中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

手結い絣を織る

2016年01月30日 | 制作工程
工房ではシンプルな手結い絣の着尺を現在進行中です。
この写真はまだ織りつけ中のものです。
私はシンプルな絣が好きですが、シンプルゆえにごまかしのきかない難しさもあります。
お洒落着の紬ですので、絣と地糸を混ぜて織ることで柄が強くなりすぎず、奥行や陰影も生まれます。

年末に小綛にしてあった糸を正月明けに何日もかけ括り終えました。
1尺の幅に3分の括らない部分が2ヶ所あります。ほとんどを染めないということになりますので、梱包紐を使って防染する括りはとても時間がかかります。中に防染のためのシートも巻きつけています。
逆パターンの濃い地色に白や薄い色の絣の場合なら括りは早いのですが、逆は本当に大変です。
染め重ねをして、茶系にしました。染める時には留め釜をして括り際にも染液が浸み込むようにします。


手結い絣は設計図はシンプルですが、織り手の力量が試される、とても難しい技法です。
この絣は耳に遊び分の糸があり、引きずらして曲線や斜めの模様を織り出すことができます。
遊び分の耳糸を端で抑え、傾斜をつけ所定の位置に絣を合わせます。所定といってもこれも経糸の中で見え隠れする糸を見定めるのですから簡単ではありません。


完全に打ち込む前に、手前に寄せてきて絣の位置をきちっと決めるのですが、爪の先で調整をして、良しとなったら強く筬打ちします。絣合わせに気を取られて打ち込みが甘くなったりしがちですので気を付けなければなりません。また、経糸は節糸ですので、毛羽があり目飛びにも気を付けなければなりません。注意力も必要です。
絣を合わせるリズムをつかみ、細部と全体を瞬間的につかんでいくと早くきれいに織ることができます。粘り強さは必要ですが、無駄な動きで時間をとらないことです。
一柄織るのにかなり時間を要しますが文様が織り出され、連なっていくときの喜びはひとしおです。
この絣がきちっと描け、草の文様の味わい、風情も醸し出せたなら、織り手として力をつけたということになります。

私の師である宗廣力三先生はこの手結いの方法で今までになかった絣文様、それでいて洗練の域に達した絣文様を生み出し人間国宝に認定された方です。
手結い絣は素朴なだけではない、奥深い可能性を秘めた技法と言えるかもしれません。

この草文絣は東慶寺ギャラリーでの個展に間に合わせるべく頑張って織っています。

拙著の作品集「樹の滴」の中にも手結い絣の技法の作品が2点掲載されています。是非ご覧ください。


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