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太平洋戦争の宣戦が布告された日、当時中学生だったK氏は子どもながらに高揚感を覚えたという。
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この日の興奮と歓喜は知識人の文章にも表されている。
「真剣になれることはいい気持ちだ。・・・くるものなら来いという気持ちだ。自分の実力を見せるという気持ちだ」(武者小路実篤)
「神々が東亜の空へ進軍していく姿がまざまざと頭のなかに浮かんできた。・・・私はラジオの前で涙ぐんで、しばらく動くこともできなかった」(火野葦平)
「世界は一新せられた。時代はたった今大きく区切られた。昨日は遠い昔のようである。・・・私は不覚にも落涙した」(高村光太郎)
「日本も、けさから、ちがう日本になったのだ。・・・目色、毛色が違うということが、之程まで敵愾心を起させるものか。無茶苦茶にぶん殴りたい」(太宰 治)
戦後<堕落論>で軍国日本を冷徹に斬ってみせた坂口安吾も、「東条首相の謹話があった。涙が流れた。言葉のいらない時代が来た。必要ならば、僕の命を捧げねばならぬ。一兵たりともわが国土に入れてはならぬ」と興奮を抑えきれなかった。
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そして大陸からの撤退しなければ、石油を止められるという経済的に死活の状況に追い込まれ、敢えて不毛な戦いに見境もなく突入することになった。
結局、ミッドウエイ海戦、ガダルカナルの攻防を機に敗戦へと追い込まれていった。
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ヒットラーという国民を統合するカリスマを得て、当初はあっという間にフランスを始めとする周辺諸国を屈服させ、イギリスやソ連をも圧倒する勢いだった。
ドイツにとって不幸だったのは、巨大な資源と軍事力を持ったアメリカの参戦だった。
結局日本もドイツも巨大な軍事力に敗れたのである。
戦い合えば力の強い方が勝つのは当たり前である。
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所詮、勝者による裁判であり、例えばハーグ条約では戦争手段は無差別、無制限であってはならないとされているが、ドレスデンや東京の大空襲や広島、長崎の原爆投下などの無差別殺戮は断罪されることはなかった。
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勝てば花輪、負ければ吊るし首なのだ。
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「過去に眼を閉ざす者は未来に対してもやはり盲目となる」
・・・ドイツのヴァイツゼッカー大統領
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「一億総懺悔」
・・・日本の東久邇総理大臣
ドイツはユダヤ人虐殺という、戦争遂行とは別の人道的罪に問われていたこともあり、その政権に携わっていた者は厳しく糾弾され教育的にもこれからの戒めとされた。
ところが日本の場合<一億総懺悔>に見るように、責任者がぼかされている。
実際に、政府なり軍なりの指導者の具体的な戦略の下でこの戦争が遂行されたというより、例えば関東軍の末端組織の暴走から事は生じ、上部が追認したという構図が見られる。
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杉田参謀が惨憺たるインパール作戦の現状を視察し、作戦軍を撤退させるべきという意見を電報で具申した。
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彼が帰国し、作戦室に足を踏み入れるや、激昂した瀬島(龍三)は、「この馬鹿野郎! なんちゅうことを言うんだ」と罵声を張り上げるや否や、矢立を投げつけるんだ。・・・
おとなしい人格者の杉田さんは(権力を持っていた瀬島に)言葉を返すことはなかった。
・・・インパール作戦は戦況極めて不利だったが、作戦要務令に書いてあった「戦略不利なる時は敵も同じと思え」というのを瀬島はそのまま言ったのだ。
(三根屋久大<陸軍の本質>より)
・・・ちなみに司馬遼太郎曰く「東条英機という人は成規類聚(陸軍の社規社則)の権威でしてね。それを盾にして人びとの違反を追及して権力を握っていった人ですな、あれが一番こまります」と。
では、日独を裁いたアメリカに正義はあるかといえば、インディアンに対する虐殺やハワイ王国侵略、フィリピンに対する虐殺行為などの違法行為は勝利を収めた事実に覆い隠されているのが現実だ。
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帰り際に、K元大使が同伴された奥さまを見ながら、「これからは女性の時代だよ」とおっしゃったのが心に留まった。
<力>が全てと思っている男には治まらない時代になったのか。
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