伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

新聞スクラップ

2011年10月17日 | エッセー

■ 羽があるのに
〓〓F2戦闘機6機を修理へ=津波で水没―防衛省
 防衛省は、東日本大震災の津波で水没した航空自衛隊松島基地(宮城県東松島市)のF2戦闘機18機のうち、6機を修理して再使用する方針を決めた。残り12機は被害が大きいため、処分する。2011年度第3次補正予算案で、修理費約1090億円(契約ベース)を要求した。修理が順調に進めば、5年後に再飛行できる見通しだ。
 防衛省は水没した18機について、既に約136億円を投じて修理が可能かどうか調査していた。18機のほとんどが、海水に漬かって電子機器類が使えなくなっていたり、エンジンや機体が腐食したりしている状態という。〓〓(9月18日付朝日)
 後日、天声人語も取り上げた。
 鴨長明が京都で起きた地震を「羽がなければ、空をも飛ぶべからず」と歎き、今回の大地震でも飛んで逃げたカモメをうらやむ声を聞いたと綴った後、
〓〓「羽があるのになぜ」と思わせたのが、宮城の航空自衛隊松島基地で津波を浴びた戦闘機である。1機110億円で買った18機が水没した。「お粗末」という投書が先の声欄に載った。
 離陸には時間がかかり、間に合わないとの判断だったという。無理をすれば人命も危なくなる。それは分かるとして、これだけの損失と出費を、気前よく不問には付せない国民も多かろう。
 不作為の責任はなかったか。次期戦闘機という総額1兆円規模、ピカピカの買い物の前に、進んでの検証と開示が欲しい。〓〓(10月14日付、抜粋)
 と苦言を呈している。
 「離陸には時間がかかり、間に合わない」はおかしい。津波の到達まで10数分もあったのにスクランブルが掛けられないのでは、なんとも間拍子に合わない。何のために羽を付けているのか。第一、何のためにそこにいるのか。陸自は涙ぐましい救援活動で大いに名を高からしめたが、空自で相殺されてしまった。こないだは名を落としついでに燃料タンクまで落した。国会も、マスコミもこのようなムダをきちんと糾すべきだ。1090億円は膏血である。最低限、関係者を厳しく処分すべきだ。津波はコントロールできずとも、シビリアン・コントロールの健在は見せてほしいものだ。

■ おーい、行くとこがちがうゾ! 
〓〓菅氏のお遍路 大師も困惑?
 誰であろうと、お遍路をするのは勝手だが、議員の仕事も出ず、のんびりとお遍路をしていていいのか。大震災からの復興と原発事故の1日も早い収束を祈ったそうだが、遠く離れた四国からでは、祈りが届くとは思えない。菅氏が行くべきは多くの被災者が今も苦しんでいる被災地である。首相としての不始末や至らなさを反省しつつ、被災者の声に耳を傾け、一議員として努力すべきだ。遍路に出るなら議員を辞めてからにしてもらいたい。議員歳費をもらいながらの遍路旅は認めない。〓〓(10月10付朝日「声」欄、抜粋)
 やはり具眼の士はいるものだ。まったくその通りだ。おまけにSPまで付く。なにを仰々しい。当然公費だ。飽きもせず、またぞろ安っぽいパフォーマンスか。鳩ぽっぽといい、カンちがいといい、どじょうといい、『どーじょう』もないノダ(お粗末!)、この政党は。

■ 神がかり
〓〓沢選手ら招き園遊会 陛下、決勝守備に「びっくり」
 天皇、皇后両陛下が主催する秋の園遊会が13日、東京・元赤坂の赤坂御苑で開かれ、約2千人が出席した。園遊会は今春は震災のため中止しており、昨秋以来1年ぶり。
 女子サッカー日本代表「なでしこジャパン」主将の沢穂希選手は水色に花柄の振り袖姿。ワールドカップ(W杯)優勝について天皇陛下に「おめでとう。ずいぶん練習されたでしょう」と言葉をかけられ「佐々木(則夫)監督のもと、たくさん練習しました」と答えた。W杯決勝PK戦でGK海堀あゆみ選手が足でシュートを止めたことについて天皇陛下は「足でああいうことができるのかなとびっくりしました」と感想を述べ、佐々木監督は「神がかりでした」と答えた。〓〓(10月14日付朝日)
 佐々木監督の応えが絶妙ではないか。世が世なら現人神であるお方に「神がかり」とは、きわどくもあり、間が抜けているようで可笑しくもある。こんなやり取りが平気で交わせて、軽い笑いが起こる。皇室との距離も程よいのではないか。
 巧まず出てきた言葉であろうが、この監督はピッチ外でも相当イケる。□