ウィトラのつぶやき

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トヨタが自動運転でNTTと提携

2017-03-23 08:51:27 | 経済

今朝、歩きながらNHK-AMラジオを聞いているとトップニュースに「今日は籠池理事長の証人喚問が行われます」というのを流していた。NHKは朝の時間は30分に1回くらい5分程度のニュースを流す。この中で毎回これを繰り返す。これは今日のニュースでも何でもなく、前から決まっていたことである。新しい情報は何もないのにトップニュースとして繰り返すNHKにはジャーナリズムとしてのセンスの無さを感じる。

さて、今日の話題のトヨタとNTTの提携であるが、こちらは今朝の日経新聞の1面トップ記事である。これは経営の問題か、メディアの暴走か?

日経によると、トヨタはNTTと自動運転の技術で提携するという。中身を見ると5G無線通信システムを使った自動運転制御を共同開発するというような内容なのでNTTドコモが中心だと思われるがNTT本体も関わるそうである。私はこれは筋悪の提携だと思っている。

まず、トヨタがNTTを相手として選んだという点が問題である。トヨタはグローバル企業であるのに対して、NTTはドメスティックな企業であり視野が狭い。技術開発に関しても日本勢は自動運転の開発ではかなり出遅れている。トヨタからすれば、幅広い自動運転技術の中で、自動運転技術、それも通信部分だけ日本の法制度などに影響の強いNTTと組む、程度のつもりかもしれないが、世界戦略的にはむしろ足を引っ張られるのではないかと思う。

次に5Gシステムを使うとしている点であるが、これも筋が悪いと思う。5Gシステムというのは2020年あたりに最初の導入を目指している将来の移動通信システムであるが、これが広がるのは2025年、他の車も搭載しているとか、どこででも使えるとかいう状況になるのは2030年くらいになるのは確実だろう。今の流れからすれば5Gシステムそのものが失速する可能性もあると私は考えている。一方、自動運転の導入は2020年頃、内閣府は2025年には完全自動運転の導入を目標としている。5G無線搭載を自動運転の条件としてはとても間に合わないので、自動運転実現は無線通信は現在の4G (LTE) システムとカメラ、レーダなどを組み合わせて実現するべきである。5Gの普及を待っていては日本の自動運転導入は世界から5年も10年も遅れてしまうだろう。5Gシステムが広まれば、自動運転の事故率を減らすための有効なツールとして使えることは間違いないだろう。しかし、それは自動運転の導入を促進するものではなく、自動運転のパフォーマンスを上げるための道具として使うべきである。

今回のニュースは報道発表では無いようなので、NTTサイドからのリークに日経の記者が飛びついたものだろうと想像している。日本の時価総額1位のトヨタと、2位のNTTドコモ、3位のNTTの提携なので記者が飛びつくことは仕方がないだろうと思うが自動運転技術の現状、5Gシステムの動向を考えればたいした話ではないということは分かるはずである。日経社内にはこういうことが分かる人もいるはずなので、内部でもう少し練ってほしかったという気がしている。

今回の提携はトヨタにとってもそれほど重要な位置は占めていないと想像している。しかし、日本の自動車メーカは自動運転開発で出遅れているうえに、ホンダがGoogleと連携し、日産がマイクロソフトと連携することを発表しているのに対して、トヨタはITのジャイアントとの連携は発表せずに、ベンチャーへの出資や小さい企業の買収などを行って、自社で自動運転技術を開発する姿勢を見せている。そして、今回のような日本企業との提携のニュースが入ってくると「トヨタは大丈夫か?」と思ってしまう。