原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

夫婦間でも基本は 「独立採算制」 を採用するべき

2013年04月14日 | お金
 今回のエッセイは、前回の 「庶民ママ達は“ママ友序列化”がお好き?」 の続編の形ともなりそうだ。

 
 昨日4月13日の朝日新聞別刷「be」“悩みのるつぼ”は、メーカー勤務 40代男性からの相談が取り上げられていたのだが、その題目が凄い!
 「1億円の蓄財、妻に言うべき?」 

 ちょうど前回の我がエッセイにおいて、原左都子には若い頃より自己実現目的でちまちまと「貯蓄」をする趣味がある事を少し取り上げたのだが、まさかその金額が1億円に達した事はない。 せいぜい一人暮らしが可能な住居を購入できる程度の端金の額にしか過ぎない。

 そんな私にとって、上記相談題目の「1億円」蓄財の“財源”こそが大いに気になった。
 もしもその出所が「親からの贈与・遺産」だの「宝くじに当たった」だのであるならば、私にとっては大して興味がない話題である。 そうではなく、40代男性が“腕一本”で稼いだ金額であるとすれば、尊敬と羨望の眼差しを注ぎたい思いだ。

 早速、“悩みのるつぼ”の相談内容を以下に要約して紹介しよう。

 当方、現在少々業績の厳しいメーカーに勤務する40過ぎのしがない中年男性である。 10年連れ添った愚妻に、我が家の資産を打ち明けるべきかどうか大変悩んでいる。 小生には持病があって酒も受け付けられない事もあり仲間と騒ぐことも叶わず、目立たぬよう過ごして来た。会社では上司のどんな指示にも従い真面目一筋の勤務を続けコツコツと貯蓄してきた。 その結果資産が貯まり、その半分を株式等で運用したら現在1億円を突破している。 いつ勤務先リストラの運命かもしれず、1億はなかったものとして生活し続けたいと考えている。 一方、愚妻は手元にある金を使ってしまうタイプであり、我が家では小生が一切の金銭管理を担当し愚妻は貯蓄額を把握していない。 1億円の話をすれば、海外旅行だ、かばんだ、服だと押しかけられ我が家の資産は右下がりのカーブを描くだろう。 夫婦仲は悪くはないが我が家では愚妻が上司の立場であり、資産がばれた暁には不誠実な夫とレッテルを貼られる事を危惧している。
 (以上、4月13日“悩みのるつぼ”相談内容を要約引用)


 ここで一旦、原左都子の私論に入ろう。

 まずは、相談者である40代男性が「1億円」もの蓄財を自らの“腕一本”で成し遂げた事を評価申し上げたいものだ。
 しかもこの男性の素晴らしさとは、その「1億円」に満足しているところにある。 通常の素人貧乏投資家とは、一旦この額の投資に成功したならば自らの投資能力を過大評価してズルズルと更なる投資行動に走り、全てを失い“野垂れ死ぬ”のが世の常だ。

 ただしこの人物からは「1億円」を蓄財した以外の能力面や人物像に関して、申し訳ないが何らの魅力も感じられないのも事実である。
 それでも、相談者本人が「愚妻」と呼ぶ奥方とは10年に渡り夫婦仲が悪くないというのも、私にとっては不可解な部分でもある。
 もう少し気になるのは、この夫婦には「子ども」は存在しないのであろうか? というところだ。 と言うのも「子ども」の存在とは夫婦間での財産管理上、最大の費用項目と位置づけられるためである。


 今回の“悩みのるつぼ”回答者は、評論家 岡田斗司夫氏であられる。

 岡田氏の回答とは、この夫婦に「子ども」が“いない”ことを前提として応えられたものであろうと私は推測するのだが、その回答内容の一部を以下に要約して紹介しよう。
 体の弱い相談者はとても心配性であり、起こり得る最悪の事態を考えいつも保険を用意するべく生き方をしているのであろう。 そのために妻を我慢させただろうし、そもそも浪費家の妻が頼りないから将来不安が募り節約をしたこと自体は間違っていない。 しかし「金はない」はウソで、あなたはその金をバクチの一つである株式に運用した。これ自体があなた自身のルールに反している。 妻は言うであろう。「あなたはゲームしていたのに、私は楽しい事の全てをガマンさせられてたのね!」 だからあなたは妻に全財産の半分、交渉次第では1/4を払いさっさと謝罪しよう。 妻が資産を無駄使いしようと、たとえ景気が悪くなろうと、またいつものように自分の不安にフタをし続ければ済むであろう。 あなたは1億円も稼げる「強い男」なんだから。
 (以上、“悩みのるつぼ”岡田斗司夫氏の回答より一部を要約引用。)

 もしもこの相談者夫婦に「子ども」が存在しないのであれば、確かに岡田斗司夫氏がアドバイスされる通りであろう。 
 「子ども」という“かすがい”なくして10年間もの長きに渡り二人の関係を築き上げ連れ添えているのであるならば、その回答で十分と私も判断する。


 ところがこの夫婦に「子ども」がいるとなると、話は大きく違ってくるのではあるまいか?

 前回の我がエッセイでも紹介したが、子どもを持つ「庶民ママ」達の最大の関心事とは夫の職業、社会的地位及びそれによる収入であり、双方の実家の財産なのだ!
 「それらの要因によってママ達の間で私と子どもが序列化されているのも知らずに、何でアンタは今まで1億円もの蓄財を貯め込んでいることを私に言わなかったのよ! 早く言ってくれたら私も息子(娘)もママ友上位カーストに君臨できたのに、今更言ったってもう遅い!!」  「それに言っちゃ悪いが株で大儲けした、っていうのは(岡田斗司夫先生が言うところの“バクチ”でしかなく)、息子(娘)の顔に泥を塗るだけだよ!!」

 まあそれにしても、繰り返すがこの男性夫婦に「子ども」が存在しないのならば、10年続いている夫婦関係は「1億円」蓄財を妻に暴露する事により、結構何とかなるのかもしれない……


 最後に表題に戻ろう。

 世の夫婦が健全で良好な夫婦関係を築き続けるためには、やはり両者が「平等」「対等」であることが欠かせない条件なのではないかと私は常々考えている。
 それは財産面においても例外ではなく、出来得る限り夫婦間で「独立採算制」を施行してはどうかとも思うのだ。
 とは言えども「子ども」が存在する家庭においては、庶民である以上やはり夫婦のどちらかが主体的に育児に専念せねばならないであろう。 その期間を通過した後(あるいは「子ども」が存在しない家庭)に於いては、「独立採算制」を余儀なくされる運命にあろうし、そうする事がベストかと今の時代背景下において私は捉えているのだが。

 「ママカースト」にこだわる現役ママ達に今一度提言したいのだが、子どもが育った暁には亭主や実家に頼るでもなく自分自身が一人の人間として社会的に機能するためにも、今現在から老後は「独立採算制」で生き抜こうとの意気込みを持って欲しいものだ。

 そうでもしないと株で1億円稼げる亭主などこの世に滅多には存在しないし、いわんやこの国の社会保障制度の未来など当てにできるはずもないよ。