伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

日曜はお休みですか?

2007年01月28日 | エッセー
「はじめに、お客様のお名前とシリアルナンバーをお聞きします」
「名前は○○です。ナンバーは○○○○です」
 (キーを叩く音が聞こえ、やや間があって)
「では、ご質問をどうぞ」
「変なことを聞きますが……。このソフトを使って今年で10年になります。でも、記憶するかぎり日曜日にウイルスパターンの更新がされたことがありません。……日曜日にはウイルスは発生しないんでしょうか?」
「いえ、決してそんなことはありません。日曜日に配信することもございます。でも普通は月曜日にまとめて配信しております」
「え、どうして」
「月曜日から会社関係が動き始めますので、それに合わせて、まとめてですね……」
 (遮るように)
「でもそれはおかしいでしょう。個人ユーザーは、むしろ日曜日こそたくさん使うんですよ」
 (明らかに、相手の声がトーンダウン)
「あ、はい」
 (少し冗談めかして)
「日曜にはウイルスさんもお休みならいいんですが。ハッカーだって休みの日曜日には張り切るんじゃないですか?」
 (引きつり気味に)
「ホ、ホ、ホ」
「個人ユーザーのことも考えて、勤務態勢を変えたり、なんか工夫してほしいですね。ぜひ、こういう意見があったと上げておいてください」
 (多少、事務的に)
「はい、承りました」

 決して死ぬほど暇だったからではない。ずーっと前から気になっていたのだ。昨日、意を決して電話してみた。
 たしかに、ニュースになるくらいの猛者が出現した時は日曜返上で事に当たるらしい。しかしそれは年に一度あるかないかだ。ネット社会の現状を考えれば、アンチウイルスの業界にもインフラの担い手であるとの社会的使命を自覚してほしいものだ。
 早い話が、泥棒さんに日曜も旗日もないだろう。むしろそれは稼ぎ時だ。110番や119番が日曜はお休みです、となったらどうする。ましてやネットは地球規模だ。日時はまちまちだ。さらに、ムスリムの域内では金曜日が休日となる。
 どことは言わないが、わたしが使っているソフトは至極メジャーなメーカーのものだ。他社も同様かどうかは委細に調べたわけではないが、似たようなものであろう。
 そこで、『欠片の主張 その4』

  ―― アンチウイルスのメーカーは日曜・祭日関係なくワクチンを配信せよ! かつ、24時間のサポート体制を整備せよ!

  一説によると、ウイルスは1時間に20個も増殖を続けているという。暢気(ノンキ)に構えていると、ネットは穴だらけになってしまう。先行メーカーが殿様商売に胡座をかいている隙に、『カスペルスキー』に足下をすくわれかねない。その創業者は元KGB。筋金入りのプロフェッショナルだ。危機意識が違う。いまやKasperskyは世界を席巻する勢いだ。先行メーカーの諸氏よ、ぜひ一考を。
 と、ここで筆を置こうとしたのだが、ご同輩がいた、いた。国会議員の先生方である。いつのころからか、どういうわけか、国会も土日はお休みである。こちらは土曜日もだ。まことに呑気なものである。「国事多難の折」とは常套句だが、その割には悠長ではないか。仄聞するところ、土日には選挙区にお帰りになるという。「国民の声を直に聞く」のだそうだ。しかし有り体に言えば、選挙区の手入れであろう。
 頂門の一針になるかどうか。先生方に次の言葉を贈りたい。 
 「政治屋は次の選挙のことを考え、政治家は次の時代のことを考える」 米国の思想家・J.Fクラークの箴言である。
 
 さて、本稿をアップロードする前に試してみた。やはり、更新なし。ちなみに今日は日曜日である。□