昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

エッセイ(155)ささやかな達成感

2013-01-31 04:03:16 | エッセイ
 先日の雪がウソのような気持ちのいい好天だ。
 ぼくは図書館から借りて枕の下に残していた本を返すため出かけた。
 昨日の優しい係りの女性はいなかったが、これで心の底に引っかかっていたもやもやは晴れた。
 これだけで家へ戻るのはもったいない。
 東八道路に出て、懸案の写真を撮りながら帰ることにした。
 
 三鷹市の南端を東西に走るこの30メートル道路には車の販売店が多い。
 トヨタ関連だけでも、東京トヨペット、レクサス、ネッツ、トヨタ中古販売と軒を並べている。他に東京日産、日産中古車販売、スズキ、ヤマハ、そしてボルボやフォルクスワーゲン、ジャガーなどの外車の販売店もある。
 それらを撮ろうというわけだ。

 天気はいいし、手袋を外して、カメラ片手にパチパチと撮りながら歩いた。
 
 図書館からウチまで約1キロ強ある。
 7割がた戻ったところで、片一方の手袋が無いことに気づく。
 牛革の手袋だがそんな高価なものではない。
 ・・・まあ、いいか・・・
 どこかで写真を撮る際に落としたのだろう。
 戻るのもしゃくなので一瞬手袋を諦める気になった。

 ・・・しかし、待てよ・・・
 こうして諦めていくつ手袋を失くしたろう。
 以前、失くした手袋の片方がバス停の雪道に埋まっていたこともあった。
 ・・・今や忙しい身でもないし、こうやって安易にあきらめる体質が問題だ。人生も残り少ない。ひとつひとつ課題を着実に解決していく決意が必要だ!・・・
 ぼくは思い直して戻ることにした。
 
 ところが、東八道路沿い、写真を撮ったと思われるところには手袋は見つからなかった。
 少し北に歩いて、人見街道に出る。
 このまま西に歩いて家に帰るのが図書館から家へ戻る順路だ。
 今度こそ手袋は諦めることにした。
 ・・・しかし、図書館の前で最初の写真を撮っている。そこを残したまま帰るのは、この決意に画竜点睛を欠くことになる・・・
 再度思い直して。さらに北へ歩いて図書館前に出た。

「あった!」
 誰かが置いてくれたのだろう、図書館前の花壇の上に手袋がぽつんと待っていた。
 

 小春日和の中、2キロばかり余分に歩いて汗ばんだが、こころよい達成感を味わった。