で自由を制限された暮らしを送るよりも、
愛着のある自宅で、可能なかぎり長く過ごしたい。
そう希望する高齢者は増えている。
充実した介護・医療サービスを使い倒せば、それも決して夢ではない。
☆「主治医の意見書」は大事
「昨年末のその日、夫はシルバー大学の遠足で、江の島に出かけていました。
しかし、階段で転んでしまい、打ち所が悪く、仲間に車で送ってもらって帰宅しました。
翌日病院に行くと、大腿骨を骨折していたことがわかり、即入院。
こうして突然の介護生活が始まったのです」
こう語るのは、横浜在住の井上綾子さん(76歳、仮名)。
現在は、夫の健一さん(79歳、仮名)を自宅で介護する生活だ。
「ようやく介護生活にも慣れてきましたが、
最初は、なにから手を付けたらいいかもわからず、大混乱でした。
先の見えない不安で、鬱気味になるほどで、食欲もなく、3kgも痩せてしまいました」
このように、ある日、突然「要介護」はやってくる。
誰もが「いつか自分も」と思っているが、
実際に必要が迫ると、途方に暮れてしまう。
老人ホームなどの施設に入ってしまえば、すべてお任せすればいいが、
できるだけ自宅で過ごしたいという希望を叶えるには、
自ら諸々の手続きをこなす必要が出てくる。
いざというときに備え、最適な在宅介護・在宅医療を受けるための手順を学んでいこう。
「親や配偶者が介護状態になったときに、
まずやるべきことは、介護を主導する『キーパーソン』を決めることです。
その人が窓口となって相談や手続きを行います」
こう解説するのは「在宅介護エキスパート協会」代表の渋澤和世氏だ。
☆情報整理が意外と重要
井上家の場合、子どもたちは遠方に暮らしているので、
妻の綾子さんがキーパーソンになる。
キーパーソンが最初にすること。
それは地域包括支援センターや市区町村の介護窓口での相談だ。
地域包括支援センターとは、介護に関する総合相談窓口で、
人口2万~3万人あたりに一ヵ所(中学校の学区に相当)配置されている。
まだ介護が必要でない人でも、専門知識を持ったスタッフが
介護予防のためのサービスを提供してくれるので、
早めに自分の住む場所のセンターを知っておくに越したことはない。
「相談に行く前には、介護を必要とする人が、
どういう状況か、情報整理しておくことが大切です。
伝え忘れがあると、受けられる介護サービスにも影響するからです。
持病の有無、飲んでいるクスリ、一人で移動できる範囲、
自宅の改修で必要な箇所、家族の介助は何曜日なら可能か、
子どもはどこに住んでいるか、などです」(渋澤氏)
認定を受けなければ、公的な介護保険サービスを使うことはできない。
申請書は、地域包括支援センターでもらえるが、
遠く離れて暮らす子どもが書くならば、
要介護者の住む市区町村のホームページからも、ダウンロードできる。
ここで重要になるのは、「主治医の意見書」だ。
健康状態をよく知っているかかりつけ医に、書いてもらうことが大切。
かかりつけ医には、あらかじめ、
「市区町村から意見書の作成のお願いがいくので、よろしく」
と伝えておいたほうがいいだろう。
かかりつけ医がいないと、行政が指定する医師の診断を受けることになるが、
普段から診ている医者ではないので、見当違いな意見書を書かれる危険性もある。

☆必要な認定を受けるコツ
▽見栄を張ってはいけない
申請書には「訪問調査立ち会い希望」の有無をチェックする欄があることが多い。
これはかならず「有」をチェックすること。
ケアマネジャー歴20年の友光淳一氏が語る。
「訪問調査とは、申請書提出後、どの程度の介護が必要なのか判定するために、
役所の調査員が自宅や、入院している施設を訪問し、心身の状況を確認するものです。
一人でトイレに行けるか、認知機能に問題はないかなどを調べますが、
立ち会いがおらず、本人だけだとつい見栄を張って、
『それくらい一人でできます』と答えがち。
その結果、必要な要介護度を認定してもらえなくなることもあります」
必ず介護のキーパーソンが立ち会って、本人に無理をさせないように気を配りたい。
実際、75歳以上の約3割が認定を受けているし、
そもそも介護保険料は、本人が払ってきたのだ。
遠慮せずに、必要な認定を受けよう。
申請書類を提出後、およそ1ヵ月で、要介護認定の結果が出る。
要介護度は、5段階に分かれており、
それによって1ヵ月あたりの介護サービス支給限度額が異なる。
例えば、『要介護1』(立ち上がりや歩行が不安定で、入浴や排せつに一部介助が必要)だと
16万7650円、
『要介護5』(日常生活のほとんどにおいて、介助が必要)だと、
36万2170円だ。
介護サービスの自己負担額は、要介護者の年収による。
年収が340万円以上の人は、3割負担、
280万円未満の人は、1割負担、
その中間の人は、2割負担がおよその目安である(単身者)。
例えば年収300万円の『要介護1』になると、
16万円超のサービスを実質3万3000円ほどで受けられる。
また要介護認定が受けられなくても、
予防的に支援が必要とみなされる『要支援1』、『要支援2』に認定されるケースがある。
支給限度額は低くなるが、入浴介助やリハビリなどの介護予防サービスを受けることができる。
要介護認定が終わったら、
ケアマネジャーと実際にどのような介護を行うかプランを立てて、
介護生活はスタートする。
在宅で介護を受けるのに最も重要になるのが、ケアマネ選びだ。
しかしここで安易にケアマネージャーを決めてしまうとあとで後悔することになる。
これより、後編記事
『知らないと大損する「在宅介護」後悔のない“在宅医&ケアマネージャー”を選ぶ「意外なコツ」』、
題され、下記のように掲載されていた。
手続きが無事に終わっても、ほっとするのは、まだ早い。
長丁場になる場合もある介護生活を充実した日常にするには、
ほかにどんなことに注意すればいいのか。
専門家が解説する。
☆ケアマネの専門に注目
要介護認定が終わったら、ケアマネジャーと実際にどのような介護を行うかプランを立てて、
介護生活はスタートする。
在宅で介護を受けるのに最も重要になるのが、ケアマネ選びだ。
要町ホームケアクリニックの吉澤明孝院長が語る。
「訪問調査で、ケアマネが認定員としてやってきて、
『自分が直接担当しましょうか』と提案されることが多い。
彼らにとってみれば、訪問調査が営業活動の一環になっているのです。
しかし実際には、在宅介護をするうえで、
ケアマネと相性が合わないケースはよくあります。
よくわからないままに、安易にケアマネを決めてしまうと、
のちのち後悔することになりかねません」
一言でケアマネといっても、出自はいろいろだ。
「在宅介護エキスパート協会」代表の渋澤和世氏が解説する。
「どのケアマネも基礎資格(看護師、介護福祉士、社会福祉士など)に応じた
実務経験を5年以上もっています。
この資格によって、得意分野が異なるので、
なにがいちばん困っているのかを考えて、選ぶといい。
前職が介護系のケアマネであれば、食事や買い物など、生活面での対応がスムーズですし、
健康面での不安が大きいなら、看護系の経験者が頼りになります」
できるだけ在宅で過ごしたい、
可能であれば穏やかに在宅死を迎えたいと考えている人にとっては、
ケアマネの経験値が非常に重要になってくる。
ホームオン・クリニックつくばの平野国美院長は、こう指摘する。
「看取りの経験が豊富なケアマネなら、不安なく自宅で最期を迎えられるでしょう。
一方で本人や家族は、在宅死を望んでいるのに、
救急車を呼んで、無理に入院させようとするケアマネもいる。
終末期の運命を握るのは、ケアマネなのです」
要介護認定を受けた人を担当するケアマネは、居宅介護支援事業所に所属している。
地域包括支援センターで事業所の一覧表がもらえるので、
いくつかピックアップして電話してみよう。
わからないこと、不安なことを質問して、複数の事業所に、自宅に説明に来てもらう。
比較検討した上で、いちばん信頼できると感じた事業所のケアマネと契約すればよい。
ケアマネ選びと同じく重要なのが、
在宅医療を受けるための往診医(在宅医)選びだ。
板橋区役所前診療所の島田潔院長が、良い往診医を見つけるコツを語る。
「最も安心できるのは、かかりつけ医が、往診をやっているケースです。
医療は、継続性が重要なので、普段から診てもらって、
持病や飲んでいるクスリを把握している医者がいちばんなのです。
もし、かかりつけ医と違う往診医にかかる場合も、
必ず『紹介状』を書いてもらいましょう。
特に高齢者は、過去の病歴との比較が大切です。
一方で、インターネットや口コミの情報は、あまり当てになりません。
往診医にかかっている人は、基本家にいて、近所の井戸端会議には加わることができませんから、
口コミで情報が流れることは少ないのです。
それよりは地域の介護、とくに看護事業者のほうが確かな情報を持っています」
全国在宅療養支援医協会で監事を務める和田忠志医師も、かかりつけ医が重要と語る。
「長く患者を診ていれば、かかりつけ医は、責任感も強くなります。
在宅医療を依頼すると、応じてくれることも珍しくありません。
その先生が往診に対応していなくても、
信頼のおける在宅医療の医師を紹介してくれる可能性が高い。
かかりつけ医に在宅医を紹介してもらい、
その在宅医にケアマネを紹介してもらうのもいい。
そうすれば、自宅で継続的に療養できる介護体制をしくことができます」
☆歯医者も家に来てくれる
往診医は、内科か外科の出身が多いが、
基本的には総合診療医として、あらゆる病状に対応できる。
往診の基本は、定期訪問診療。
月に1~2回、都合のよい日時を相談して訪問し、
血圧や脈拍、食事や服薬状況をチェックする。
また、患者に異変があれば、臨時の往診も行われる。
「加えて心強い制度が、介護保険のサービスである『居宅療養管理指導』です。
例えば、薬剤師が家に来て、飲んでいるクスリの管理をしてくれたり、
歯科医師・歯科衛生士が自宅で、歯の治療や調整を行ってくれたりします」(島田院長)
他に理学療法士が、リハビリを行うこともある。
このように在宅介護・医療のサービスを組み合わせれば、
保険の利く範囲で、かなり充実した支援を受けられる。
実際、『要介護1』の約76%、『要介護5』であっても約40%の人が、
在宅で介護を受けているというデータもある
(生命保険文化センター「令和3年度生命保険に関する全国実態調査」)。
施設に入ってしまえば、食事の時間やリハビリ、入浴などの時間もすべて決められて、
窮屈な暮らしを強いられる。
できるだけ自由な生き方を満喫したいなら、
在宅サービスを最大限に利用して自宅で過ごそう。 ・・》
注)記事の原文に、あえて改行を多くした。
今回、《・・知らないと大損する「在宅介護」・・》、
77歳の後期高齢者の私は学び、遅ればせながら多々教示されて、やがて微笑んだりした・・。
私が驚いたことのひとつには、
《・・『要介護1』の約76%、『要介護5』であっても約40%の人が、
在宅で介護を受けているというデータもある・・》、
と学び、微笑んだりした。
こうした前提には、
◎地域包括支援センターに於いて、介護の専門知識を持ったスタッフよりアドバイスを受ける、
◎健康状態をよく知っているかかりつけ医に、要介護認定の申請に伴い、
「主治医の意見書」を書いて頂く。
◎ケアマネジャーと、どのような介護を行うかプラン作成と実行。
できれば相性の良いケアマネジャーの選定
◎在宅医療を受けるための往診医(在宅医)、できれば『かかりつけ医』
このように思ったりして、何よりも在宅で介護して下さる御方次第で、
安楽な介護生活が送れるかどうか、と思い馳せたりした・・。
我が家は、たったふたりだけの家庭であるので、介護する方、
或いは介護される方・・
平素より思いやり、感謝の態度が大切だよねぇ・・と微苦笑したりしている。