昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

なるほど!と思う日々(373)アルメニア、世界第三次戦争の導火線に火を点ける?

2016-04-14 09:25:10 | なるほどと思う日々
 引き続き、「混迷する国際社会」をテーマにしたい。
 
 中東・イスラム地域研究が専門の山内昌之氏は中東の小さな火種が第三次世界大戦に結びつきかねないと懸念している。
 
 その一つに、東欧の小国アルメニアとアゼルバイジャンとの間で起きているナゴルノカラバフ紛争がある。
       
 このバックにはロシアとトルコが絡んでいる。

 この紛争の主役「アルメニア」とはいかなる国か?
 紀元前1世紀には国際的な商業活動により大アルメニア帝国を築いている。
 しかし、その後ローマ帝国やペルシャ帝国などに翻弄され、19世紀後半にはトルコに虐殺され、多くのアルメニア人は欧米やロシアに移住した。
 
 ロシア革命以降はソ連に組み込まれ、ソ連崩壊とともにアルメニア共和国として自立している。
 どちらかというとユダヤ人のイスラエルに似た歴史を持っている。
 厳しい環境の下にサルキス・ソガナリアンのような有名な「死の商人」も生み出した。
 

 旅行記として世界的に有名な、イギリスの作家コリン・サブロンの「ロシア民族旅行記」からアルメニア人の素顔を見てみよう。

 冷たくて味気ないソ連の大都市圏の画一性に食傷した後では、エレヴァン(アルメニアの首都)は大いにぼくの気分を高揚させてくれる街だった。
 
 街全体がこの地方特産のバラ色の火山岩を素材に造られている。およそ60年前の極度の貧困時代には、子供たちは道で残飯をあさって飢えをしのいだという。その街も今では見違えるほど復興し、不思議な感興をそそる広場や大通りをそなえ、・・・。だが、この街をこの街たらしめているのは、街の至る所の壁に用いられているピンクや黒の、石灰岩や、玄武岩といった石の材質そのものなのだ。川の流域の底に淀みわたる空気のなかで、壁は光を反射することなく、ことごとく吸収してしまう。それらの壁は火山から沸き出したままの姿で、まるで内臓をさらけ出したようにギラギラと血の輝きを放ちながら街のそこここに立っている。
 かつて憐みの目で見られたこの街も、今では電子工業、工作機械、精密機器など、工業技術の中心地だ。人知の底しれぬ可能性への確信をみなぎらせる街。離散して住みついた外国の地ではどことなく柔和に見えるアルメニア人も、ここでは、ちょうどイスラムのユダヤ人たちのように、民族的特質を失ってしまうか、あるいは逆にそれを過剰に誇示するという両極に分かれてしまう。舗道を埋め尽くす人々は、ロシア人に比べると身体つきが大人びているだけでなく、どことなく、肉感的な雰囲気をみなぎらせている。彼らの表情は変化にとみ、弾けるようで、美しく、あらゆるものを濃厚に表出する──それは山賊の顔であり、コンサート・ピアニストの顔であり、億万長者の顔だ。──女性の中には小鳥のように繊細な骨格の人もいる──
いったん火が点けば、たちまち悲劇的なまでに青白い焔をあげて燃え上がるだろう。

 
 老人自身、飲んでいた酒をまずやめ、やがて煙草もやめた。スターリン時代に蔓延した健康中毒のひとりといってよかった。毎朝起きぬけに、頭から凍るような冷水をかぶり、腕立て伏せと駆け足足踏みのあと、社会主義に対する見えざる敵をシャドウボクシングで打倒し、それを仕上げにするのだった。・・・そんな父親たちの、国策的な体力増強運動に沿った「労働と防衛」への献身ぶりの、向き合う相手は実はアメリカではなくトルコなのだ、1921年に踏み潰されたアルメニアの二年半の独立時代に話が及ぶと、老人の顔は木のように強ばった。
「ロシアが来なければ、きっとトルコが来ただろう」
 
  
 大国、強国に挟まれた小国の鬱積した悲哀。そこから悪夢が再現する。
 アジアにも似たようなケースは起こり得る。
 




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