工房では帯の制作を続けています。
春には春の、夏には夏の、秋には秋のもの・・を織るのが本当は一番好きです。
販売的にはもっと早く作ってシーズン前にお見せしないといけにのですが、^^;
作る立場になるとその「今」という時の光や空気の中でのギリギリの色糸の選定が出来るからです。
以前、立松和平さんの取材の折に「季節と一緒に織っていきたい」と話したことを思い出します。
私のやり方はたくさん糸を染めてある中からイメージしていくやり方ですので特にそうなのだと思います。もちろん長年の経験で予測をすることはありますが。。。
上の画像は“実りの秋”のイメージの吉野格子帯の縞糸です。
といってもこの帯だけで色を盛り込み過ぎないよう、あとは使う方が小物などで色を足していけるよう抑えてあります。
着る人の見立ての楽しさを残しておくことは作る上で大切なことだと思います。
経糸をチキリに巻き込んでいます。
吉野格子の太い縞のものは地糸と別々に整経をして別々のチキリに巻き込んで機にかけます。
茶の地糸と合わせます。
季節感は大切ですが、紬織りの場合は花柄や季節を限定する文様があるわけではないので、あとは取合せの着物や襦袢、小物たち一つで季節を変えて着ることができます。
そこが織りの着物の世界の醍醐味とも言えるでしょう。
この地色は桜染の茶で、縞のグレーは紅梅、紫はすももなどで染めたものです。
植物が蓄えている生きた色は深くて包容力があります。
この色自体が実りの秋の果実のようです。
秋の装いをあれこれ考えるのに良い季節になってきました。
工房でもまた帯を中心にしたイベントを予定しています。ご期待下さい。