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斎藤幸平・編「未来への大分岐」

2021-02-28 | 気になる本

マルクス・ガリブエル、マイケル・ハート、ポール・メイン、斎藤幸平・編(2019)『未来への大分岐』集英社新書

NHKで著者の「人新生の資本論」の講座を聞いて興味を持った。水野和夫「資本主義の終焉」、さらに「失われた30年」、借金財政、異常株価、日米不平等条約など資本主義の矛盾は誰も感じている。大きな視点で現代社会の基本的な問題点を見つめ、未来を予測する。いくつかの気になるポイントを、以下抜き書きした。(  )内は私のコメントである。

緊縮政策とは、民営化の推進、社会保障制度の解体、労働組合の弱体などを目指す政策の総体。(借金財政を緊縮すべきか金融緩和するか、大きな分岐点の1つでもある。)

斎藤 新自由主義をやめて福祉国家にうまくいくとは限らない(二宮厚美など新自由主義に対抗した「新福祉国家構想」の否定。その根拠は?)

 利潤率を高めるために、資本家はなりふり構わず実行に移す。資本はグローバル化で、海外の廉価な労働力を調達できる。労働者の同意は弱まり、非正規が増加、労働運動は弱まって、労働分配率は低下した

 20世紀の間に生産力が飛躍的に上昇したにもかかわらず、労働時間は減るどころか、長くなり、意味のない労働に翻弄されているというパラドックスである。

 日本の場合、官邸の暴走、「政治主導」体制は様々な弊害を生む。

MH サンダースの人気は、ウオール街のオキュパイ運動との連続性である。

斎藤 ヨーロッパのように日本が福祉型社会にならなかったのは、労働運動が産業別でなく企業別で、年金賃金と終身雇用で自分たちの生活を守ることだけになる。

斎藤 P56日本の反原爆運動は広がったが、他方資本が要請する核開発について、原子力の「平和利用」を共産党も受け入れた(?)ことで、地域の運動は孤立した。

斎藤 非物質的労働という新しい生産形態が、他の生産形態に影響を与えているか?

MH はい、非物質的生産で使われている、協働的ネットワークと通信ネットワークの影響は大きく、他の領域でも支配的になっている。(トヨタもIoTなどものづくりの転換を考えている、自治体も偏った「ものづくり」の考えを変える必要がある。諸富徹も「資本主義の新しい形」で、資本主義の非物質的展開と規定し分析している。同じ意味で使っているのか興味深い。)

 工業化の時代が終わった現代、労働者階級を構成する人たちの多様性を認識しておくことが重要である。

斎藤 労働者は思考を必要としない知的な労働が増えている。マニュアルに従っているだけ。

MH 「構想と実行」の分離を乗り越えるような社会的協働も生まれている。

斎藤 中央銀行が株式や国債を買うことで、マネタリーベースを増やし、民間金融機関の融資に回し、お金を増やす。

MH 企業にお金を与える量的緩和でなく、「人々のための量的緩和」を提案。

マルクス・ガリブエル「欲望の資本主義」(林直道の「強奪の資本主義」に似ている)

斎藤 「潤沢な社会」は脱成長論と真逆で興味深い。

PM 近い将来、大型家電も住宅も格安で供給できる。育児、医療、交通などもできる。IoTの情報技術で生産コストを下げ、低価格で潤沢に供給できる。3Dで安価な住宅もできる。(理論的には可能だと思う。資本の独占、正当で公正な下請け・労働者への配分、優遇税制、政治の不正などが是正されるかであろう)

P258 PM日本の膨大な債務は、爆発的な価値創造が起きなければ返済不能、デフォルトで帳消しもありうる。家計や企業、銀行は破綻する。終わりなき借り換え、繰り延べで価値創造できない。だからこそ、ポストキャピタリズムに移行しなければならない。

 新自由主義を放棄しグローバリゼーションを抑制しない限り、世界システムの崩壊があるだろうと予測していた。

コメント
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