?」

 殿と一緒に現代にタイムスリップしてきたおキョウさん。
殿に仕えているようですが、武士ではないようです。

「わたくしは西宮でよろず屋を営んでおります。屋号は甲子屋(きのえねや)と申します」

よろず屋というのは何でも屋。色々な特技を持った従業員がそれぞれの技をいかしてお客様のニーズに応えているのです。

「その中に腕のいい鉄砲鍛冶もおりました。その鉄砲鍛冶が急な病で亡くなり、台帳を見ると殿のご注文でオーダーメイドの鉄砲を一丁つくっていたことがわかったのです」

鉄砲はもうできあがっていたので、おキョウさんはそれを殿のもとへ届けに行きました。
性能的には当時の他の銃と違いはないのですが、狙いをつけやすかったり、台座の形がなにげに持ちやすかったり、細かい所に工夫があって使い勝手がいいのです。それに殿が注文した機能をいくつかつけ加えてあります。
殿は自ら試射なさり、そのできばえがすっかり気に入りました。

「気に入ればまとまった数を追加注文することになっていたのだがな」
「はい。台帳にその旨の覚書がありましたので、図面を持って参りました。お国の鉄砲鍛冶にこの通り作って貰えばいかがでしょう?」
「そうすると、わが国に秘伝が流れることになるが、それでもよいのか?」

おお、赤備えに六○銭と、パクリまくりの殿のお言葉とは思えませんね。
そして、おキョウさんは関西人でございます。

「もちろん、ただではやらんで(^-^)」

というわけで、殿の国の鉄砲鍛冶とライセンス契約が結ばれました。
おキョウさんは鉄砲ができあがるまで監修として殿のお国にとどまることになりました。
そんなに長く店を開けたのでは番頭さんが黙っていまいと思われたのですが、派遣期間中の生活費は殿持ちでそれなりのお手当も出るということなので、番頭さんは、

 人件費削減

になると、二つ返事で承認してくれました。

え? おキョウさん、店主じゃないの? それなのにリストラされちゃうの

「おキョウさん、悪いことは言いまへん。殿のところで正社員になりなされ~」
「たとえ派遣切りをされても、おキョウは自由な方がようございます」

というわけで、派遣労働者として殿の国に滞在しているおキョウさん。
よろず屋だけになんでもできるので、殿はお側から離しません。

「殿、わたくしは鉄砲作りのお手伝いにきているのです。契約外の仕事をするなら割増料金を頂きますよ」

どこまでもしっかりしているおキョウさん。
殿も今では要領がわかってきて、時空の抜け穴を通るときも、こう言ったそうです。

「おまえもついてきてくれぬか? もちろん、ただとはいわんぞ」
「喜んでお供致します

いつもニコニコ現金払いのおキョウさんです 

なるほど、それで未来での第一声は「まいど」だったんですね。

「それは、あとづけの理由だね」
「あの時は、何も考えんと言わせてんやろ?」

え? 誰が?