旬刊・上原直彦 「浮世真ん中」の内『おきなわ日々記』」アーカイブ版

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ひとり対談・ハブは恐くない!

2014-04-10 07:38:00 | ノンジャンル
 上原=この陽気になると、ハブも活動を始める。生きていかなければならないからね。

 直彦=それはそうだ。この時期は野鳥の孵卵期、子育ての季節。ハブはそれを餌にするため、地上よりは木の上を徘徊する。森林やブッシュに入るときは、その辺は心得ていた方がいいねわれわれも。

 上原=ハブには、生きていくために条件のいい場所がある。まず、野鳥や野鼠、蛙など、餌になるモノのある所をわれわれが避ければいい。ハブは人間を恐れるし、無暗には打たない。むしろ、人間が彼らのテリトリーを侵害するから、仕方なく反撃するだけ。

 直彦=自己防衛か。侵さない!殺さない!共存の原則だね。名護市二見にカラスからパパイアを守るために、ハブに協力を求めた方がいる。

 上原=どういうこと?

 直彦=照屋林一さん(62)は、屋敷近くに8本のパパイアを飢えていて、時期になると約50個の実をつける。しかし、それを待っていたようにカラスがやってきて、食い荒らすんだな。そこで照屋さんは考えた。ハブの模型を作ってパパイアの木に這わせたんだな。

 上原=ほう。ハブの案山子?

 直彦=居間の畳の縁(へり)を見ていて思い付いた。6角型の模様がハブの鱗(うろこ)に似ていると見てとった照屋さんは、体長約180㎝のハブ模型を3時間ほどで仕上げた。

 上原=カラスはハブを嫌うからね。で、どうなった?

 直彦=綿を用いて胴体にして針金で固定。針金は折り曲げやすいから、いろんなハブの体型にすることが出来る。もちろん、目鼻も描き、赤い舌をチョロチョロさせるという芸の細かさ。するとどうだ!パパイアに這わせて1ヶ月。カラス被害はないという。

 上原=作戦勝ちだね。カラスはジンブナー(利口者)で、モノの正体を認識する能力に長けているのを逆手に取ったわけだ。

 直彦=でもね・・・。普段はよく遊びにきた近所の子どもたちは、気持ち悪い!と近寄らず、人気はイマイチだそうだよ。

 上原=う~ん。それは残念。けれども、子どもたちはハブやカラスの生態を再認識しただろうし、照屋さんの遊びごころは教育的でいい。ゴルフ場や整備されていない観光地などには「ハブに注意!」のパネルがある。要するにハブのテリトリーを侵害しなければ、ハブは恐くない。

 直彦=ハブという呼称は、沖縄語と思われがちだが、立派な共通語だよね。

 上原=ハブの話になると再三再四(日本語大辞典=講談社カラー版)を持ち出しているが、それにはこうある。
*はぶ{波布}クサリヘビ科の毒ヘビの1種。全長約2m。体は黄褐色の地に鎖状の暗褐色の班紋。頭部は3角形で毒腺が発達。動きはすばやく攻撃的。奄美大島・沖縄諸島などに分布。

 直彦=(毒ヘビ。攻撃的)。これが強調され、恐れられているのだね。ひところ、本土の人に(沖縄から想像するもの)と問うと(米軍基地、泡盛、海、ハブ)の答えが返ってきた。いまはどうかな。沖縄生まれ沖縄育ちのボクでも野生のハブは2度ほどしか見たことはない。

 上原=ハブに因んだ俗語を2,3拾ってみようか。まず、
 *ハブディー=直訳すれば(ハブの手)となるが、ハブに手が足があるわけはない。特別に空手など武術を心得ているわけでなはいが、ハブディーの人に平手打ちされると、焼けるように、ハブに打たれたように痛い。筋肉質の人に多い。男女を問わないね。ドゥクディーとも言う。ハブのように(毒を持った手)というわけだ。

 直彦=ハブカクジャーもいるね。

 上原=いるいる!顔のアゴがハブのように張っている人。殊に男に多いネ。どちらかというとボクもお主もハブカクジャー面だ。

 直彦=男ののっぺりとした顔よりも多少、アゴが張っている面相の方が沖縄男性らしくていいと思うよ。まあ、顔の造作は十人十色(なあ前ぇめー)だから、丸顔、馬面、大顔小顔、いずれも味があって結構!結構。

 上原=しかり!しかり。(ハブトゥヤー)なる言葉を使うかい?

 直彦=ハブを取る人!実際のハブ捕獲名人のこともいうが、日常語では意味が異なってくる。

 上原=そうそう。ハブを手づかみするほどの向こう見ずのこと。ナマチャー(生っ気の人)ともいう。

 直彦=そのことから転じて、女と見れば人妻でもなんでも、見境なく手を出す男を指す俗語、ハブトゥヤーのガールハントは意外に成功率が高い。1に押し2に押し!3,4がなくて5に押し!その強引さ、積極さに女性は弱いのかな。

 上原=お主!ハブトゥヤーに憧れているのかい?もしかして。

 直彦=いやいやいや!とんでもないっ!オレみたいな小心者は、ハブと聞いただけで身がすくむ。まして、ハブや女性に立ち向かうなんてことは及びもつかない。

 上原=それはご同様!ご同様。今日はひとりで対談しているから、イチャイハンチャイ(言ったり外したり。自問自答)。気が合うね。

 直彦=まったくだ。馬鹿みたいに気が合う。それはともかくとして、ハブの活動期に入った。県は「ハブに注意!」と称するパンフレットを配布して被害回避を呼びかけている。この夏場も。

 上原=要するにハブの習性を知り、ハブの住処に近づかなければハブは恐くない!女性も怖くない!

 直彦=ハブと女性と同類にしてはいけないないなっ!まあ、勝手なオチがついたところで今日はここまで。

 4月中旬の催事
 *第11回 おおぎみ工芸展いぎみてぃぐま
  期日:4月11日(金)~4月13日(日)
  場所:大宜味村農村環境改善センター、大宜味村立芭蕉布会館

 *琉球海炎祭2014
  期日:4月12日(土)
  場所:宜野湾海浜公園

 *第22回 伊江島一周マラソン大会
  期日:4月12日(土)
  場所:ミースィ公園(スタート・ゴール地点)

 *第6回 コザ・てるりん祭
  期日:4月13日(日)
  場所:沖縄市中央パークアベニュー

 *第8回 船浮(ふなうき)音祭り
  期日:4月19日(土)
  場所:4月19日(土)

 *第19回 伊江島ゆり祭り
  期日:4月19日(土)~5月6日(火・振休)
  場所:伊江村リリーフィールド公園