水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第三章 (第三十二回)

2012年02月10日 00時00分00秒 | #小説

 幽霊パッション 第三章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       
    
第三十二回
「本格的に考えないと、私の身も危ういからなあ。実は、社長に会って、会社を辞めさせてくれと云ったんだよ」
『ええっ! それで?』
「結論から云やあ、慰留されて、撤回したんだがな…」
 上山は事の仔細を話した。
『まあ、よかったですよ、辞められずに。課長が辞めりゃ、なんか、僕の責任みたいになりますしねえ』
「そんなこたぁ~ないがな…。しかし、私が身の危険を感じないでも済むような、いい発想はないかなあ」
『僕と課長、割りと、いい線までいってるんですけどねえ』
「そうだよなあ~。武器売却禁止条約を世界各国に批准させたんだからなあ。並みの大統領や首相以上だよな」
『ええ、それだけでも充分、ヒーローだと思うんですよ、僕は』
「ああ…。私と君は多くを期待し過ぎたのかも知れん」
『そうです。地球環境とか独裁者とか云ってきましたからねえ。霊界のトップは、その辺りがカチン! ときたんですよ』
「余り調子に乗るな! ってか?」
『ええ、そんなとこだと思いますよ』
 二人(一人と一霊)は自己反省から、やり直しの発想を探っていた。
『課長! 環境と独裁者は一端、白紙にしましょうよ』
「いや、そらそうだよ。私も白紙で考えてるよ。なにせ、待った! が、かかったんだから」
『ですよね…』
 二人(一人と一霊)は、また意気消沈して黙り込んだ。
「そうだ! 世界中の難病撲滅ってのは、どうだろうな。これが出来りゃ、正に正義の味方だぜ」
『エイズ、癌、それにウイルスとかの病気ですか?』
「ああ、抗生物質が効かない結核とかもあるしな」
『まだまだ今の科学では治らない病気があるんですよね』


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする