昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

エッセイ(154)優しき思いやりの社会

2013-01-30 06:26:24 | エッセイ
 図書館で本を借りようとして、貸出カードをカードリーダーにかけたら、返したはずの本が残っている。
 
 おまけに新たに借りる本の冊数がエラーになって処理できない。
 他のカードリーダーでも、他の人が処理できないとクレームをつけている。
 今までになかったことだ。

 最新の機械もこんな故障が生じるんだ。
 返したはずの本の処理も、たぶん機械の不具合に起因するんだ。
 ぼくは係りの女性にクレームをつけた。
「2,3日前に他の本と一緒にまとめて返却したんですけど・・・」
 係りの女性はていねいに貸し出しカードを機械にかけてチェックし、その本が書棚に戻っていないかどうかも調べてくれた。

「戻っていませんね。取りあえず消しておきますが、もしお手元に残っているようでしたらご返却ください」
 その女性はとても優しく対応してくれた。

 もし、彼女がふくれっつらで、「そちらのうっかりじゃないんですか?」って返してきたら「そっちだって、他の書棚にうっかり入れ間違えることだってあるだろうし、機械だってエラー動作するかもしれないし・・・」て言ってやろうと思っていたが、借りるべき本の処理も即座に対応してくれて、とても優しい態度に感銘さえ受けて家にもどった。

 ところが、念のため、枕の下を探ってみると(ぼくは読むべき本を数冊、いつも枕の下に置いて、寝る前に読むのを習慣にしている)なんとその本があるではないか!
 そのとき痴ほう症に罹っていたおふくろのことを思いだした。
 しょっちゅう預金通帳を失くし、セーフティボックスの鍵まで失くして、銀行に再発行してもらったことを。
 (おふくろは、それらを失くしたのではなくて、変な所に隠して、隠し場所を忘れてしまうのだが・・・)
 係りの女性は、「再発行いたしますが、もしお手元に見つかりましたらご連絡下さい。早めにご連絡いただければ再発行費用はかかりませんから」と優しく言ってくれたのを思い出した。

 ついにぼくもおふくろの域にまで達したか・・・。