ウィトラのつぶやき

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ノキアの携帯電話事業を振り返る

2013-09-04 13:17:34 | 経済

アメリカのマイクロソフトがフィンランドのノキアの携帯電話部門を買収すると発表した。ノキアと言えば携帯電話端末の会社というイメージがあるが、NSNというネットワーク機器の部門もある。NSNはNokia Siemens Networksという名前でノキアとシーメンスの合弁会社だったのをノキアがシーメンス株を買い取ってNSN (Nokia Solutions and Networks)に改名したばかりである。今後ノキアはネットワーク機器の会社となるのだろう。

ノキアはテレビなどを作っている家電機器の会社だったが1990年頃にヨルマ・オリラCEOが携帯電話の将来性を見込んでデジタル携帯電話に集中投資して世界第1の携帯電話端末の会社となった。2000年から2006年くらいまでは世界の30%から40%の市場シェアを持っていた。

2006年にCEOがオリペッカ・カラスボに代わりインターネットサービスを重視し始めた。この頃からノキアの停滞が始まったと思う。2007年にiPhoneが発売されAndroidが発表されてノキアの苦戦は明確な物になった。他の端末ベンダが一斉にAndroid採用に走る中、ノキアは独自路線を貫き、シェアはどんどん低下、業績は急速に悪化した。2010年、ノキアの取締役会はカラスボCEOを退任させ、マイクロソフトからステファン・エロップCEOを迎え入れ、OSとしてWindows Phoneを採用したが、業績は上向かず、今回のマイクロソフトに買収されるに至った。

ノキアがなぜAndroidを嫌ったのかは私にとっては謎であるが、ヨーロッパの政財界のモバイル分野がGoogleに支配されることを嫌った圧力があったのではないかと想像している。マイクロソフトに買収されればヨーロッパから見れば大差ないように思うのでその作戦は失敗したということだろう。

業績が悪化したとはいえ、端末の販売台数では現在でもAppleより多く、世界2位である。これはスマートフォンでは無いフィーチャーフォンで強いからである。ノキアの強さはしっかりした無線技術に支えられた工場の生産管理と製品の品質管理にあると私は思っている。無線技術はQualcommから買うことになるので重要度は下がってくるのかもしれないが、品質管理は重要である。マイクロソフトがハードウェアの品質管理力を維持できるのかどうか、疑問がある。

ノキアのカラスボCEOはノキアをダメにしたCEOという烙印を押されるのだろうが、インターネットサービスの重要性は理解していたし、シンビアンOSに続いてLinuxを使ったMeegoなども開発していた。それがあっさりとiOSとAndroidに抜かれてしまったのはなぜだろうと思う。私から見てもノキアのインターネットサービスはさえない感じがしていた。やはりシリコンバレーの肌感覚が無いと、こういう分野は難しいのか、と思ってしまう。

マイクロソフトに変わってスマートフォンはある程度挽回すると思っているが、新興国での端末でどこまで強さを発揮できるか、ノキアが持っていたシンプルだが安心して使えるという特徴をうまく出して行けるのかに今後のマイクロソフトの端末ビジネスはかかっているように思う。