昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(49)よかった、この本に会えて!

2012-02-19 06:38:51 | 三鷹通信
 <よかった、この本に会えて!>
 現役編集者が主宰する新しいスタイルの読書会に参加した。
 
「あなたが長年、愛読してきた本。面白いのはこれ!」と自信を持って人にお勧めできる、そういう本を1~2冊お持ちください」という編集者の声掛けに、定員一杯の15人が、三鷹の太宰治記念館の近くの会場に集まり開催された。
 三鷹の顔なじみの方々に加えて、遠方からも脚本家を目指す広告会社員、カウンセラー、編集プロダクションの代表、IT事業経営者、電子書籍編集者など多彩な顔ぶれで、現役ベストセラー作家の方も特別参加された。

 オーバルテーブルを囲んで、期待に満ちた雰囲気が漂う中、主宰する編集者からこの新しい読書会についての説明から始まった。
 テーブルの上にはあらかじめ皆さんから通知のあった7冊の本が積まれていた。
 この二週間の間に編集者が集めたものだ。中には絶版のものもあるので、インターネット古書販売から得たものもあるという。
 それぞれの本に多数の付箋が挟まっている。編集者がこれらすべてをこの二週間で読破したことを示している。

 参加者の簡単な自己紹介の後、事前に通知された本についてその紹介者が説明する。
 冒頭に取り上げられたのは、ダニエル・タメット「ぼくには数字が風景に見える」だった。
 
 ここでぼくは、早々に衝撃を受ける。
 ダスティ・ホフマン主演の映画「レインマン」で世に知られることになったサヴァン症候群で、さらにアスベルガー症候群にも罹っている青年が語る感動の手記だ。

 幼いころてんかんを患い、<人と違う>ため同級生にいじめられ、孤独と辛い思いをしながらも、特別な才能に目覚めていく過程を淡々と綴っている。
 特殊な才能とは、本のタイトルにもあるように、数字が風景に見える。たとえば誕生日の水曜日は数字の9や諍いの声とおなじようにいつも青い色をしている。どんな計算も視覚化できるので、紙に書かないで簡単に暗算できる。円周率は」22,500桁まで暗唱できる。

 サヴァン症候群の人たちが得意とすることの多い音楽、美術、数字などは、右脳のはたらきがものをいう領域である。いっぽう、かれらの多くは左脳に障害を持つ。この障害を補うべく脳が発達した結果、右脳の眠れる力が目を覚ますという仮説が、いまのところ有力らしい。

 精神科医の方がこの本の最後で述べている。
 自分が好きなものに夢中になることの素晴らしさ、大好きな数学や言葉について語る著者の無邪気さ、純粋さは、わたしたちが大人になるうちに忘れてしまった何かを、もう一度思い起こさせてくれる。その一方で難しい障害を抱えながらも一歩一歩自立の道を歩んでいくタメット少年の成長ぶりに目を見張り、とくに、障害についての知識を持たずに、育てにくい子どもを立派に成人させた両親の存在は、この時代の多くの親たちに希望を与えるのではなかろうか。 
 
 とくにぼくがこの本に関心を持ったのは、実はぼくにもルビンシュタイン・テイビ症候群という重度の障害を持つ孫がいるからだ。
 タメットくんのように特別な才能を見せているわけでもないので、両親の彼女に対する思いはより深刻だと思う。
 しかし愛情をもって、必死に育てている姿を見ると、何とかできないものかと祖父として心が乱れる。
 そこで、気持ちだけでもと、彼女が変身することを夢見て、いま「レロレロ姫}というファンタジーを綴っている。