菜の花座11月公演タイトルは『蒼い森の館』、珍しく捻りなしの直球勝負だな。
※フリーイラストお借りしました。
台本締め切りは月末、いよいよラストシーンに差し掛かってるから、なんとか予告通りに稽古が始められるだろう。まるまる1カ月、溜まりにたまる積読の壁に囲まれながら、ひたすら、書き続けて来た、ってほど集中してたわけじゃないけどな。
薪割りもあるし、秋野菜の種蒔き苗植え、イノシシ対策ってのもあったし。
台本完成を前にして、今さらながら躊躇ってる。
あまりに重いテーマをエンタメ風に仕上げていいのか?って悩みだ。
敗戦直後の満州、ソ連軍の急襲を前に、一人の女性をいけにえに選んだ開拓団の話しだ。集団の女たちを守るため一人ソ連兵の性の相手を強いられた女性は、帰国後も村の中で厭われ避けられ続けた。
実にやり切れない、辛い話題だ。
いろんな問題が詰まってる、戦争と性暴力、男の横暴さ、弱者を犠牲にすることを厭わない村社会の卑劣さ、一度押された負の烙印が独り歩きするいやらしさ、部外者に対する差別意識・・・、うーん、考えるだけで、辛い。
なのに、選んでしまった。この事実、テレビのドキュメンタリーでも取り上げられた、を知ってしまってからずっと、いつかは面と向かわねばと思って来た。
で、書き始めてはみたが、俺が書いてもいいものなのか?男が書けるものなのか?事実の重さに匹敵する言葉を提示できるのか?こんなやり切れない事件を舞台で取り上げてもいいのか?しかも、軽さが売りの菜の花座で?ずっとためらいは引きずったままだ。
掲げたテーマはしっかりと届けつつ、芝居の楽しさも同時に味わってもらうなんて可能なんだろうか。
舞台は日本の山村に移した。村はずれの深い森に孤立して建つ館、そこに住まう旧華族の娘たちが、進駐軍上級将校相手の性奴隷として、村人たちの標的にされ、いけにえとして差し出されたことにした。
ただし、話は、開発バブル華やかな35年後を中心に展開する。森の奥の古い洋館、それに目を付けパワースポットとしてリゾート開発を目論む不動産会社、抵抗するかつて犠牲を強いられた女たち。
物語を複雑に多様にすることで、事実のあまりの重さを軽減することを狙った。幽霊なども登場し、コミカルなシーンも付け加えた。
面白くなった、たしかに。が、
いいのかこれで?犠牲になった女たちの悲痛な体験を軽くあしらうことになってしまったんじゃないのか?
様々なテーマにも触れた、が、ただ上っ面をさらりとなぞっただけになってはいないか?
いくらかでも明るい希望を提示して終わる菜の花座のいつもの展開でいいのか?軽すぎないか?
悩みはずっとそばに寄り添ったままだ。最期の自死に至る少女の思いを書き連ねつつ、きっと、稽古を通し、終演に至るまで、この鬱屈は続くことだろう。
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