伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

今日はなんの日?

2021年04月02日 | エッセー

「県内で聖火リレー予定者の辞退が相次ぐ中、荊妻が急遽聖火ランナーに選ばれました。日時は5月15日、午後3時から。駅前の国道、200メートルを走ります。今日からトレーナーがついて練習が始まります。激励、よろしく!」
 昨日午前8時、家族友人10人に一斉送信したメールである。妹と娘には即刻見破られた。「あの体では20メートルがやっと。200メートルなんて自殺行為だ」と。悴を含め残り8人からは早速頑張ってというメールが寄せられ、今日がなんの日かやっと気づいたそうだ。なんとも素直な人たちだ。裏返せば日ごろ稿者がいかに信頼されているかの証でもある(エヘン!)。
 かつて現役の頃、近くの浜に体長6メートルのクジラが打ち上げられたと同僚に囁いたことがあった。「ここだけの話だけど」と。案の定、「ここだけ」が連鎖して他社を含め十数人が浜に押し寄せるハプニングが起こった。反響の大きさに、さすがに身を隠す羽目になった。
 年に1度、稿者にとってのビッグイベントである。そのエイプリルフールとは一体なにか? 旧稿を引いてみたい。
 〈エイプリル・フール ―― むかし、むかし、日本では戦国時代のころだ。フランスの王様が1年の始まりを1月1日に変えた。それまでは、3月25日が新年だった。4月1日までが春の祭り。永く続いた慣習だった。おそらく農作業の流れに由来したものだったろう。王様はそれを無視した。民衆は反発し、4月1日を「嘘の新年」として、腹立ち紛れのどんちゃん騒ぎを始めた。逆ギレした王様は騒いだ連中を根こそぎひっ捕らえ、処刑してしまった。「四月バカ」という冗談めかした呼び名とは逆に、由来は相当に陰惨で血なまぐさい。〉(07年4月「絶筆 宣言」から)
 王様が新たに採用したのはは現行太陽暦に当たるグレゴリオ暦であった。理屈に敵った改暦である。そんなことは知らない民衆は長い習慣を棄てるよう強要されて猛反発。それが「嘘の新年」のドンチャン騒ぎだった。
 と、ここまで来てなにかが二重写しになってくる。そう、昨今の何とか宣言とそれに抗う路上・公園呑みとバカ騒ぎ、年寄り連中のカラオケ浸り、時短要請と時短破りのイタチごっこだ。お上による飲食店の時短は民衆の「長い習慣」を棄てよと迫るものだ。時短はそれなりに「理屈に敵った」ものではあろうが、何度も出したり引っ込めたりされるといい加減辟易する。仕舞いには罰金を獲るという。「騒いだ連中」に「逆ギレした王様」同然ではないか。かてて加えて、本邦の王様とその取り巻きたちはご法度破りの宴会に精を出す。顰蹙の大量買いだ。民衆のドンチャン騒ぎも宜なる哉だ。調べてみたが、件の「フランスの王様」や臣下には破廉恥なご法度破りの記録はない。
 万策尽きかけた後手後手内閣、今度は「まん防」(蔓延防止等重点措置)らしい。
  〽 マンボウ マンボウ
   なるほど僕は
   進歩には縁がないが
   そういう君は
   やすらぎに縁がないね 〽
 吉田拓郎「マンボウ」の一節(マンボウは魚、「まん防」の駄洒落。失礼)。「進歩」には無縁だが、「やすらぎ」は手放せない。それが大衆の心だ。スッカスッカ内閣に言う。もっと悩め、ない知恵でももっと絞れ! でなければ、君たちには「縁がない」とじきにそっぽを向かれるぞ。 □