中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

盛夏の装い――宮古上布と紬半幅帯

2011年08月11日 | 紬の上質半幅帯

日本の夏の麻織物は本当に素晴らしいと思うのです。見た目の透け感も涼しげですが、
実際に麻は肌に触れると冷たく感じますし、麻糸の張りが肌に密着せず風が身体を抜けていきます。

麻糸にも手績みと紡績糸がありますが、やはり手績みの糸は腰が違います。
もちろん価格は跳ね上がりますが、糸を作るだけでも2~3ヶ月もかかるということですから
それもやむをえないですね。

糸作りや織りの仕事は日本の歴史の中で搾取の上に成り立っていた面が長くありました。
今も決して報われているとも思えないのですが、低い工賃でも、人がやるべき尊い仕事だから
続いてきたのだと思います。
金額の高い、低いだけでものを見てはいけないと私自身は着物や布を見るときにその労苦を思うことにしています。
そして二代、三代と受け継ぐこともできます。長い目でみれば決してただの贅沢品ともいえないのです。

絶やしてはいけない仕事だと思いますが、夏に着物を着る人がいなければ終わってしまいます。
浴衣一枚からでも手仕事の本物を着ることだと思います。
もちろん経済もありますから無理はできませんが、間に合わせは結局間に合わないのだと、自分の失敗からも思います。 ̄ ̄;

一人の人が、一生に一反でも上質の手仕事の着物を買うことで着物文化も繋いでいけるのではないかと思います。

代々の古いものを受け継ぎつつ、そして現代の仕事のものも買って次世代に残していく。

魂のこもった仕事を引き受けるにはそれなりの経済も覚悟も必要ですが、本当にいいものは、手に入れた人をも高めてくれる力をもっています。
清水の舞台から飛び降りたあとにただケガしちゃった‥だけではなく、学びや、自分が磨かれるものがあるというのが大事なのだと思います。

周りに着物を着ている人が少ない昨今、本物の手本を見る機会も少ないですが、力のある布は人を引きつけるものです。
知識や先入観をむしろもたないほうがよいでしょう。

ピーンと来る一生ものの布に出会う愉しみを持ちたいです。布の力は侮れません。


古い宮古上布。私で三~四代目になると直しの痕から推測されます。
縁あって出会ったのですが、宮古上布の歴史的背景を思うと身を引き締めて大切に
とことん着させてもらおうと思います。
 自作の綾織の半巾帯を合せました。帯揚げも帯締めもないほうが涼しげですね。



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