豊田の生活アメニティ

都市デザイン、街歩き・旅行、くらし

地域再生の罠

2017-02-23 | 気になる本

久繁哲之介(2010)『地域再生の罠』ちくま新書

 なぜ市民と地方は豊かになれないのか?これがサブタイトルである。豊田市の「都心の顔」づくりも30年、綺麗になったが賑わいがない。金をつぎ込んでも魅力的な店がないのはなぜか。

 著者の「商店街再生へ4つの提案」で、空き店舗対策で最大の失敗は、「自治体と商店主の都合」のみで考えられていることとしてる。①車優先から人間優先へ、②市民が安心して出店できる店、③地域一帯の魅力を創造する、④物を売る場から交流・憩いの場へ、である。

失敗事例では「市民の足は切り捨て駅前開発を進める岐阜市」をあげ、43階建て超高層ビルは核のテナントが撤退、1階はもぬけの殻となった。コンパクト・シティを叫ぶ時代に、100年の歴史を持つ路面電車の廃止は残念だと嘆く。行政の縦割りに問題、職員が街を歩かない、街のことを知らない。人より車を優先する街は衰退する。豊田市はどうだろうか。商店街の要望で立体駐車場を4300台も造ってきた。車で都心に行けば、駐車代は3時間無料で、利便性はあるが回遊性はなく、お酒が飲めない。

 主要6都市の中心市街地の小売り販売額シェアは、-5~-9%である。豊田市はどうだろうか、調べてみたい。

 賑わいの基本は、需要を吸い取るだけの大資本・百貨店でなく、需要創出型飲食店をつくることであり、事例は那覇市の牧志市場、はこだて市場である。歴史のある都市では市場が街中にある。バルセロナやリスボンでは市場で新鮮な食材が食べられた。しじょうといちばの違いだろうか?やはり、路面電車と朝市のある歴史的な街は素晴らしい。

 リーマン・ショック以降、消費が冷え込み、「雇用の創出」が重要施策となるはずだが、自治体は一時的な措置しかしてこなかった。これまで工場に雇用を依存してきた地方都市ほど、「未利用状態」にある人が増え、雇用創出が求められている。

都心再開発など土建工学者が一面的に箱モノだけを作った、と著者は批判する。豊田市の場合はどうだろうか?中心市街地活性化計画など商業観光課がリードしてきた。美術館やスタジアム、そごう百貨店の建設は、当時の市長である。都市計画の観点から広井良則の本(「コミュニティを問い直す」)を引用している。アメリカの都市はハード面ではしっかりしていて景観は悪くないが、自動車中心、経済的格差など町が味気ないものになっている。もう一人磯崎新の文献引用で、都市計画がおかしいと感じる。その最大の原因が上から下ろしてくるマスタープランそのものにある。豊田市の場合、都市計画マスタープランは総合計画の一部で、理念が先にありきで地域説明会を開催したが、参加者はいずれも10人足らずでトップダウンの姿勢が問題である。

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