Mrs.Uponwaterのブログ

日記です♪

信長の血脈 加藤廣著 (文春文庫)

2015-01-09 17:52:42 | 日記
「信長の棺」を読んで以来加藤廣のファンになった。彼は信長の直臣太田牛一の「信長公記」から疑問や面白いことに注目してミステリーにしたり膨らませて物語を展開させ、度々”信長公記”には…と説明があるので納得し理解し易く私の好きな所以です。本能寺の変では信長の遺体が不明になるが、阿弥陀寺の清玉上人の顔にすべてが表われていて胸に深く沁みたものです。母土田御前と長兄信行に虐げられ反抗的で強暴な信長が誕生した。そして信長の傳役平手政秀が自害したのは主人の奇行を諫める為だと言う通説を著者は覆した。政秀は後継をめぐって長兄信行を溺愛する土田御前と信長との狭間にたたされ一人悩み、土田御前に「傳役ゆえの裏の褒賞はなんじゃ」と屈辱の言葉をなげかけられ「天地神明にかけてありませぬ」と答えた。政秀自害後のお方さまへの遺書は「天地神明」の四文字、信長への小箱には幼少の頃浪籍を繕うために政秀が準備した、しめ縄で縛った小石が入っていた。血筋や情のしがらみを一切捨て去るという果断な信長の性格を形成したのが、母の愛を知らぬ幼い頃からの信長の悲しみの結果であろう…と物語っている。著者のこの血の通った暖かい眼で見た解釈は心に深く残ります。