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榊原英資「中流崩壊」

2020-08-12 | 気になる本

 榊原英資(2015)『中流崩壊―日本のサラリーマンが下層化していく』誌想社新書

 著者はミスター円と言われるほど、通貨に精通した元大蔵省役人である。書いたのはやや古いが、今も下層化の流れは止まっていない。経済活性化の基本が消費拡大であるが、2019年の消費税増税で不景気が顕著に、20年のコロナで不況に拍車がかかった。資本主義も恐慌の循環でなく、新自由主義の行き詰まりであると思う。本書は冷静にデーターを分析し、日本経済、財政構造の問題点を明らかにしている。以下、要点の抜き書きである。(  )内は私のコメント。

 日本をはじめ先進国は豊かになり、1%から2%の低成長局面に入った。問題は相対的貧困率が拡大していることである。格差が拡大し、貧困の増大、中間層の下層化、非正規の増大である。

 海外生産比率が増大していて、円安が輸出促進効果を持たなくなる。財政赤字と貿易収支の赤字と双子の赤字になりつつある。

 株高だけで庶民生活にはマイナスのアベノミクス。2%のインフレ目標は経済が活性化し、賃金も上昇することを前提としている。「失われた20年」でなく、成熟期に入った日本経済。不況とデフレは違い、不況脱出でGDPを上げでも、物価上昇率2%上げる必要はない。

 大航海時代に生まれた近代資本主義。スペイン、ポルトガル、オランダ、イギリス等のヨーロッパ諸国が、アメリカに進出した。コロンブスのアメリカ発見が1492年。1510年にポルトガルがインドのゴアを占領し、東洋貿易の拠点とした。1521年にはスペインがメキシコを征服、1525年にはオランダがニューギニアを発見し、1537年にはポルトガルがマカオを植民している。1571年、スペインはフィリッピンにマニラ市を建設した。家康は海外進出を断念するが、秀吉は明の征服を1大事業としていた。徳川幕府は鎖国政策に傾いた。1776年アメリカは独立宣言、1840年のアヘン戦争を経て、42年香港はイギリスに割譲された。インドも1857年ムガール帝国が滅亡し、イギリスの植民地になった。1882年エジプトもイギリスの植民地に、1887年にインドシナがフランスの植民地となる。アジアで日本だけが植民地にならなかった。地理的な幸運と江戸時代の鎖国そして明治維維新による富国強兵政策が功を奏した。(そして軍備拡大で海外侵略し、敗戦でアメリカの従属国となっている)

 地勢学的リスクとはテロや戦争、財政破綻から生じるリスクで、2001年のアメリカの同時多発テロでは2002年連邦制度理事会が適用した。アラブ世界では民主化で「アラブの春」と言われたが、エジプト、リビアでも独裁政権は打倒したが、国内対立は激化した。(トップによる独裁化は中国の香港抑圧、ロシアの選挙妨害、アメリカの時刻主義、そして日本もアベ政治のウソと誤魔化しでその傾向がある)

 列島改造計画は高度成長の末期に導入され、地方にも拡大し、農村にも雇用をつくりだし高度成長と格差の縮小が同時に進んだ。田中角栄は、税収を特定財源化し、公共事業を種類別に特別会計を設け、一般会計から独立し事業支出を拡大していった。特に道路は急増した。(民主党政権のコンクリートから人へのスローガンは良かったが、八ッ場ダム中止の急転回、沖縄基地の最低でも県外、そして消費税増税で失速した)。90年代から成熟局面に入った。今は格差が拡大し、非正規雇用の比率が増大した。日本でも所得の再配分が大きな政治課題である。

 外国人観光客は2013年1000万人を超した。(京都の外国人観光客は急増し、活気が見られるが、インバウンドを期待した観光まちづくりには問題もある。2020年はコロナで激減している。)

 格差の拡大の原因は、富裕層の増ではなく貧困層の拡大にある。グローバリゼーションが格差を招く。先進国と新興市場国の交流が貿易や直接投資等で顔発になると、振興市場国で生産できる剤の価格、従事する人々の賃金は下がらざるを得ない。日本でも格差は拡大しているが、その最大の原因は低賃金労働者が大幅に増えたことである。増加する子どもの貧困、若者の失業、1億中流化の崩壊。

 ゼロ成長の時代、環境、安全、健康(健康保険)では世界レベル。(戦争の時代は短く平和?安保法制、安倍改憲策動、米国追従、財政・日銀危機など構造不安がある)

 低負担・低福祉から高負担・高福祉への転換。格差の是正に政府が所得の再分配政策を推進など提起している。消費税を増大し、福祉や格差解消に向けるべきで、出産、育児、教育など若い世代の貧困に是正に割かれるべきである。

(消費税増税には異論があるが、若者に投資は賛成である。全体を読んで若干異論はあるが、8割ほどは同意、支持できる。)

 (次の国政の政策争点は、コロナ対策・医療と社会保障、少人数学級、非正規縮小、消費税減税、安倍政治の森友、加計、桜疑惑などである。野党共闘で政策合意がどこまで一致でき、国民の支持が得られるか問われると思う。)

 

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