私はお笑い芸人(B問題以外全て)とABC48とかDEF28とか(?)のガールズ・グループが大嫌い。お笑い芸人の又吉直樹が読書家で多くの文芸書を読んでいる事は知っていたが、どうせお笑い芸人とすぐには食指が動かなかった。文学界二月号が史上初の増刷などとセンセーショナルな情報が耳に入りついに手に取った。スタートの舞台が熱海と言うのもよかった。お笑い芸人の苦悩が著者の持てるたくさんの語彙と鋭いが優しい観察眼で淡々と語られ、時に笑わせるがそれも切なく感じる、実に真面目なストーリーで心を打つ場面が多かった。やはり彼の読書量が身になっているのだと思う。心の葛藤の後の眼差しの先の自然の描写などさらっと書いていてとても胸に沁みる…うまいと思った。お笑いは”笑われたらあかん、笑わさなあかん”哲学的な考えも底には流れ彼の思考の深さが解る。ラストは少し変になってしまった先輩とまた熱海の花火を観にくる。大手のスポンサーの壮大な花火に互して個人が提供した小さな花火のプロポーズのメッセージに観客が万来の拍手と歓声を上げた。「これが人間やで」と”僕”の先輩は言った…で終わる。ちょっと変わった世界だが著者の人間としての優しさはぶれない。彼には新人賞が行くのでは?。