伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

New Year's card from Ratkid

2008年01月01日 | エッセー

 

 なにを隠そう。あちらの呼び名で「RATKID JIROKITICHI」、こちらでは人呼んで鼠小僧次郎吉たぁ、あっしのことだ。鼠とはいうものの、ケチな盗みはしねえ。狙うは大店、でーみょー(大名)屋敷よ。 
 ここんとこの大店ときたら、偽饅頭を売っさばいて知らん顔を決め込んでるふてぇー野郎もいやがる。それから、出入りの商人(アキンド)から大枚の袖の下をせしめて飲めや歌えのごうつく役人。まったくあいた口が塞がらねぇーよ。 
 そこへいくと、この鼠小僧さんは、真っ当な暮らしの町の衆(シ)には指一本触れやしねぇー。それどころか、頂戴した金子はそっくりそのまんま、きょうのおまんまにも困るほど貧乏なすってる堅気の衆(シ)にお届けするのさ。びた一文、あっしの懐には入れやしねえ。だから、人はあっしを義賊と言って、大層持ち上げておくんなさる。ありがてぇーことよ。 
 だが、考えてもおくんなせい。身上(シンショウ)持ちの商人だって、民百姓が身を粉にして働いて、世の中、下んところで支えるからこそ成り立ってんじゃーありませんか。そこんとこ忘れてもらっちゃー、困りやすねー。阿漕(アコギ)なしょうべぇー(商売)をする奴に限って、それがまるで解っちゃーいねぇー。でーみょー(大名)なんざ、もっと質(タチ)がわれ(悪)ぇー。お百姓さんの上前をはねて、ふん反りけ(返)ぇーってやがる。だからほんとのところは、あっしのは盗むんじゃーねぇー、取り返すだけのことさね。 
 はえ(早)ー話が、国を盗めばでーみょー(大名)で、天下(テンガ)を盗めば将軍様てーことだ。そいで、このあっしのように、大名、大店で盗っ人を働けば義賊ってーことになる。だがね、でーみょー(大名)、将軍様にはお縄は掛からねぇー。そこが大違いさ。でぇーいち(第一)、捕り方はでーみょー(大名)の下っ端で、でーみょー(大名)は将軍様の手下。まるで話にも何にもなりゃーしねぇー。割りを食うのはいつもあっしら、下々の者さね。もぉー、どこにも言ってくところはありゃーしない。浮世のどん詰まりが、つまり、あっしたちってーことだ。そのどん詰まりが、挙げ句、跳ねけ(返)ーって猫に噛みつくっーてーのが、つまり窮鼠猫を噛むてーことでござんしょうか。それで世の中、いくらも変わるものじゃーござんせんが、犬の遠吠えよか少しはましでございましょう。そんな心持ちで、あっしは稼業に精を出しておりやす。そのうち、時の潮目ってーやつが巡ってきて、世の中ひっくりけ(返)ーることだってあるかも知れねー。そうなりゃー、あっしたちの天下だ。尤も夢のまた夢、戯れ言、世迷い言でござんしょうがねー。

 まあー、年明け早々、愚痴ってもしょうがねぇー。義賊ってー、ありがてーなめー(名前)を汚さねぇーよーに、今年も、せいぜい気張ってめー(参)りやしょう。 
 おーっと、言い忘れてやした。どちら様も、新年あけましておめでとうさんにござんす。今年もこのブログ、大いにかわいがってやっておくんなさいまし。鼠からのお願いにござんす。へい。



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