豊田の生活アメニティ

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アメリカ大都市の死と生

2013-09-24 | 気になる本

ジェーン・ジェイコブス、山形浩生訳『アメリカ大都市の死と生』鹿島出版会
 最初は黒川紀章が約していたが、全訳でないのと誤解のある訳との評判でした。ジェイコブスは女性、高卒、業界紙記者でしたが、再開発反対運動など官製の都市計画に批判的でするどい問題提起をしています。幹線道路反対、ベトナム反戦運動で逮捕されるという経歴の持ち主で、その後トロントで暮らしました。ル・コルビジェ批判だけでなく、ハワード、マンフォードの都市論も批判しています。以前一度読んだというか、目を通した程度で、歴史背景など理解できていませんでした。今回、山形のこなれた翻訳で全訳が出て、富樫幸一の報告で学習会を開いた機会に急いで目を通しました。
 ジェイコブスは官製都市計画に反対し、アカデミズムにも捉われず先駆的なまちづくり運動に関わり、その実践的な経験に基づく本となっています。その切り口は街路の安全、公園のあり方から始まっています。Ⅱ部では都市の魅力として多様性を挙げています。用途の混在(日本では純化の流れ)、職住近接、古い建物の保存、再開発批判などです。そして、多様で魅力的な都市として、①地区の多様な機能、②街区の短さ、③古い建築物の保存、④十分な密度を挙げています。最も関心のある④の十分な密度とは用途の高度利用であっても、高層住宅を進めるものではありません。11章で住戸の混密や「適正規模」についても述べています。Ⅲ部、ではスラムと脱スラム化、Ⅳ部では誤った方策で住宅補助のあり方、自動車の対応、公聴会など今日に通じる興味あるテーマでもあります。ただ、学者ではないのでやや論点整理がされていないというか、理解しきれない点もあります。大都市ニューヨークを事例にしていることや、著作権の関係で図や写真が載っていないのが理解を困難にしています。グループでの輪読、討論が望ましいかもしれません。
講師は最後に「都市は生きている」と言いましたが、私は複雑系で有りその計画は都市生活、住民参加を基本にすべきだと思います。都市形成の歴史から豊田市は、大企業の自動車に特化した工業都市あるいは工場都市です。昔からの自然はあっても、多様性、文化性がなく、住みやすく魅力ある都市でないように思います。(写真は実家から貰った庭先の彼岸花です)
コメント
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