ウィトラのつぶやき

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楊令伝を読んで公的企業を考える

2013-09-21 11:11:26 | 生活

この夏、北方謙三の水滸伝から楊令伝を読み返している。水滸伝が全19巻、楊令伝が全15巻なので1日1冊読んでも一月以上かかる。2年ほど前に読んだのであらすじは覚えているが細かいところは忘れていて面白く読めている。今は楊令伝の最後のほうである。

楊令伝は水滸伝の続編で、宋の禁軍に滅ぼされた梁山泊が楊令を頭領として再結成し、宋軍を打ち滅ぼす。しかし、楊令はそれで宋を滅ぼすことはせずに中国内に人口500万人の「梁山泊国」を打ち立て、守りに入る。楊令が目指すのは古代ローマのような税金の安い共和港である。古代ローマはどんどん領土を拡大していくが、楊令は領土は拡大せずに小さく豊かな国を目指す。税金が安い代わりに国家企業を作り貿易で国庫を潤そうとする。そこには様々な障害があり、それを一つずつ乗り越えていくストーリーである。

梁山泊国は歴史には無い作家の作りだした架空の国である。しかし読んでいるとそれほど不自然さは感じず、作家は国家論をかなり深く勉強したという感じがする。現在でも公的企業が大きな利益を上げ、税金が安くて済んでいる国はある。サウジアラビアのアラムコがその典型例で、アラムコの上げる莫大な利益のおかげでサウジアラビアの税金は非常に安くて済んでいる。中国でも中国移動をはじめとして多くの企業は国営企業である。

日本をはじめ先進国では国営事業はどんどん民営化し、国は営利事業を行わない方向に動いてきた。しかし最近の動きでは国営企業が台頭してきている。国営企業の強みは投資力である。民間と比べてはるかに大規模な設備投資をすることができる。その一方で国営企業の弱みは危機感の欠如による効率の悪さである。日本では公務員になると身分が保障される一方、抜擢人事などが少なく、事業体としての効率が低下してくる。

しかし、中国移動で働く人たちを見ていると公務員という感じはしない。中国移動という企業の人という受け止め方で違和感はない。日本の公務員改革はこういった中国方式に学ぶべきではないかと思う。