伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

なでしこジャパン

2011年07月15日 | エッセー


 胸のすく快挙、壮挙だ。女子W杯準決勝。鬱陶しい日本に一陣の涼風が吹き抜けた。
 大和は日本の古称であるから、「なでしこジャパン」とは大和撫子の逆さ読み、和洋合体だ。かといって、「ピンクジャパン」ではまことによろしくない。「ジャパンなでしこ」では落ち着かない。やはりこれしかないか。明治期に、横文字に手古摺る様を皮肉った「ギョエテとは おれのことかと ゲーテ言い」という川柳がある。なんだか一脈通じる可笑し味がある。昨今、男子はますます草食系動物に擬せられ、女子はいよいよ肉食(ニクジキ)の猛禽にメタモルしつつある。なでしこジャパンがその一典型だとすれば、美称との落差がさらにおもしろい。
 日本経済の未開の推進力として女性、別けても専業主婦を代表とする有償労働をしていない女性に着目する識者がいる(藻谷浩介著「デフレの正体」)。女性の有償労働者数は生産年齢人口の実に45%でしかない。なにも外国人労働者を連れて来ることはない。教育水準が高く、もちろん日本語が自由で、高い能力を持つ大和撫子がわんさといるのだ。この層が働くだけで家計所得が増え、税収が増し年金も安定する。内需拡大だ。デフレの元凶ともいえる生産年齢人口の減少は一挙に解決する。デフレへの起死回生策だという。さらに先進国を含め、若い女性が働くと出生率が下がることはなく、むしろ逆に高くなるそうだ。まさに一石二鳥ではないか。TPPよりもこちらの環境整備が急務だ。
 決戦が近づいた。その猛々しい戦いは、草食系に替わる新しいヒーローの登場かもしれない。□