中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

梅染め帯揚げ

2019年01月25日 | 制作工程

                             夕暮れの中の一点物^^;梅染帯揚げ

3月上旬の展示向けに帯、着尺、ショール、帯揚げの染を同時進行させています。
頭の中は毎回新たな仕事ばかりですので、いっぱいいっぱいですが、気持ちを集中させてかかっています。


近所で、しだれ梅の剪定したものを捨てるために束ねて置かれているのを偶然発見!!
家の方に伺うと、花咲く直前ですが、伸びすぎてしまったので、、ということでした。
バケツ1杯分だけいただいてきました。細い枝がほとんどですが、これで3Kgほどあります。帯揚げを染めるには十分な量です。糸も染められそうです。


今年の初染に固い蕾のついた梅の枝を染められるのは何と幸せなこと。。
固い蕾から、ほんの少し濃いピンクが覗いています。薄いピンクの花をつけるそうです。


ここ数年、長い間の手の使いすぎで指の関節が痛みます。
チップ作りは主にアシスタントやスタッフにしてもらいます。
煮出しの1煎目では梅酢のようなとてもいい香りがします。


まずは白生地を湯につけてよく洗います。梅の3煎目だけで3枚の生地を1回だけ染ました。
淡い赤みを含んだクリーム色です。手前は白生地のままのもの。

乾かしてから次の染に入りますが、まずは無媒染の状態の色をよく見て次の方向性を見ていきます。
この染材は赤みが強いのか、黄色味が強いのか‥など。
次は煎汁によって使い分けたり、媒染剤を選んだり、煎汁をすぐ使うか、一日置くかなどの判断もします。
ここから染め分けが始まります。

染材採集の時期、何煎目か、媒染剤の種類、染め重ね回数、生地の質感など、色は限りなく生まれてくるように思います。とは言っても身近な草木の多くの色素は黄色、赤、そして緑葉などから染めるうす緑系です。
しかし化学染料と違うのは、色素以外の成分などで、いろいろに絡み合ってくるところが、頭でイメージしたものではないものと出会えるから面白いのです。
外から教えてもらえるところがスゴイところです。

自分の好みとか、個性とか、そんなものありません。
こんな色にしてやろう!みたいな姿勢ではなく、どんな色が生まれてくるか、創意工夫はしますが、毎回新た。
ワクワク、ドキドキで飽きることはないのです。
ここには書けませんが、裏技も使いながら、色を見て、状態を見て数日掛けて一枚一枚染め上げていきます。

しかし、色の標本を作りたいわけではないので、データというものをほとんど残しません。
あまり意味がないと思ってます。
そして大事なことは、帯揚げとして、あるいは着物の糸として使えるかどうかを判断しながら染めることです。

国産の白生地も手紡ぎの糸も素材としてとても高価なものです。失敗は許されません。
しかし、いつでも、すべて上手くいくとは限りません..。なのでとても緊張します。
身も心も澄んだ健康な状態でないといい色は引き出せないようにさえ思います。

トップの画像は梅を染め分けて干している途中経過です。。
カラフルではないけれど深い、奥行きのある色を染め分けたいです。

夕方5時にまだ庭に日が残っています。日一日と日脚が伸びます。
寒中ではありますが、染色するには乾きも早くいい時期です。
しばらく梅の染め重ねをしていきます。

3月6日~9日まで「紬と帯揚げ100彩」-草木の色を取り合わせて-と題して、
南青山のこまもの玖さんで着物、帯、帯揚げ、帯締めなどを取合せた展示をさせていただきます。
また詳細はブログでお知らせします。



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