中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

再読 [作品集「樹の滴」ー染め・織り・着る] その 2

2021年05月07日 | 作品集『樹の滴』
作品集の制作で一番難しかったのは“色”ということは前回書きましたが、もう一つ、着姿写真を撮る時は、どうしても顔を含め全身を写す、引きの写真になります。 
そうすると、私の作品のような柔らかな微妙な色や布の風合いというものが一番の特徴という作品の存在感はほとんど写らなくなります。(^-^;

全て布アップも入れるようにすればいいのですが、紙面が限られていて、あれもこれもは載せられず、イマイチ作品の良さを伝えきれなかったものもあります。

その一つが、「秋麗」というタイトルの細かなよこ段の着物です。
コデマリで染めた黄色ベージュを地糸に濃淡でたくさんの色糸を織り交ぜました。
何でもないような柄ですが、染めも織りもとても時間がかかった作品です。

トップの写真は私が撮った生地アップです。
経ての紬糸の節がよく写っています。色糸も微妙な違いの糸が入っているのがお分かりいただけると思います。
着てくださった方は、「まるで樹皮のようだ」と感じたそうです。
このコメントも自然物を感じていただき嬉しく思いました。

人を包む布、着物も木に例えれば樹皮にあたります。
そういえば幸田文さんの「木」の“木のきもの”という章に、樹皮と着物の柄を重ね合わせるエッセイがあります。 
『杉はたて縞、たてしぼ、松は亀甲くずし、ひめしゃらは無地のきもの‥』などと綴られていますが、こんな風に樹木を見ていくのも面白いです。


この写真は作品集で使いませんでしたが、とても素敵な花織の帯を合わせてくださいました。
生糸使いの繊細な色柄の花織と、野趣のある私の紬と引き立てあいながらよく合っています。
素材感も色も違いながら、響きあっています。取り合わせとはこういうものです。
小物もこの日は薄黄緑に、程よい濃度のあるピンクの帯締めをしてくださってました。

他にもいろいろな帯と合わせて着て下さってます。
使い手の取り合わせのセンスの良さが着物を活かしてくれています。


もう1点、「花明かり」という作品です。
ベージュ地に桜で染めたよこ絣を配してあります。


ご本人は小柄で、よこの段は向かないと思ってらっしゃったようですが、柔らかな段ですので、全く気になりません。
この日は2本の帯をお持ちいただきました。
こちらの画像は作品集では小さなカットでしたので、改めてご紹介します。
帯は紙布で柿渋染めの重厚な色のものです。

着物初心者と当時おっしゃっていましたが、着方がとても自然で、帯結びもすごく早い方です。この時もささっと締めなおしてくれました。
紬塾にも参加くださっていたのですが、本当に着物が良くお似合いの方です。


取り合わせに関しては相談を受けましたので、帯締めや帯揚は一緒に決めました。
もともと落ち着いた色を好まれる方ですので、その範囲で選びました。
無地系の帯ですので、組紐はちょっと凝ったものにしました。紐1本で秋めいた装いになりますね。

取り合わせの参考にもなりますので、作品集も合わせてご一読頂ければ嬉しく思います。

現在、Amazon、楽天などインターネットで在庫がない状況になっているかもしれませんが、出版社には在庫がありますので、再入荷希望でご注文いただければと思います。
全国の書店でもご注文いただけます。

櫻工房オンラインショップでも送料無料でお送りします。
半巾帯リーフレットをお付けします。


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