駆け引きでアメリカに勝とうと思うなかれ。
「ユナイテッド93」の緊張感が再び、である。
事件が起きる前の加害側の準備と被害側の日常から淡々と、しかしドキュメンタリー式でカメラが追いかけるので、知らないうちに観ている側が引き込まれていく。
どうやらソマリアの沖で頻繁に起きているらしい海賊行為。報道で表面的な事実は知らされるものの、現場でここまで命を賭けた攻防が繰り広げられているとは思わなかった。
何より驚くのは、世界規模の巨大タンカーがたった4人に乗っ取られてしまうことだ。
それもタンカー側が決して怠慢だったわけではない。むしろフィリップス艦長は、危険を察知する力、最善の方策を判断し実行する力に長けており、はじめは海賊を追い払うことに成功する。
乗っ取られたのは、たった1箇所の過失、放水ホースの接続が外れたことによるものであった。
武装した4人から見れば、力に任せて潰してこようとする相手をかいくぐり、タンカーにハシゴをかけることに成功したわけである。
一度きっかけができれば侵入はたやすい。威嚇射撃で相手の反撃を封じればよい。
武装と非武装の差をここまで明確に示されると、丸腰で外へ出ることの無謀さが際立つ。理想を掲げるだけで平和は維持できないことの分かりやすい一例だ。
接近の攻防は、乗っ取られた艦内での心理戦へ移るが、ここでもフィリップス艦長の判断が冴える。
艦長の最大の責任は、貨物を目的地まで確実に輸送することに加えて、乗組員の安全の確保である。
そのことを身を持って示す艦長を目の当たりにして、事件が起きる前にはやや統一感に欠けていた船員たちも団結力を見せる。
結果として海賊側に船外待避を余儀なくさせることに成功するが、海賊側も命を賭けているだけに引き下がれない。最後の攻防である艦長誘拐へと舵を切る。
ここから現れるのがUS NAVYだ。弱体化を言われながらもそこは「アメリカ」、国力は変わらず世界の第1シードである。
どんな手を尽くそうとも国民を守る。このメッセージにブレはない。
どこまで真実か分からないが、冷静な判断、慎重な運用、そして的確な遂行。最後の闘いは、海賊側の悲壮さが際立つ。
母船から見捨てられ、巨大な力にじわじわと締め付けられ、客観的に見ればもはや勝ち目はない。薄々分かっていながら引くこともできない。
お互いが死力を尽くした争いの後に感じるのは、なくならない不平等という争いの種。
それがきっかけで事件が起きるが、たまたま自分が恵まれた側にいたために、また家族の元へ還ることができる。
救出に成功した後に医療チームの事務的な説明を聴き、初めて極度の緊張から解き放たれる艦長の嗚咽が心に刺さる。
(90点)
「ユナイテッド93」の緊張感が再び、である。
事件が起きる前の加害側の準備と被害側の日常から淡々と、しかしドキュメンタリー式でカメラが追いかけるので、知らないうちに観ている側が引き込まれていく。
どうやらソマリアの沖で頻繁に起きているらしい海賊行為。報道で表面的な事実は知らされるものの、現場でここまで命を賭けた攻防が繰り広げられているとは思わなかった。
何より驚くのは、世界規模の巨大タンカーがたった4人に乗っ取られてしまうことだ。
それもタンカー側が決して怠慢だったわけではない。むしろフィリップス艦長は、危険を察知する力、最善の方策を判断し実行する力に長けており、はじめは海賊を追い払うことに成功する。
乗っ取られたのは、たった1箇所の過失、放水ホースの接続が外れたことによるものであった。
武装した4人から見れば、力に任せて潰してこようとする相手をかいくぐり、タンカーにハシゴをかけることに成功したわけである。
一度きっかけができれば侵入はたやすい。威嚇射撃で相手の反撃を封じればよい。
武装と非武装の差をここまで明確に示されると、丸腰で外へ出ることの無謀さが際立つ。理想を掲げるだけで平和は維持できないことの分かりやすい一例だ。
接近の攻防は、乗っ取られた艦内での心理戦へ移るが、ここでもフィリップス艦長の判断が冴える。
艦長の最大の責任は、貨物を目的地まで確実に輸送することに加えて、乗組員の安全の確保である。
そのことを身を持って示す艦長を目の当たりにして、事件が起きる前にはやや統一感に欠けていた船員たちも団結力を見せる。
結果として海賊側に船外待避を余儀なくさせることに成功するが、海賊側も命を賭けているだけに引き下がれない。最後の攻防である艦長誘拐へと舵を切る。
ここから現れるのがUS NAVYだ。弱体化を言われながらもそこは「アメリカ」、国力は変わらず世界の第1シードである。
どんな手を尽くそうとも国民を守る。このメッセージにブレはない。
どこまで真実か分からないが、冷静な判断、慎重な運用、そして的確な遂行。最後の闘いは、海賊側の悲壮さが際立つ。
母船から見捨てられ、巨大な力にじわじわと締め付けられ、客観的に見ればもはや勝ち目はない。薄々分かっていながら引くこともできない。
お互いが死力を尽くした争いの後に感じるのは、なくならない不平等という争いの種。
それがきっかけで事件が起きるが、たまたま自分が恵まれた側にいたために、また家族の元へ還ることができる。
救出に成功した後に医療チームの事務的な説明を聴き、初めて極度の緊張から解き放たれる艦長の嗚咽が心に刺さる。
(90点)
今晩は☆★
私も「ユナイテッド93」を思い出しました。
監督さん上手いですよね。ノンフィクションらしく見せるの。
もちろんトム・ハンクスの演技もさすがでしたが、、、。
海賊のリーダームセを演じた方、実際のソマリアから
アメリカへ移住されたそうです。新人とは思えないくらい
リアルは演技でしたね。危うくスルーするところでした。
見逃さないで良かったです。
「ユナイテッド93」は有名な俳優が一人もいなかったので、
よりドキュメンタリー感が強かったように思えます。
もちろんT.ハンクスはさすがの演技なのですが、
おっしゃるように今回の肝はソマリア人役の青年たちです。
やせこけてギラギラした佇まいに圧倒されました。
この作品を観たら、やはり手ぶらで危ない地域へ行くのは
自殺行為だと思わざるを得なくなります。