昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説「ある倉庫係の死」(1)

2018-12-25 05:30:50 | ある倉庫係
 ・・・この辺りもこれからは急速に変わるな・・・
 
 国道の向こう側の地上げされた更地には、重機が何台も入っている。
 この辺りを仕切っているS不動産が高層ビルを建てるらしい。

 突然背後から、ボーっとしてんじゃないよ、というように電話が鳴り響いた。
 ・・・こんな時間に何事だ・・・
 受話器を取りながら腕時計を眺めた。
 9時を十分過ぎている。

 1月8日月曜日、新年早々の初出勤の日だ。         
「部長! 石山がまだ来てないんですが。連絡もないんです!」
 裏通りの倉庫ビルに常駐している飯島業務課長からだ。

 先任の倉庫係が高齢を理由に退職したので、人手不足の折から、もう誰でもいいやという感じで面接した石山は、髪の毛は伸びほうだいだが縮れ毛のために丸まっていて、痩せた身体つきから枯れたネギ坊主に見える30歳の独身男だった。
 
 優しそうな顔つきだが、言い換えれば生気のない、体力的にも機械工具・機器販売会社の倉庫係としては頼りない。
 採用責任者としては不採用にすべき第一印象だった。
 しかし、尻に火がついていた飯島業務課長の「おとなしそうで、真面目そうじゃないですか・・・」というひと言で敢えて採用することにした。

 ─続く─

 フィギュアスケート男子のレジェンドとして復帰した高橋大輔は、日本選手権で宇野昌磨に続いて見事2位となった。
 
 ところがこれからもフィギュアは続けていくつもりだが、世界選手権出場は辞退するという。
 身をわきまえた冷静で立派な決断だと思った。
  




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