旬刊・上原直彦 「浮世真ん中」の内『おきなわ日々記』」アーカイブ版

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蚊・ガジャン・モスキート。新種発見!

2013-03-10 00:30:00 | ノンジャンル
 ガジャンとは、蚊の沖縄名。
 体は小さいくせに人間の命を取るほどの病気を媒介する厄介な虫だ。なのにどこか憎めないところがあって、蚊帳、蚊遺の日、蚊取り線香などの備品、言葉を生み、妙に人間とは身近で付き合っている。
 蚊の声の中にいさかう夫婦かな   季由
 竹切って蚊の声遠き夕べかな    白雄
 草抜けばよるべなき蚊のさしにけり 虚子

 ※蛙の血を吸う蚊。
 2013年2月8日付け・沖縄タイムス紙にこうある。
 宮城一郎琉球大学名誉教授らがこのほど、八重山竹富町西表島大富の湿地帯で新種の蚊を発見した。カエルの血を吸うチビカ属で、全身黒色。体長は2.3ミリと小さいことが特徴。名前はまだ無い。蚊の新種が見つかったのは国内で約6年ぶり。宮城名誉教授は「蚊の新種発見はまれ」としている。
 2011年5月。宮城名誉教授ら琉球大学医学部保健学科・環境保健学教室のメンバーが採取した。4月の日本衛生動物学会で発表する。
 チビカ属はこれまで8種類が発見されている。樹液を主食とし、妊娠中の雌だけがカエルの血を吸う。人間の血を吸う蚊は、人間の息で感知するが、チビカ属はカエルの鳴き声で個体を感知するという。
 国内にいる約120種の蚊のうち、77種が沖縄の生息。大富の湿地帯からは過去にも複数の新種が見つかっている。
 宮城名誉教授は発見した湿地帯一帯について「生物の宝庫。自然も動物も保護していかなければならない」と語った。

 我々の身近には、まだまだ解明されない動物、生物の不思議があるものだ。
 ガジャンに限っていうならば、戦前、戦中、戦後もひとところまでは、ガジャンの媒介によるマラリアで多くの人が落命した。殊に沖縄戦の最中、砲火を避けて山中を逃避行した沖縄人の中には、なにしろ山中での寝食を余儀なくされるうち、山蚊・ヤマガジャンの攻撃を受けて、終戦を待たず病死した例も少なくない。筆者の父親も再三、マラリアに見舞われ、それが直接的ではないが、終戦5年目に逝った。
 マラリアは撲滅できないが、ガジャンは壮健で夏は「わが世の春」を謳歌している。夏の風物詩の主役として、殺虫剤を用いながらわれわれはガジャンと付き合っているが、風物なぞとのがガジャン。カエルにとっても迷惑に違いない。まあ、ガジャンにも生きる権利はあるにしても・・・・。

 琉歌のうち「狂歌」にいわく。
 ♪いかな終夜 鳴ちゃんていガジャン 片足ん出じゃす くとぅやならん
 〈いかなゆむしがち なちゃんていガジャン かたふぃさん んじゃす くとぅやならん
 歌意=ガジャンガジャン!お前がワシの血を求めて、いかに夜もすがら鳴きまわっても、俺さまは、蚊帳の外に片足も出すつもりはない!諦めろッ。

 蚊に刺された痕跡の赤い出来物を「ガジャンぬ喰ぇー=くぇー」という。痒くて往生するが、恋人たちの(言い訳)にも重宝される。野外での愛の交歓の情熱の証として首筋などに残る唇の痕。「あらっ?首筋の赤いのは何?」と指摘された恋女は、キスマークとも答えられず「昨夜は遅くまで夜なべ仕事をした。その時に刺されたガジャンの喰ぇーなのよ」と、ごまかした。ガジャンも思わぬところで役に立つ。

 ☆3月中旬の催事。
 
 ◇第26回 名護菊人形展
  開催日:3月1日(金)~3(日)
  場所:ネオパークオキナワ自然博物情報館 〈名護市〉

 ◇沖縄国際アジア音楽祭
  開催日:3月15日(金)~17日(日)
  場所:コザ・ミュージックタウン音市場周辺 (沖縄市)

 ◇第2回 シュガーライド久米島2013
  開催日:3月16日(土)~17日(日)(スタート・ゴール) 〈久米島〉
  場所:仲里野球場

第31回 東村つつじマラソン大会
  開催日:3月17日(日)
  場所:東村村野外運動場 〈東村〉