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林直道「強奪の資本主義」

2021-02-12 | 気になる本

林直道(2007)『強奪の資本主義-戦後日本資本主義の軌跡』新日本出版社

 今回、百人一首の縁で再び手にした本である。切れのある経済学者として、著者の本や論文はよく読んだ。最近の経済通史、経済構造などでは、「平成経済」(金子)、「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野)、「昭和の歴史-経済大国」(宮本)などが印象に残っている。この本も読み直してみて、改めて戦後の軌跡を振り返り、問題の本質をついた良い本だと思う。戦後の混乱期から高度経済成長を続け、トリクルダウンや労働者への配分もあったが今はない。現在はグローバル化した大企業応援の政府と日銀による「成長戦略」は株価つり上げと財政出動で、資本主義そのものの限界が感じられる。90年のバブル崩壊を機に「失われた20年」が30年になり、今も国民のくらしは悪くなるばかりである。強奪資本主義を脱するには、日米安保の離脱(武器爆買い、米軍への思いやり予算、沖縄基地など)、少子化は雇用政策の改善、消費税引き下げなどと具体的な政策が提案され、今日でも通じる課題・政策である。貧困と格差拡大、さらにコロナの後手後手の自公政権、政治と利権、「戦争法」、憲法改悪、学術会議委員の任命拒否など平和、民主主義も脅かされている。

以下障りのポイントだけを挙げる。

P10バブル崩壊(1990)後の10年、小泉構造改革と安倍内閣(1次)になって、なんと日本はすさまじい変化に見舞われた。その第1の大激変は、非正規労働者の増大である。

P21日本はなぜ強奪資本主義になってしまったのか?

  • 日本帝国主義の崩壊、経済発展の基礎づくりと対米従属体制固め、②巨大な経済発展の段階、③挫折。バブル崩壊の長期不況、④強奪政策への暴走。

P34日本の戦死者310万人、アジアの死者2000万人以上。

 軍部、軍需資本家、官僚達による備蓄物資掠奪。加藤勘十委員長「降伏後1か月で約5000億円の物資が消えうせた」。隠退蔵物資がちびりちびりと闇ルートで出された。

P39戦後のインフレで、預金封鎖、モラトリアム(支払い停止)、そして新円切り替えが行われた。旧円の取り換えは6日間、銀行に吸収された国民のお金は、生活資金として月に世帯主300円、家族100円が払われた。モラトリアムの解除は2年7か月後、返されたのは3~6割であった。

P41労働組合の急激な成長と2.1ゼネスト

P46ドッジラインと安定恐慌

P48日本の黒い霧―下山・三鷹・松川事件。1949年総選挙で共産党が大進出で、労働者や国民の反政府運動が前進。米軍は国鉄の下山総裁に大量首切りを命令。

P50戦後の民主改革とアメリカ。アメリカはソ連、中国、イギリスなどの戦勝国の代表として、ポツダム宣言を実施する責務がアメリカにあった。初期の目的を達し、日本の支配層が骨の髄まで対米屈従を見届けるにあたって、しだいにポツダム宣言を無視し、民衆運動を敵視した。

P56アメリカによる日本民主化を止め、日本を「目下の同盟者」に転換した。

P57第2期朝鮮戦争の時期、GHQは理不尽にも日本共産党の役員を公職追放した。

P60総評は鶏からアヒルに。講和条約締結で形の上で日本は独立国になる。支配者は「破壊活動防止法」をポツダム政令に変えて、強権的に作った。

P66第3期 高度経済成長期(1955~73) 10%に近い経済成長。設備投資、オリンピック。貿易黒字国、国民生活の向上。公害、受験地獄、福祉後進国。大企業優遇、臨海工業地帯。

P92第4期 石油危機とハイテク産業(1974~82)アメリカの金ドル交換停止、変動相場制。田中角栄の「日本列島改造論」、土地投機ブームと物価狂乱。

P110第5期「経済大国化」とバブル崩壊(1983~90)「集中豪雨的輸出」、図「バブル崩壊と日米株価」。大抵の大企業は本業でなく投機に走った。

P123第3段階 第6期 バブル崩壊後の長期停滞期(1991~2003)(~現在)バブル崩壊・証券、不動産パニック。

P135 第4段階 強奪政策への暴走 第7期小泉構造改革(2001~06)

P139不良債権の強行処理 その結果としての不況の深化と長期化

P162大企業の巨大利潤獲得、多国籍企業化

P 184安倍内閣が発足し2か月の間に行った重要な施策は、教育基本法の改悪である。

P194大衆課税消費税増税大企業減税

P195労働法制の改悪

3 強奪資本主義との決別

P202成長促進政策だけでは格差解消・くらし向上にならない(ハードからソフト、SUSTAINABLE CITY・修復型都市づくり、誰でも普通に暮らせる未来)

P207少子化を激化させる雇用政策をやめる 結婚困難、子育て大変、出生数、(30人学級、給食無料化)

P204対米追随、日米軍事同盟強化路線からの離脱が必要(武器爆買い、陸上イージスアショア変更、軍事予算傍聴、核兵器禁止条約が1・22発効)

P216新しい平和友好のアジア共同体へ

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