旬刊・上原直彦 「浮世真ん中」の内『おきなわ日々記』」アーカイブ版

17年の長きに渡り、ネット上で連載された
旬刊・上原直彦 「浮世真ん中」の内『おきなわ日々記』のアーカイブサイトです!

“燦”の琉歌

2015-03-01 00:10:00 | ノンジャンル
 燦=さん・あざやか。あきらか。きらびやか。ひかりかがやくさま。
 RBCiラジオ生放送企画「ゆかる日まさる日さんしんの日」は3月4日午前11時45分から午後9時まで実施。その年のテーマを1字で表す漢字を選定しているが、23回目の1文字は“燦”。
 内憂外患。年明けから沖縄は多くの問題を抱えている。それらに対処して、負けずに生き抜くには、県民1人ひとりの(心の燦)が不可欠」。
 そこまで大仰ではないが、とかく伝統文化のひとつ(三線ロマン)を通して“燦”を共有しようというのが、選定理由としている。

 「燦の1文字を織り込んで琉歌を7首詠んでほしい。それを大書してメインステージに掲示して、シーンによって観客ともども歌いたい」。
 まったくの無茶ぶりである。心・花・情・和・輪などなどなら、ある程度の三八八のの詠歌は捻り出せるが“燦”は難しい。けれども、スタッフの演出意図は汲まなければならない。古今惨憺。間に合わせはしたが・・・・。大目に見逃していただいて詠んでみた。“燦の意”だけを笑感していただきたい。

 ◇太陽ん燦々とぅ 三昧ん燦々とぅ 今日ぬ佳る日 共に遊ば
 〈ティダんさんさんとぅ サミんさんさんとぅ きゆぬゆかるひに とぅむにあしば

 ◇黒木蛇皮張いに 三筋糸掛きてぃ 燦々とぅ心 繋じ置かな
 〈くるち じゃひばいに みすじとぅ かきてぃ さんさんとぅ くくる ちなじうかな

 ◇燦々とぅ響ゆむ まさる日ゆでむぬ 目眉打ち開らち 盛かてぃなびら
 〈さんさんとぅ とぅゆむ まさるひゆでむぬ みまゆ うちふぃらち さかてぃなびら

 ◇沖縄三線や 何時ん燦々とぅ 島ぬ上ゆ照らす 神ぬ恵み
 〈うちなサンシンや いちん さんさんとぅ シマぬうぃゆ てぃらす かみぬみぐみ

 ◇燦々とぅ音色 世界に轟かち 弥勒我が沖縄 誇てぃなびら
 〈さんさんとぅ にいる しけに とぅどぅるかち ミルクわがうちなぁ ふくてぃなびら

 ◇今日ん燦々とぅ 明日ん明々とぅ 三線ぬ音色 民とぅ共に
 〈きゆんさんさんとぅ あちゃん あかあかとぅ さんしんぬ うとぅぐぃ たみとぅ とぅむぬ

 ◇天ぬん 走い巡ぐてぃ 海んまた渡てぃ 光表する 花ぬ沖縄
 〈てぃぬん はいみぐてぃ うみんまた わたてぃ ひかり あらわする はなぬうちなぁ

 “燦”“燦々”をそのまま使った琉歌は、これまで私の目には止まっていない。大抵は太陽がそれを代表し、晴れ晴れ・明々などに置き換えられて表現してきている。共通語を制定するまで各地方語、語数が少なく、その地方によって見た目、感じたままで名詞、形容詞などを日常語としてきている。
 沖縄語の場合、日本語方言の中でも(特異)と言い切っていいだろう。しかも、日本語が50音から成っているのに対して沖縄語は基本的に30音である。現在のように共通語が言語の主流になったため(沖縄口は難しい)と言われる所似ではなかろうか。そのことは各地方とも同様なことと思われる。
 待て!待て。
 またぞろ悪い癖の屁理屈が出た。容赦・・・・。
 お詫びに“燦の琉歌”に用いた沖縄語の語意を記せていただく。

 ◇遊=娯楽的(遊び)ももちろんだが、祭事・祭祀の場合、心をひとつにするさまを表す。神遊びがその最たる語。
 ◇黒木蛇皮張い=三線の別称。ただし(蛇皮)は普通の蛇皮ではない。ましてハブ皮でもない。ニシキヘビを指す。現在でも主にベトナム産を張っている。ここにも中国・東南アジアとの交易の歴史を知ることができる。
 ◇響ゆむ=響き渡る。広く知らされるさま。古謡にもあって、誇りのさまを表す。
 ◇弥勒=弥勒菩薩。転じて(弥勒菩薩に守護された)平和・五穀豊穣を意味する。八重山の雇用「弥勒節」では“弥勒世=みるくゆう・平和の世=に続けて、神の世=カンぬユウ=を被せて(平和の世界)を切望している。仏教の伝来とともに使用された言葉であることは言うまでもない。

 “燦の琉歌”。
 これをどう三線に乗せて歌おうか。
 3月4日の「ゆかる日まさる日さんしんの日」の出演者である古参の歌者松田弘一、徳原清文、神谷幸一の軽快なバチさばきで披露する。会場も一体になって手拍子、囃子が加わり賑わう。

 レギュラー番組はもちろんのことだが「第23回・ゆかる日まさる日さんしんの日」の生放送はラジコプレミアム・システムで全国で聴取することができる。その方法については、RBCiラジオのHP(ラジコ)で検索。
 沖縄中の三線が一斉に鳴ると、沖縄はティーダ燦々!はもう春である。