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アホノミクスへ最後の通告

2017-02-19 | 気になる本

浜矩子(2016)『アホノミクスへ最後の通告』毎日新聞出版社

 浜矩子は経済学者として、本音で発言している。沈黙するマスコミ、御用学者が増える中、日本の将来と国民の暮らし・利益を考えれば当然かもしれない。幼少期をイギリスで過ごし、その後もイギリスで仕事をしている。そんな経験が背景にあるだろう。

 「現在の日銀のマイナス金利政策は、何のためにやっているのか分からない。国債の利回りをマイナスにして、政府の債務負担を軽減するのが真の目的ではないか」。全く同感である。日本の経済・財政破綻を先送りして、将来の被害を大きくしているだけだと思う。「三菱東京UFJ銀行による国債のプライマリーディーラーとしての位置づけの返上で」、起こったのは当然でしょう。「企業の有り余る資金余剰と家計の細りゆく資金余剰で政府の強大な資金不足を吸収している」。国家は国民のために尽くすサービス事業者であり、国民に対する国家の背信行為である。「小さな政府の大きな赤字」である。無理に円安誘導しても持たないだけでなく、急速な円安が来て経済破綻の危険性を指摘している。この点も納得である。そのためには外貨を持つか、金を持つか庶民の対応も気にかかる。

 イギリスのEU離脱は、世論の予想に反して離脱が決まった。安倍総理の残留演説がかえって裏目に出たという説は興味深い。EUは戦争の歴史から反省して出来た要素もある。著者は通貨統一などEUに懐疑的であった。右翼的な潮流が伸びる中、EUの動向が見離せない。

 覇権国アメリカの衰退。戦後70年間、前半の冷戦体制化、後半の90年からのグローバル化に区分している。前半の71年のニクソン・ショックまでは「パックスアメリカーナ」が機能していた。EUも冷静構造が続くことを前提に、東欧諸国も無理やり詰め込み、ドイツ・マルクを封じ込めるためにつくられたため、ギリシャ問題でも矛盾が露呈している。社会主義体制は独裁体制になり、社会主義は計画経済ということを考えなおす時期にきている。「今はアメリカが繫栄したところで他の多くの国が幸せになるという状況にはない。中国もしかりだ。これからは国民経済のあり方にも変化が求められる」。「安部晋三首相は『戦後レジームの脱却』を標榜している。つまりは『戦前』に戻りたいということだが、まさに時代錯誤だ」。経済学は謎解きで面白い。

 

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