ハウスのビニール外し、暖かいうちに終わらせちまわないと。季節風にビニール煽られ、てんやわんやなんてご勘弁!だぜ。できればポカポカと日差しも注いぎ、風もなく穏やか、そんな日を選びたい。天気予報見ながら、お日柄良き日を狙う。リタイヤして時間持て余すようになったからこそできる余裕の作業日程だな。
現役時代はそうは行かなかった。できる日っていったら、日曜祝日しかないだろ、うまい具合に晴天に恵まれりゃ、やったぜ!幸せぇ、だが、まぁ、そんな幸運はめったに巡り合えない。寒風吹きすさぶ中、かじかむ手でマイカー線を外し、強風に煽られて竜のごとく気ままに舞うビニールを必死で抑え込む。半日かがりの大騒動だった。その苦闘の辛さが身に染みてるから、今でも、この不安に脅かされている。
焦るこたぁない。いくらだって日にちはあるんだ。しっかり天気の移り変わりを見極めて決行?の日を決めりゃいいんだ。早朝、風が凪いでる時間帯に、なんてことも気にする必要はない。昼間だって、風がおさまる時間帯なら十分だ。すでに裾回りのビニールは外してあるてのも気楽に臨める要因だ。
よしっ、秋の好日、さっさとビニール外しちまおうぜ。
マイカー線を掘り起こし、結束を解く。これが一番の厄介ごとだ。結び目、草に覆われ、土に埋もれてるからな。指先が思いのままに動く暖かさが大切なんだ。跪き上半身を屈めて1本、1本外して行く。苛立ち禁物、根気が何より!両側ともすべて外すと、ほらほら、ビニールが舞い上がり始めたぜ。おとなしくしろ!ってんだ。前面、後面の押さえのパッカーを外せば一気にビニールはずり落ちる、のはずが、あらら、高いフレームに引っかかっちまった。えい、面倒なり、と引っ張ったら、あぁあ、穴開いちまったぜ。
いいの、いいの、もう3年使ったし、今年でお役目ご苦労さんなんだ。少しくら傷んだって気にしない。横の農道に長々と広げる。こんな長閑な作業風景も風が弱いからこそできる。もう屋根用として使うことはないので、鋏で3等分。これならたたむのも楽々だ。リタイヤのビニールだって簡単に廃棄したりしない。旧鶏舎の周囲を覆ったり、脱穀終えたイネ束の山をくるんだり、堆肥やボカシを雨から守ったり、使い道はいくらだってあるのさ。
ほとんどストレスフリーで、作業を終えられた。わずかに2時間程度。悪戦苦闘してたなんて、信じられんよ。
迫りくる冬に追われることもない。寒さの中で我慢することもない。じっくり適期を見定め青空の下で仕事ができる。定年後農業のゆとり、これだぜ。
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