水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

愉快なユーモア短編集-92- 待ったなしっ!

2018年11月22日 00時00分00秒 | #小説

  待ったなしっ! ・・この言葉は、相撲の世界でよく行事さんが厳(きび)しくガナっておられる[失礼!^^]言葉だが、なにも相撲の世界に限った言葉ではない。口にするかしないかは別として、現実の社会でも、すべてが待ったなしっ! なのである。
 仲のよい近所の老人が縁台(えんだい)で将棋を指している。
「待ったなしっ!」
「いや、それはっ…」
「ダメ、ダメっ!」
「そこをなんとか一つ…。昼の蕎麦(そば)、奢(おご)りますから…」
「ははは…蕎麦くらいではっ!」
「それじゃ、鰻重(うなじゅう)ではっ!?」
「もう、ひと声っ!」
「じゃあ、そのあとの甘酒もおつけしましょう!」
「よろしい! では、一回だけですぞっ!」
 それを見ていた孫が呟(つぶや)いた。
「待ったなしっ! なのに?」
 二人は罰(ばつ)悪く、押し黙った。その二人を見ながら、孫は愉快な気分で茶目っ気たっぷりに笑った。
 子供は大人以上に、待ったなしっ! が鋭(するど)く分かっているようだ。^^

                                 


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