●日雇い派遣を原則禁止へ
格差問題への批判などを受け、与党が合意(1日)。厚労省が秋の臨時国会に労働者派遣法改正案を提出へ。
―― 賛否両論のある政策変更だ。専門職に限られていた「派遣」を原則自由に変えたのが1999年。「失われた10年」、「就職氷河期」の只中だった。今度は当初の原則禁止へ戻すという。世の動きに即応したフレキシビリティーは大事だ。しかし、政治の波に翻弄される若者たちが可哀想でならぬ。
●大阪・道頓堀の「くいだおれ」閉店
看板人形の「くいだおれ太郎」の人気が最高潮に(8日)
―― ある学者の調査によると、「太郎効果」は三十数億円という。太郎は言うまでもないが、それにもましてあの女将だ。テレビメディアを上手に使い、閉店を逆手にとって大儲け。転んでもただでは起きぬ。難波商人の面目躍如だ。大阪のオバハンは健在である。
●北海道洞爺湖サミット
福田首相議長を務め、2050年までの温室効果ガス排出量半減という長期目標を共共有することなどで合意(7~9日)
●世界貿易機関(WTO)多角的貿易交渉が決裂
ジュネーブでの閣僚級会合で、途上国に限り認める特別緊急輸入制限(セーフガード)措置の発動条件を巡り、インド・中国と米国が対立(29日)
―― 二つをひとつの視点から捉える。つまり、パラダイムシフトが起こっている。四捨五入していうと …… 原油・農産物の高騰は投機筋の動きだけが要因ではない。BRICsだけでも30億の人口を抱える。人類の約半分だ。さらに他の新興国が続く。今までは8億人の先進諸国が世界の食料と資源を握り、廉価に抑えてきた。ところが中印が高度成長し、需要が急増した。供給が追いつかない。需給のバランスが構造的に崩れているのた。
カネが貯まれば発言力も増す。ドーハ・ラウンドの決裂はその象徴である。対立の図式は【中+印 vs 米】。極めて明快だった。前後するが、洞爺湖サミットも然りだ。焦点だった50年までの温室効果ガス半減は、G8の責任は曖昧のまま。中印が加わった宣言では、「50年までに半減」の文言もなくなった。ただ中印などの新興国を議論のテーブルに着かせ、地球的な問題群に正対させたのは大きな成果だ。リップサービスだとしても、公の場で解決への協力を表明したことの意義は重い。
G7がG8になり、実質的には中印を入れると、今やG10だ。つまりは、G(グループ)のビッグ・ワンたるアメリカが相対的に存在感を弱めている。20世紀を主導した『アメリカ帝国』が後景に退き始めた。それが印象に濃く残る洞爺湖とジュネーブだった。
『帝国』の残映を追ったものの徒花ですらなかったブッシュは、次回のテーブルにはいない。
●「iPhone3G」日本で発売
米アップルの携帯電話「iPhone3G」がソフトバンクモバイルから発売(11日)
―― ケータイ事情については前稿「電話もできるケータイ?!」で語った。筆者もすぐに乗り換えたいが、15年にもなるauユーザー。なかなか不義理はできぬ。伜は今月早々にiPhone3Gに買い替えた。義理も人情もないヤツだ。
●野茂英雄投手が引退
トルネード投法で日米通算201勝。「悔いのない野球人生だったという人もいるが、僕の場合は悔いが残る」(17日)
―― 07年5月16日付本ブログ「カズかヒデか」でこう述べた。
〓〓カズ型か、ヒデ型か ―― いいか悪いか、という話ではない。あなたはどちらに惹かれますか、という話だ。スポーツは人生の写し絵でもある。準(ナゾラ)えもできるが、現身(ウツセミ)は儘ならぬことだらけだ。その通りにはいかぬ。いわゆる「定年」以降の話ではない。むしろ絶頂は現役の直中(タダナカ)にあり、その後も依然として現役であり続けねばならぬところに難儀はある。絶頂が定年に重なればこれほどの僥倖はあるまいが、万に一つだ。〓〓
愚稿の中で、桑田真澄、野茂英雄、有森裕子を『カズ型』に入れた。「僕の場合は悔いが残る」との発言は、『カズ型』を奇しくも傍証する。桑田が引退を発表したのが3月。またひとつ星が流れた。
●大雨、増水で児童ら5人死亡
神戸市の都賀川が急激に増水、川遊びの児童らが流された(28日)
―― 事故は「親水公園」で起こった。一瞬にして『恐水公園』と化した。なぜか。河川政策の誤りだ。
宅地開発のために川を細くしたのだ。都賀川でも、70メートルもあった川幅が11メートルに狭められた所がある。当然、より深くせねばならない。川は低くなった川底と切り立った両岸をコンクリートで固められ、「排水路」に役割を変えていった。その後自然環境への意識が高まり、川底に自然石を配置したり護岸内部に遊歩道を造って「親水公園」という名の『憩いの場』へと変わっていく。しかし、本質は排水路である。人工の排水路を「親水」と偽称したにすぎぬ。川上はもとより、周辺の水を短時間に集めて一気に流す。だから、事故は起こるべくして起こった。
避難誘導システムの整備を論ずる前に、河川行政の錯誤を認めることが先だ。お為めごかしの「親水」など即刻止めるべきだ。「これからは川から逃げ遅れないような警報の出し方や避難誘導システムの導入を検討したい」と、県の担当者が話したそうだ。はなしはあべこべだ。こういう役人こそ大阪湾に流してしまいたい。
●漁師が一斉休漁
燃料費の高騰を訴え、全国20万隻の漁船が(15日)。政府は燃料費補助を盛り込んだ原油高対策を発表(29日)
―― なぜ漁業だけに、という疑念が起こる。まず燃料費は漁業のコストの3~4割を占めることが一つ。運送業界が1割だから格段に違う。もろに原油高の大波を食らっている。二つ目に、市場での競りで価格が決まること。工業製品のように直交渉ではない。言わば、「買い手市場」なのだ。コストの増加を価格に転化しにくい構造だ。おまけに、近年の魚離れである。価格は低迷を免れない。
指摘されるように、単なるばらまき支援で終わってはならない。これを機に、省エネや流通改革など漁業の体質転換を図っていかねばならない。なにせ日本はEEZ世界第6位の「海の国」だ。捨てたものではない。
まな板に乗った魚の目が怖いといって捌けないヤングママ。まずはこの辺りからなんとかせねばならない。『さかなクン』にも大いに奮闘を願いたいところだ。
●イテローが日米通算3千本安打
34歳9カ月で。4千本安打も「ものすごく遠くだけど、見えないことはない」(29日)
―― 少なくとも米国では、クロサワを凌ぐ一番有名な日本人だ。張本の記録は指呼の間。有言実行がイチローの魅力の一つだ。「見えないことはない」金字塔を是非とも仰ぎ見たい。
●哀悼 …… 大野晋さん (国語学者)88歳(14日)
―― もちろん著作でだが、いろいろなことを学んだ。教訓にしていることもたくさんある。持論の日本語「南インド起源説」も魅力的だった。米寿での他界。御冥福を祈るのみ。
(朝日新聞に掲載される「<先>月の出来事」のうち、いくつかを取り上げました。見出しとまとめはそのまま引用しました。 ―― 以下は欠片 筆)□
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格差問題への批判などを受け、与党が合意(1日)。厚労省が秋の臨時国会に労働者派遣法改正案を提出へ。
―― 賛否両論のある政策変更だ。専門職に限られていた「派遣」を原則自由に変えたのが1999年。「失われた10年」、「就職氷河期」の只中だった。今度は当初の原則禁止へ戻すという。世の動きに即応したフレキシビリティーは大事だ。しかし、政治の波に翻弄される若者たちが可哀想でならぬ。
●大阪・道頓堀の「くいだおれ」閉店
看板人形の「くいだおれ太郎」の人気が最高潮に(8日)
―― ある学者の調査によると、「太郎効果」は三十数億円という。太郎は言うまでもないが、それにもましてあの女将だ。テレビメディアを上手に使い、閉店を逆手にとって大儲け。転んでもただでは起きぬ。難波商人の面目躍如だ。大阪のオバハンは健在である。
●北海道洞爺湖サミット
福田首相議長を務め、2050年までの温室効果ガス排出量半減という長期目標を共共有することなどで合意(7~9日)
●世界貿易機関(WTO)多角的貿易交渉が決裂
ジュネーブでの閣僚級会合で、途上国に限り認める特別緊急輸入制限(セーフガード)措置の発動条件を巡り、インド・中国と米国が対立(29日)
―― 二つをひとつの視点から捉える。つまり、パラダイムシフトが起こっている。四捨五入していうと …… 原油・農産物の高騰は投機筋の動きだけが要因ではない。BRICsだけでも30億の人口を抱える。人類の約半分だ。さらに他の新興国が続く。今までは8億人の先進諸国が世界の食料と資源を握り、廉価に抑えてきた。ところが中印が高度成長し、需要が急増した。供給が追いつかない。需給のバランスが構造的に崩れているのた。
カネが貯まれば発言力も増す。ドーハ・ラウンドの決裂はその象徴である。対立の図式は【中+印 vs 米】。極めて明快だった。前後するが、洞爺湖サミットも然りだ。焦点だった50年までの温室効果ガス半減は、G8の責任は曖昧のまま。中印が加わった宣言では、「50年までに半減」の文言もなくなった。ただ中印などの新興国を議論のテーブルに着かせ、地球的な問題群に正対させたのは大きな成果だ。リップサービスだとしても、公の場で解決への協力を表明したことの意義は重い。
G7がG8になり、実質的には中印を入れると、今やG10だ。つまりは、G(グループ)のビッグ・ワンたるアメリカが相対的に存在感を弱めている。20世紀を主導した『アメリカ帝国』が後景に退き始めた。それが印象に濃く残る洞爺湖とジュネーブだった。
『帝国』の残映を追ったものの徒花ですらなかったブッシュは、次回のテーブルにはいない。
●「iPhone3G」日本で発売
米アップルの携帯電話「iPhone3G」がソフトバンクモバイルから発売(11日)
―― ケータイ事情については前稿「電話もできるケータイ?!」で語った。筆者もすぐに乗り換えたいが、15年にもなるauユーザー。なかなか不義理はできぬ。伜は今月早々にiPhone3Gに買い替えた。義理も人情もないヤツだ。
●野茂英雄投手が引退
トルネード投法で日米通算201勝。「悔いのない野球人生だったという人もいるが、僕の場合は悔いが残る」(17日)
―― 07年5月16日付本ブログ「カズかヒデか」でこう述べた。
〓〓カズ型か、ヒデ型か ―― いいか悪いか、という話ではない。あなたはどちらに惹かれますか、という話だ。スポーツは人生の写し絵でもある。準(ナゾラ)えもできるが、現身(ウツセミ)は儘ならぬことだらけだ。その通りにはいかぬ。いわゆる「定年」以降の話ではない。むしろ絶頂は現役の直中(タダナカ)にあり、その後も依然として現役であり続けねばならぬところに難儀はある。絶頂が定年に重なればこれほどの僥倖はあるまいが、万に一つだ。〓〓
愚稿の中で、桑田真澄、野茂英雄、有森裕子を『カズ型』に入れた。「僕の場合は悔いが残る」との発言は、『カズ型』を奇しくも傍証する。桑田が引退を発表したのが3月。またひとつ星が流れた。
●大雨、増水で児童ら5人死亡
神戸市の都賀川が急激に増水、川遊びの児童らが流された(28日)
―― 事故は「親水公園」で起こった。一瞬にして『恐水公園』と化した。なぜか。河川政策の誤りだ。
宅地開発のために川を細くしたのだ。都賀川でも、70メートルもあった川幅が11メートルに狭められた所がある。当然、より深くせねばならない。川は低くなった川底と切り立った両岸をコンクリートで固められ、「排水路」に役割を変えていった。その後自然環境への意識が高まり、川底に自然石を配置したり護岸内部に遊歩道を造って「親水公園」という名の『憩いの場』へと変わっていく。しかし、本質は排水路である。人工の排水路を「親水」と偽称したにすぎぬ。川上はもとより、周辺の水を短時間に集めて一気に流す。だから、事故は起こるべくして起こった。
避難誘導システムの整備を論ずる前に、河川行政の錯誤を認めることが先だ。お為めごかしの「親水」など即刻止めるべきだ。「これからは川から逃げ遅れないような警報の出し方や避難誘導システムの導入を検討したい」と、県の担当者が話したそうだ。はなしはあべこべだ。こういう役人こそ大阪湾に流してしまいたい。
●漁師が一斉休漁
燃料費の高騰を訴え、全国20万隻の漁船が(15日)。政府は燃料費補助を盛り込んだ原油高対策を発表(29日)
―― なぜ漁業だけに、という疑念が起こる。まず燃料費は漁業のコストの3~4割を占めることが一つ。運送業界が1割だから格段に違う。もろに原油高の大波を食らっている。二つ目に、市場での競りで価格が決まること。工業製品のように直交渉ではない。言わば、「買い手市場」なのだ。コストの増加を価格に転化しにくい構造だ。おまけに、近年の魚離れである。価格は低迷を免れない。
指摘されるように、単なるばらまき支援で終わってはならない。これを機に、省エネや流通改革など漁業の体質転換を図っていかねばならない。なにせ日本はEEZ世界第6位の「海の国」だ。捨てたものではない。
まな板に乗った魚の目が怖いといって捌けないヤングママ。まずはこの辺りからなんとかせねばならない。『さかなクン』にも大いに奮闘を願いたいところだ。
●イテローが日米通算3千本安打
34歳9カ月で。4千本安打も「ものすごく遠くだけど、見えないことはない」(29日)
―― 少なくとも米国では、クロサワを凌ぐ一番有名な日本人だ。張本の記録は指呼の間。有言実行がイチローの魅力の一つだ。「見えないことはない」金字塔を是非とも仰ぎ見たい。
●哀悼 …… 大野晋さん (国語学者)88歳(14日)
―― もちろん著作でだが、いろいろなことを学んだ。教訓にしていることもたくさんある。持論の日本語「南インド起源説」も魅力的だった。米寿での他界。御冥福を祈るのみ。
(朝日新聞に掲載される「<先>月の出来事」のうち、いくつかを取り上げました。見出しとまとめはそのまま引用しました。 ―― 以下は欠片 筆)□
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