数日後、マスコミが里山を囲み始めた。だが、その場所は以前とは違い、里山の家ではなく会社の通用門前だった。
「すみません! 里山さん。少しお話をお訊(き)かせ下さい!」
会社の勤めを終えた里山が背を伸ばし欠伸(あくび)をしながら通用門を出ようとしたとき、俄かに報道陣が里山を取り囲んだ。里山は、来た来た! …と、順序策どおりの展開に内心で嬉(うれ)しかったが、少し上がっていた。
「ははは…なんでしょう?」
里山から飛び出した第一声は、笑い声だった。
「週間文秋の枯木です。お話を少しお聞かせ願いたいのですが、お時間は大丈夫でしょうか?」
「えっ? はあ、まあ10分ぐらいなら…」
内心は30分ぐらいでもOKですよ…だったが、里山は少しお高く止まった。
「ご存知かと思いますが、実は例の件なんです」
「ああ、うちの小次郎ですね」
里山は、さも当然といった顔で言った。
「はい! お宅の猫、本当に話すんですか?」
「ははは…、テレ京で放送されたとおりです」
「お茶の水に住んでます週間MONDAYの茶水です。それ、ヤラセじゃないんでしょうね?」
一人の男が厚かましく割り込むように訊(たず)ねた。
「えっ? 馬鹿、言わんで下さい! そんな訳ないじゃないですかっ!!」
瞬間、里山は激しい怒り声で返していた。