古今和歌六帖 第五帖 後半部
服飾
歌番3132 わかかたみ みつつしのはせ あらたまの としのをなかく あれもおもはむ
歌番3133 むすひおきし かたみのこたに なかりせは なににしのふの くさをつままし
歌番3134 ゆきのうへの あとをかたみと たのめとも かつかつきえて とむるかたなし
歌番3135 いまはとて かへすことのは ひろひおきて わかものからや かたみとおもはむ
歌番3136 あふまての かたみとてこそ ととめけめ なみたにうかふ みくつなりけり
歌番3137 あふまての かたみもわれは なにせむに みてもこころの なくさまなくに
歌番3138 かきりなき きみかかたみと をるはなは ときしもわかぬ ものにそありける
歌番3139 さくらはな いろはひとしき えたなれと かたみにみれは なくさまなくに
歌番3140 みぬひとの かたみかてらは をらさりき みになすらふる いろにしあらねは
歌番3141 わすれかひ ひろひしもせし しらたまを こふるをたにも かたみとおもはむ
歌番3142 うめかかを そてにこきいれて とめたらは はるはすくとも かたみならまし
歌番3143 うきことを をりをりことに しのふれは つらきもひとの かたみなりけり
歌番3144 いろにより ぬくにはあらす からころも なれにしつまの かたみなりけり
歌番3145 いとまたき すきぬるあきの かたみには えたにもみちそ ちりさしにける
歌番3146 たまほこの みちのやまかせ さむからは かたみかてらに きかむとそおもふ
歌番3147 わかおもひを ひとしるらめや たまくしけ ひらきあけつつ ゆめにしみゆる
歌番3148 たまくしけ おほふをやすみ あけていなは きみなはあれと わかなしをしも
歌番3149 みつのえの うらしまのこか たまくしけ あけさらませは いもにあひなまし
歌番3150 にほひありと ひとにしらるな うくひすの こころみえぬる はなのくしけそ
歌番3151 みつのえの かたみとおもへと うくひすの はなのくしけは あけてたにみす
歌番3152 しらたまの たちわかれにし よひよりは たまのくしけの あけくれはこふ
歌番3153 あきつはの そてふるいもを たまくしけ おくにおもふを みたまへわかきみ
歌番3154 たまくしけ あけはきみかな たちぬへみ ねてわかこしを ひとみけむかも
歌番3155 わかれても けふよりのちは たまくしけ あけくれみえす かたみなりけり
歌番3156 たまくしけ あけかたにある あきのよの こころひとつを さためかねつる
歌番3157 きみにとし おもひかくれは うくひすの はなのくしけも をしまさりけり
歌番3158 うちはへて くるをみるとも たまかつら てにたにとらむ むすひしらねは
歌番3159 へてもみし なかきこころを たまかつら つらなからにし たえむとおもへは
歌番3160 たひをへて かけにみゆるは たまかつら かつらなからに たゆるなりけり
歌番3161 ますらをの ふしゐなけきて つくりたる したもやなきの かつらせわきもこ
歌番3162 わかはかの わさたのほたち つくりたる かつらそわかせ しのはせわかせ
歌番3163 わきもこか はかとつくれる あきのたの はつほのかつら みれとあかぬかも
歌番3164 うはたまの いもかくろかみ こよひもや わかなきとこに なひきいつらむ
歌番3165 ありつつも きみをはまたむ うちなひき わかくろかみに しもはおきまよひ
歌番3166 うはたまの くろかみしきて なかきよを たまくらのうへに いもまつらむか
歌番3167 のちつひに きみをはまたむ うちなひき わかくろかみに ゆきはふるとも
歌番3168 おほよそは たれかみむかも うはたまの わかくろかみを なひきてをらむ
歌番3169 ねくたれの かみけつるよも あはされは こひしきものを けふはくらしつ
歌番3170 くろかみの しろくなりゆく みにしあれは まつはつゆきを あはれとそみる
歌番3171 いてていなは いもこひむかも しきたへの くろかみしきて なかきこのよを
歌番3172 うはたまの わかくろかみを ひきぬらし おもひてひさに けふわたるかも
歌番3173 あさなあさな けつれはいとと みたれつつ わかくろかみの とけぬこころを
歌番3174 たけはぬれ たかねはなかし いもかかみ このころみぬに かきりつらむか
歌番3175 あさねかみ われはけつらし うつくしき ひとのたまくら ふれてしものを
歌番3176 なけきつつ ますらをかけを こふれこそ わかもとゆひの つきてぬれけれ
歌番3177 きみこすは ねやへもいらし こむらさき わかもとゆひに しもはおくとも
歌番3178 きみこすは なそみのかさり はこにある つけのをくしも とらむとおもはす
歌番3179 をとめこか たまくしけなる たまくしの いふかしいまも いもにあはされは
歌番3180 あしのやの なたのしほやき いとまなみ つけのをくしも ささすきにけり
歌番3181 わきもこか くしにあらなむ ひたりての おくてにまきて わかゆはましを
歌番3182 あさつくひ むかふつけくし なるれとも なにそもきみか いやめつらしき
歌番3183 なにはかた なににもあらす みをつくし ふかきこころの しるしはかりそ
歌番3184 ひとひには とへなみしきに おもへとも なそそのてには たままきかたき
歌番3185 つつめとも そてにたまらぬ しらたまは ひとをみぬめの なみたなりけり
歌番3186 ひとことの しけきこのころ たまならは てにまきもちて こひさらましを
歌番3187 ぬしやたれ とへとしらたま しらなくに さらはなへてや あはれとおもはむ
歌番3188 かたいともて わかぬくたまの ををよわみ みたれてこひむ ひとなとかめそ
歌番3189 あしのねの ねむころおもひて むすひこし たまのをといはは ひととらむやは
歌番3190 いもかため われたまひろふ おきへなる しらたまゐてこ おきつしらなみ
歌番3191 しらたまを つつむそてのみ なかるるは はるはなみたの さえぬなりけり
歌番3192 ぬきとむる ひとこそあるらし しらたまの まなくもちるか そてのせはきに
歌番3193 きみとわれ うたかふなかに あらはこそ そていたつらに たまもひろはめ
歌番3194 くものいとを かたいとによりて しらたまの をにしたりとも われたえめやは
歌番3195 まろふたま あふかたつひに あるものを うちはへこひは なとかとそおもふ
歌番3196 わたつうみの てにまきもたる たまゆゑに いそのをくりを かつきつるかな
歌番3197 わたつみの もてるしらたま みまくほり ちたひそのりし かつきするあま
歌番3198 くさまくら たひにもいもは ゐたれとも はこのうちなる たまとこそおもへ
歌番3199 いそのうへに つまきをりたき いもかため わかかつきこし おきつしらたま
歌番3200 たまのをの あひたもおかす みまほしみ わかおもふいもは いへとほくして
歌番3201 たまのをの たえたるこひの みたるれは はなさくのみそ またもあはすして
歌番3202 たまのをを いかてなしけむ なつひきの いとにしあらねは よらしとそおもふ
歌番3203 たまのをの たえてみたれむ こころもて うらふれわたる つきのふるまて
歌番3204 たまのをの たえてみたれむ こころもて うらふれわたる つきのふるまて
歌番3205 あふことは たまのをはかり なのたつは よしののかはの たきつせのこと
歌番3206 たまのをの たえてみしかき なつのよの よはになるまて まつひとのこぬ
歌番3207 しぬるいのち いきもやすると こころみに たまのをはかり あひみてしかな
歌番3208 たまのをを あはをによりて むすへらは ありてののちも あはさらめやは
歌番3209 たまのをの しまこころにや としつきの ゆきかはるまて いもにあはさらむ
歌番3210 かたいとを こなたかなたに よりかけて あはすはなにを たまのをにせむ
歌番3211 いきのをに おもへはくるし たまのをの たえてみたるな しらはしるとも
歌番3212 たまのをの くくりよりつつ すゑつひに ゆきはわかれし おなしをにあらむ
歌番3213 あはれてふ ことををにして ぬくたまは あはてしのふる なみたなりけり
歌番3214 こひしけく まさりていまは たまのをの たえてみたれて しぬへくおもほゆ
歌番3215 したにのみ おもへはくるし たまのをの たえてみたれむ ひとなとかめそ
歌番3216 おもはすは おもはすとやは いひはてぬ なそよのなかの たまたすきなる
歌番3217 おもはすは われしたからむ たまたすき うたてかけたる わかこころかな
歌番3218 たまたすき かけねはくるし かけたれは あなわつらはし ひとのこころや
歌番3219 おもひあまり いともすへなみ たまたすき くもゐるやまに われしめむすふ
歌番3220 ますかかみ たえにしいもを あひみねは わかこひやます としはふれとも
歌番3221 ますかかみ ときしこころを ゆるふれは のちにゆふとも しるしあらめや
歌番3222 ますかかみ てにとりもちて あさなあさな みむときさへや こひのしけけむ
歌番3223 かけみれは むかしににすそ おいにける おもふこころは ふりぬものから
歌番3224 かくはかり こひしくあらすは ますかかみ ねぬひとよなく あらましものを
歌番3225 みをわくる ことのかたさに ますかかみ かけはかりをそ きみにそへつる
歌番3226 ふたこやま ともにこえねは ますかかみ そこなるかけを たつねてそやる
歌番3227 はなのいろを うつしととめよ ますかかみ はるよりのちの かけやみゆると
歌番3228 さととほみ こひわひにけり ますかかみ おもかけさらす ゆめにこそみめ
歌番3229 かはとたに かかみにみゆる ものならは わするるほとも あらましものを
歌番3230 わかこひを ひとしるらめや しきたへの まくらのみこそ しらはしるらめ
歌番3231 まくらより またしるひとも なきこひを なみたせきあへす もらしつるかな
歌番3232 しきたへの まくらよりくる なみたにそ うきねをしつる こひのしけきに
歌番3233 いかはかり おもふいもをか しきたへの まくらかたさり ゆめにみえつる
歌番3234 ゆふされは まくらさためむ かたもなし いかにねしよか ゆめにみえけむ
歌番3235 たまぬしに たまはさつけて かつかつも まくらとわれは いさふたりねむ
歌番3236 いもをこひ わかなくなみた しきたへの まくらとほりて そてさへぬれぬ
歌番3237 みちのくの くりこまやまの ほほのきの まくらはあれと きみかたまくら
歌番3238 しきたへの まくらうこきて いねられす ものおもふこよひ はやあけむかも
歌番3239 ひとりぬる こころはいまも わすれすと つけのまくらは きみにしらせよ
歌番3240 ひとこひて ぬるはるのよは しきたへの まくらねさめに なかれいてぬへし
歌番3241 ひとりねの とこにたまれる なみたには いしのまくらも うきぬへらなり
歌番3242 まくらとて くさひきむすふ こともせし あきのよとたに たのまれなくに
歌番3243 きりきりす まちよろこへる あきのよの ぬるしるしなき まくらとわれは
歌番3244 たひにして あたねするよの こひしくは わかいへのかたに まくらせよきみ
歌番3245 くれなゐの やしほのころも なるるまて いかてたまくら まかむとそおもふ
歌番3246 しるしなき こひをするかな ゆふされは ひとのたまくら まかむこゆゑに
歌番3247 いまさらに きみかたまくら まきねめや わかしたひもの とけつつもとな
歌番3248 おもはしき ひとのまきてし しきたへの わかたまくらを まくひとあらめや
歌番3249 せきなくは かへりにたにも うちゆきて きみかたまくら まきてねましを
歌番3250 わきもこか こさりしよひの うちわひて わかたまくらを われそしてねし
歌番3251 ゆひしひも とくひをとほみ しきたへの わかたまくらに こけおひにけり
歌番3252 かくはかり こひむものそと おもはねは いもかたまくら まかぬよもありき
歌番3253 あしたまも てたまもゆらに おるはたは きみかころもに たたむとそおもふ
歌番3254 さほひめの おりかけさらす うすはたの かすみたちきる はるののへかな
歌番3255 みつひきの しらいとはへて おるはたは たひのころもに たちやかさねむ
歌番3256 あきかせの ふきたたよはす しらくもは たなはたつめの あまころもかも
歌番3257 たなはたの いほはたたてて おるぬのの あきゆくころも たれかとりみむ
歌番3258 たてぬきに みをはうむとも あさはたの おりてはきみに あはしとそおもふ
歌番3259 いくちはた おれはかあきの やまことに かせにみたるる にしきなるらむ
歌番3260 しつはたに おもふこころそ みたれぬる ひとをつらしと うらみきぬれは
歌番3261 くれなゐの こそめのころも したにきて うへにとりきは しるからむかも
歌番3262 いまつくる またらころもの おもつきに われにおもほゆ いまたきねとも
歌番3263 ころもしも おほくあらなむ とりかへて きれはやきみか おもひわすれる
歌番3264 たちはなの しまにしをれは かはとほみ さらさてぬひし わかしたころも
歌番3265 からあゐの やしほのころも あさなあさな なるとはきけと まつめつらしみ
歌番3266 ひくらしに なくともあやな からころも そてこそひちめ こひはさめしを
歌番3267 ふるころも すてつるひとは あきかせの ふきたつときに ものおもふものを
歌番3268 つくはねの にひくはまゆの きぬはあれと きみかみけしし あやにきましを
歌番3269 あきかせの さむきひころは したにきて いもかかたみと かつはしのはせ
歌番3270 いとはやも なきぬるかりか ふるころも あらためきせむ いももあらなくに
歌番3271 さよなかの ねさめねさめに おきゐつつ かへすころもの うらふれにけり
歌番3272 いとせめて こひしきときは うはたまの よるのころもを かへしてそきる
歌番3273 なくさむと たれかいひけむ からころも かへすにこひの まさりけるみを
歌番3274 いつはりの なみたなりせは からころも しのひにそては しほらさらまし
歌番3275 しきしまの やまとにはあらぬ からころも ころもへすして あふよしもかな
歌番3276 うれしさを なににつつまむ からころも たもとゆたかに たてといはましを
歌番3277 しろたへの ころものそてを うちかへし ひとりさねけむ しるしあらはや
歌番3278 よひよひに ぬきてわかぬる からころも かけておもはぬ ときのまもなし
歌番3279 しろたへの そてのかたはし みるからに かかるこひをも われはするかな
歌番3280 たまもかる あまとはなしに きみこふる わかころもては かわくよもなし
歌番3281 あはなくに ゆふけをとふと ぬさにより わかころもては たまそつらつき
歌番3282 みやひとの すれるころもに ゆふたすき かけてこころを たれによすらむ
歌番3283 つるはみの きぬよるひとは ことなしと いひしときより きまほしみおもふ
歌番3284 つるはみの あはせのきぬの うらにゐは われこひめやは きみたちまさぬ
歌番3285 いせのあまの しほやきころも をさをあらみ まとほにあれや いまたきなれす
歌番3286 しかのあまの しほやきころも なれゆけと こひてふものは わすれかねつも
歌番3287 いせのあまの しほやきころも なれてこそ ひとのこひしき こともしらるれ
歌番3288 なれゆけは うけめよるよる すまのあまの しほたれころも まとほなるらむ
歌番3289 いせのうみ しほやくあまの ふちころも なるとはみれと あかぬきみかな
歌番3290 いせのあまの しほやききぬの なれなはか ひとひもきみを わすれておもはむ
歌番3291 なつくさの つゆわけころも きもせぬに わかころもての かわくときなき
歌番3292 なつころも うすきこころと きくからに ことのはさへや もりむとそおもふ
歌番3293 なつころも うすきなからそ たのまるる ひとへなるしも みにちかけれは
歌番3294 なつころも しはしなたちそ ほとときす なくともいまた きこえさりけり
歌番3295 わかために うすきこころの たたれせは なつのころもに たたましものを
歌番3296 わきもこか ころものすそを ふきかへし うらめつらしき あきのはつかせ
歌番3297 あきかせを さむみにはあらす かへしきて こひなくさめむ ころもかせきみ
歌番3298 あきのよの つきのかけこそ このまより おとはころもと みにうつりぬれ
歌番3299 なみのあやを いたくなかせの おりよせそ ころもにたたむ わかつまもなし
歌番3300 わきもこか ころもなりせは あきかせの さむきこのころ したにきましを
歌番3301 かせさむみ わかからころも うつときそ はきのしたはも うつろひにける
歌番3302 たかために うつとかはきく おほそらに ころもかりかね なきわたるなり
歌番3303 からころも うつこゑきけは つききよみ またみぬひとを そらにこそきけ
歌番3304 くさまくら ゆふかせさむく なりぬるを ころもうつなり やとやからまし
歌番3305 かりなきて ふくかせさむみ からころも きみまちかてら うたぬひそなき
歌番3306 ふくかせに ちらすもあらなむ うめのはな わかかりころも ひとよやとさむ
歌番3307 おいさみを ひとなとかめそ かりころも けふはかりとそ たつもなくなる
歌番3308 かりころも こころのうちに ほさなくに なとかみたれて ものおもひをする
歌番3309 かすかのの わかむらさきの すりころも しのふのみたれ かきりしられす
歌番3310 すりころも きるとゆめみつ うつつには いつれのひとの ことかしけけむ
歌番3311 すみよしの とほさとをのの まはきもて すれるころもの さかりすきゆく
歌番3312 みちのくの しのふもちすり たれゆゑに みたれそめにし われならなくに
歌番3313 あさりする あまをとめこか そてなれや ぬれにしころも ほせとかわかす
歌番3314 かにかくに ひとはいふとも おりつかむ わかはたものの しろあさころも
歌番3315 ことしゆく にひしまもりの あさころも かたのまよひを たれかとりみむ
歌番3316 あさころも きれはなつかし きのくにの いもせのやまに をまけわきもこ
歌番3317 とこしへに なつふゆゆけや かはころも あふきはなたす やまにすむひと
歌番3318 きみにより あまのぬれきぬ われきたり おもひにほせと ひるよしもなし
歌番3319 なほきたれ あまのぬれきぬ われほさむ よそふるひとの にくからなくに
歌番3320 にくからぬ ひとのきすなる ぬれきぬは いとひかたくも おもほゆるかな
歌番3321 とひしをる ひともなきみの ぬれきぬは あめのしたにそ ふりてきせける
歌番3322 ぬれきぬと ひとにいはすな きくのつゆ よはひのふとそ わかそほちつる
歌番3323 よそにても にくからすたに あらはこそ しほるしほるも ぬれきぬをきめ
歌番3324 よとともに わかぬれきぬと なるものは わふるなみたの きするなるへし
歌番3325 みやこいてて けふみかのはら いつみかは かはかせさむみ ころもかせやま
歌番3326 いまさらに こふともきみに あはむかも ころもかへすよ ゆめにみえつつ
歌番3327 しろたへの いもかころもに うめのはな かにもいろにも わきそかねつる
歌番3328 そらにとふ あまのはころも もえてしかな うきよのなかに かくものこさし
歌番3329 うめのはな かをふきつくる はるかせに ころもをそめは ひとやとかめむ
歌番3330 あつふすま なこやかしたに ねたれとも いもとしねねは はたへさむしも
歌番3331 にはにたつ あさてこふすま こよひたに つまよしこせぬ あさちこふすま
歌番3332 きへひとの またらふすまに わたせはた いりなましもの いもかをささに
歌番3333 たちておもひ ゐてもそおもふ くれなゐの あかもたれひき いにしすかたを
歌番3334 やまふきの にほへるいもか はねいろの あかもかすかた ゆめにみえつつ
歌番3335 ひとめもる きみかまにまに われともに はやくおきゐて ものすそぬらす
歌番3336 はしきやし あはぬこゆゑに いたつらに このかはのせに ものすそぬらす
歌番3337 いかならむ ひのときにかも わきもこか もひきのすかた あさあけにみむ
歌番3338 なにせむに へたのみるめを おもひけむ おきつたまもを かつくみにして
歌番3339 おもふとも こふともあはむ ものなれや ゆふてもたゆく とくるしたひも
歌番3340 ささらかた にしきのひもを ときそけて あまたはねすみ たたひとよのみ
歌番3341 しらひもを ゆふされかけて ときつれは きみかみそぬふ ひとのしまみゆ
歌番3342 よそにして こふれはくるし いれひもの おなしこころに いさむすひてむ
歌番3343 うはたまの よるのしたひも とけてねよ わかたましひは ゆめにてもこむ
歌番3344 おくやまの しけいりにたちて まとふとも いもをむすひし ひもをとかめや
歌番3345 したひもは とけてやつけぬ たまほこの しをりもしらぬ そらにわふれは
歌番3346 なそひとの かれはつれなき したひもの とけはゆはむと いひてしものを
歌番3347 かきほなす ひとはいへとも こまにしき ひもときあくる きみもあらなくに
歌番3348 こひしとは さらにもいはし したひもの とけむをひとは それとしらなむ
歌番3349 したひもの しるしとするも とけなくに かたるかことは こひすそあるへき
歌番3350 くさまくら むすふとしけむ よひよひは とけさりきやは したのいれひも
歌番3351 わかきぬの ひもとけわたる まゆねかく なれにしきみは こふとしらすも
歌番3352 めつらしき ひとをみむとや しかもせぬ わかしたひもの とけつつあらむ
歌番3353 わきもこか ゆひてしひもを とかめやは たえはたゆとや たたにあふまて
歌番3354 おもへとも ゆめにもみえぬ わきもこそ こよひみえつる ひともきまたむ
歌番3355 けふたいかか まさにおよはむ つくはねの むかしのひとの きけむそのひも
歌番3356 やまさとに ひとめみしより わかこふる はなのしたひも いかにとくらむ
歌番3357 あけたては まつさすひもの いとよわみ たえてあはすは なそいけるかひ
歌番3358 ちきりけむ ことやはたかふ したおひの めくりてあへる つまやなになり
歌番3359 したおひの みちはかたかた わかるとも ゆきめくりても あはむとそおもふ
歌番3360 あつまちの みちのはてなる ひたちおひの かことはかりも あひみてしかな
歌番3361 いにしへの しつはたおひを むすひたれ たれといふとも きみにはまさし
歌番3362 みつかきの ひさしきよより こひられは わかおひゆへあふ あさにひことに
歌番3363 たきものの かはかりおもふ このころの ひとりはいかて きみにしらせむ
歌番3364 たきものの このしたけふり ふすふとも われひとりをは しなすましやは
歌番3365 このしたに ひとりやわひし たきものの それもおもひに たへてとかきく
歌番3366 わかためは ねふたきものを ひとりしも おきあかさしと おもほゆるかな
歌番3367 つゆはかり たのめおかなむ ことのはに しはしもとまる いのちありやと
歌番3368 きえはてて みよりもまさる ことのはを なみたならては なににかはせむ
歌番3369 たのめこし ことのはいまは かへしてむ わかみふるれは おきところなし
歌番3370 あきこそは もみちもちらめ たつたやま はるとてもなと ことのはのなき
歌番3371 ちきりおきし ことのはかはる うきよには ふみもこころも やかてこそふれ
歌番3372 よのなかに たえていつはり なかりせは たのみぬへくも みゆるたまつさ
歌番3373 たまつさも もてこぬものを あきかせの ふきくることに ひとそこひしき
歌番3374 うちよする なみやけつらむ はまちとり ふみこしあとの うらみれとなき
歌番3375 ひとしれぬ みちとおもはすは たまつさな うちたくひつつ ゆくへきものを
歌番3376 やれはをし やらねはひとに みえぬへし なくなくもなほ かへすまされり
歌番3377 やれといはむ わかうしろみも おもほえす こころともれて たたにけならむ
歌番3378 はなちらす えたやあるとて うくひすの ふみみてかくに つゆそおきける
歌番3379 かひなしと おもひなけちそ みつくきの あとそちとせの かたみともなる
歌番3380 たまつさの あるかなきかに ゆくみつの たえせぬきみを あひみてしかな
歌番3381 わすられむ ときしのへとそ はまちとり ゆくへもしらぬ あとをととむる
歌番3382 みつくきの かよふはかりを すくせにて きくもなからに はてねとやきく
歌番3383 あらをたを うちかへすとも はまちとり なほふみつけて あとはととめよ
歌番3384 はるかすみ たちなからみし はななれと ふみとめてける あとそうれしき
歌番3385 きみかため いはふこころの ふかけれは ひしりのみよの あとならへとそ
歌番3386 をしへたく ことたかはすは ゆくすゑの みちとほくとも あとはまとはし
歌番3387 やまのをの かつらはたえて なけれとも こゑはのこせり きくひとのため
歌番3388 ひさにふる たまのをことの ことならは いとかくはかり われこひむかも
歌番3389 あきかせに かきなすことの こゑにさへ はかなくひとの こひしかるらむ
歌番3390 やまとこと ひとにありせは いかはかり ことなつかしき ことちきかまし
歌番3391 たれそこの こゑなつかしき やまとこと ねさめわひしき ひとのきかくに
歌番3392 ことのねを ききしるひとの ありけれは いまそたちいてて ををもすくへき
歌番3393 あしひきの やましたみつは ゆきかへり ことのねさへに なかるへらなり
歌番3394 むつのをの よりめことにそ かはにほふ ひくをとめこか そてやふれつる
歌番3395 みやこまて ひひきかよへる からことは なみのをよりて かせそひきける
歌番3396 なみのおとの けさからことに きこゆるは はるのしらへや あらたまるらむ
歌番3397 ことのねに みねのまつかせ かよふなり いつれのをより しらへそめけむ
歌番3398 こととれは なけきさきたつ けたしくも ことのしたひに いもやかくれる
歌番3399 ひくことの ねのうちつけに つきかけを あきのゆきかと おとろかれつつ
歌番3401 あつまこと はるのしらへを かりしかは かへしものとは おもはさりけり
歌番3402 かへしても あかぬこころを そへつれは つねよりこゑの まさるなるらむ
歌番3403 まつのおとを ことにしらふる まつかせは たきのいとをや すけてひくらむ
歌番3404 いかならむ ひのときにかも こゑしらむ ひとのひさのうへ わかまくらせよ
歌番3405 こととはぬ よにもありとも わかせこか たなれのみこと つちにおちめやも
歌番3406 からたけの こちくのこゑも きかせなむ あなうれしとも おもひしるへく
歌番3407 ふえたけの ххххねこそ かなしけれ ひとふしにして よのみすくれは
歌番3408 ひとりふし いとかくたけの ねなれとも こちくのこゑは きかしとそおもふ
歌番3409 いへはえに ふかくかなしき ふえたけの よこゑやたれと とふひともかな
歌番3410 こまふえの こまにわれのり なくさなむ みきともいはし あなにくけとも
歌番3411 ふえたけの ひとよむなしき こゑにたに よそにふけとも おもはさりしを
歌番3412 ふえたけの いけのつつみは とほくとも こちくてふなを わすれさらなむ
歌番3413 かつらきの こつひこまゆみ あらきにも よらめやきみか わかなつけかね
歌番3414 あつさゆみ ひきののつつら すゑつひに わかおもふひとに ことのしけけむ
歌番3415 あつさゆみ いそへのこまつ たかよにか よろつよかねて たねをまきけむ
歌番3416 あつさゆみ ひきみゆるめみ こすはこす こはこそをなと よそにこそみめ
歌番3417 あつさゆみ ひけはもとすゑ わかかたに よるこそまされ こひしきことは
歌番3418 あつさゆみ はるかなれとも わすられて きみおもひつるの たえむものかは
歌番3419 あつさゆみ はるのやまへに いるときは かさしにのみそ はなはちりける
歌番3420 あつさゆみ すゑのたつきは しらねとも こころはきみに よりにしものを
歌番3421 あつさゆみ ひきはりもちて ゆるさすと わかおもふいもは しるやしらすや
歌番3422 あつさゆみ つるとりはけて ひくひとは のちのこころを しるひとそひく
歌番3423 あつさゆみ ゆつかまきかへ なかみさし さらにひくとも きみかまにまに
歌番3424 てもふれて つきひへにける しらまゆみ おきふしよるは ものをこそおもへ
歌番3425 かくこひむ ものとしりせは あつさゆみ すゑのなかころ あひみてましを
歌番3426 あまのはら ふりさけみれは しらまゆみ はりてつけたる よるみちよにも
歌番3427 おくやまに たつひとつきの しらまゆみ まろやわりなく ひとをうらむる
歌番3428 みこもかる しなののまゆみ わかひかは うまひとさらひて いなといはむかも
歌番3429 みちのくの あたちのまゆみ たむれとも こころこはさは やますさりける
歌番3430 ますらをの ゆすゑふりたて いつるやを のちみむひとを かたりつくかに
歌番3431 つるきたち なのをしけくも われはなし きみにあらすて としのへぬれは
歌番3432 つるきたち みるとりそふる ますらをそ こひのみたれの もとにはありける
歌番3433 うちなけき はなをそひつる つるきたち みにそふいもか おもひくらしも
歌番3434 つるきたち みになそそふる ますらをや こひてふものは しのひかねつも
歌番3435 つるきたち もろはのうへに ゆきふれて しにかもしなむ こひつつあらすは
歌番3436 つるきたち みにとりそふと いめにみつ いかなるけそも きみにあはむため
歌番3437 たちのしり たまくらたゐに いつまてか いもをこひつつ いへこひをらむ
歌番3438 あふことの かたなさしたる ななつこの さやかにひとの こひらるるかな
歌番3439 ひとことに しけしやきみに ふたさやの いつをへたてて こひしかるらむ
歌番3440 ななつこの さやのくちくち つとひつつ われをかたなに さしてゆくなり
歌番3441 かけつれは ちちのこかねも かすしりぬ なそわかこひの あふはかりなき
歌番3442 いまこむと いひしはかりに かけられて ひとのつらさの かすはしりにき
歌番3443 くれはかり われをななめに たのめつつ さよちかきみか かけてはかるか
歌番3444 わかつめる いたつらいねの かすならは あふはかりなし なににかかけまし
歌番3445 なにしおはは たのみぬへきを なそもかく あふきゆゆしと なつけそめけむ
歌番3446 よのひとの いみけるものを わかために なしといはぬは たれかうきなり
歌番3447 ふなてする きみにたむくと ふくかせは なれてとしへし あふきなりけり
歌番3448 そへてやる あふきのかせし こころあらは おもはむひとの てをなはなれそ
歌番3449 ゆゆしとて いむともいまは かひあらし よのつきことは これにつけても
歌番3450 いまはとて こきつるふねの さはりなみ あふきのかせは へにもかけなむ
歌番3451 あふけとも つきせぬかせは きみかため わかこころさす あふきなりけり
歌番3452 あまのかは あふきのかせに きりはれて そらすみわたる かささきのはし
歌番3453 かはほりに わかはりこむる すすしさを おもふかかたの かせそいとふな
歌番3454 ひさかたの あまてるつきを あみにして わかおほきみは かさにつくれり
歌番3455 ひさかたの あめにはぬれす ふるかこと おつるなみたは さすかさそなき
歌番3456 かきつはた ささぬのすけほ かさにぬひ きむひをまつに としそへにける
歌番3457 おしてるや なにはすかかさ おきふるし のちはたかきむ かさならなくに
歌番3458 わきもこか かさのかりての わすみのに われはいりぬと いもにつけこせ
歌番3459 かさとりの やまをたのみし かひもなく しくれにそてを ぬらしてそゆく
歌番3460 ちるまては きてもみるへく はるさめに われをぬらすな うめのはなかさ
歌番3461 かさなしと ひとにはいひて あまつつみ とまりしきみか すかたおもほゆ
歌番3462 わきもこか たもとをたのみ まののうらの こすけのかさを きてそきにける
歌番3463 きみかきる みかさのやまに ゐるくもの たえてはつかる こひもするかな
歌番3464 わかせこか つかひをまつと かさもきて いてつつそみし あめのふらくに
歌番3465 ひとかたの あめふるひひを わかことに みのかさもきて くるひとやたれ
歌番3466 はなかたみ めならふひとの あまたあれは わすられぬらむ かすならぬみは
歌番3467 きみをまた うつつにみぬや あふことの かたみにもりぬ みつはありとも
歌番3468 あかてこそ おもはむなかは わかれなめ そをたにのちの わすれかたみに
歌番3469 いせのうみの おきつしらなみ たまにもか つつみていもか いへつとにせむ
歌番3470 みてのみや ひとにかたらむ さくらはな てことにをりて いへつとにせむ
歌番3471 たまつしま みれともあかす いかにして つつみもたらむ みぬひとのため
歌番3472 うちかはに おふるすかもを かははやみ とらすきにけり つとにせましを
歌番3473 あしひきの やまゆきしかは やまひとの われによしめし やまつとそこれ
歌番3474 をみなへし あきのはきをれ たまほこの みちゆきつとと こはむこのため
歌番3475 ふくかせの わかたもとにし つつまれは おもふひとには つとにしてまし
色
歌番3476 あはれとも うしともおもふ いろなれや おつるなみたに そてのしむらむ
歌番3477 いろみえて うつろふものは よのなかの ひとのこころの はなにそありける
歌番3478 そめはこそ いろともみえめ すみそめの おほつかなくも たつわかなかな
歌番3479 としふれと いろもかはらぬ きみをしも いかなるいろに おもひそめけむ
歌番3480 よのなかの ひとのこころは はなそめの うつろひやすき ものにそありける
歌番3481 いろなしと ひとやみるらむ むかしより ふかきこころに そめてしものを
歌番3482 おほつかな なにのいろとは しらねとも たたふかくのみ おもひそめけむ
歌番3483 たかまきし くれなゐなれか みわやまを ひたくれなゐに にほはせるらむ
歌番3484 かくらくの とませのやまを すそへらと とよすめかみの まきしくれなゐ
歌番3485 くれなゐの やしほのころも かくしあらは おもひそめすそ あるへかりける
歌番3486 かくはかり こひしわたらは くれなゐの すゑつむはなの いろにいてぬへし
歌番3487 たつたかは いろくれなゐに なりにけり やまのもみちも いまはちるらし
歌番3488 いかにして こひをかくさむ くれなゐの やしほのころも まくりてにして
歌番3489 くれなゐの はつはなそめの いろころも おもひしこころ われはわすれす
歌番3490 くれなゐの はなにしあらは ころもてに そめつきもちて ゆくへきものを
歌番3491 しろたへの わかころもてに くれなゐの しみなむこころ うつろはむやは
歌番3492 くれなゐに そめしころもの たのまれす ひとをあくにし かへるとおもへは
歌番3493 ひとしれす おもへはくるし くれなゐの すゑつむはなの いろにいてなむ
歌番3494 よそにのみ みつつをこひむ くれなゐの すゑつむはなの いろにいてすとも
歌番3495 おもふにも いまはあまりぬ くれなゐの いろにいてなむ ひとののるへく
歌番3496 くれなゐに そてそむあきは すきにしを はるさへなにの いろまさるらむ
歌番3497 くれなゐに そめてしころも あめふりて にほひはすとも うつろはむやも
歌番3498 くれなゐの いろにはいてし かくれぬの したにかよひて こひはしぬとも
歌番3499 あきののは からくれなゐに なりにけり いくしほしくれ ふりてそめけむ
歌番3500 むらさきの ひともとゆゑに むさしのの くさはなへても なつかしきかな
歌番3501 むらさきの いろこきときは めもはるに のなるくさきも あはれなりけり
歌番3502 むらさきの ねはふよしのの はるののは きみをこひつつ うくひすそなく
歌番3503 からひとの ころもそむてふ むらさきの こころにしみて おもほゆるかも
歌番3504 こむらさき ほすひはくれぬ いつくにか たまやとからむ さとはしにして
歌番3505 おもふとも したにやあはむ むらさきの ねすりのころも いろにいつなゆめ
歌番3506 つくまのに おふるむらさき きぬにすり またもきなくに いろにいつらむ
歌番3507 しらねとも むさしのといへは かこたれぬ よしやそこそは むらさきのゆゑ
歌番3508 おもふとも こふともいはし くちなしの いろにころもを そめてこそきめ
歌番3509 やまふきの はないろころも ぬしやたれ とへとこたへす くちなしにして
歌番3510 くちなしの いろにこころを そめしより いはてこころに ものをこそおもへ
歌番3511 ときはなる まつのみとりも はるくれは いまひとしほの いろまさりけり
歌番3512 したもみち ありけるものを まつのはの うへはみとりを たのみけるかな
歌番3513 うみにのみ ひちたるまつの ふかみとり いくしほとかは しるへかるらむ
歌番3514 あさみとり のへのかすみは つつめとも こほれてにほふ はなさくらかな
錦綾
歌番3515 おもふとち まとゐせるよは からにしき たたまくをしき ものにさりける
歌番3516 しものたて つゆのぬきこそ もろからし やまのにしきの おれはかつちる
歌番3517 なそさらに あきかととはむ からにしき たつたのやまの もみちしるきを
歌番3518 なほさりに あきののやまを わけゆけは にしきをきぬに きぬひとそなき
歌番3519 かみなひの みむろのやまを わけゆけは にしきたちきる ここちこそすれ
歌番3520 たちよりて みるへきひとの あれはこそ あきのはやしに にしきしるらめ
歌番3521 もみちはを をしきにしきと みしかとも しくれとともに ふりててそこし
歌番3522 あきかせの うちふくからに のもやまも なへてにしきに おりかへすかな
歌番3523 もみちはを わけつつゆけは にしききて いへへかへると ひとやみるらむ
歌番3524 このもとに おらぬにしきの とまれるは くものはやしの にしきなりけり
歌番3525 からにしき ひもときあけて ゆふへとも しらぬいのちに こひつつやあらむ
歌番3526 あきかせに ちるもみちはは をみなへし やとにおりきる にしきなりけり
歌番3527 たつたかは もみちはおちて なかるなり わたらはにしき なかやたえなむ
歌番3528 もみちはの ふりしくあきの やまへこそ たちてくやしき にしきなりけれ
歌番3529 もみちはの なかるるあきは かはことに にしきあらふと ひとやみるらむ
歌番3530 かきほなる ひとといへとも からにしき ひもときあくる ひともなきかな
歌番3531 なつひきの てひきのいとを くりかへし ことしけくとも たえむとおもふな
歌番3532 かたいとの これかれよそに よられつつ あひなむのちは なにかたゆへき
歌番3533 かふちめの てそめのいとを くりかへし いとにありとも たえむとおもふな
歌番3534 たしまいとの よれともあはぬ おもひをは なにのたたりに つけてはらへむ
歌番3535 かくはかり やめにかくてふ たしまいとの まゆめかきては うれしかりけり
歌番3536 みたれいとの われにはとけす ありしかと たつねてよらむと おもふこころあり
歌番3537 しらぬひの つきしのわたは みにつきて またはきねとも あたたかにみゆ
歌番3538 たまかはに さらすてつくり さらさらに むかしのいもか こひしきやなと
歌番3539 みちのくの けふのさぬのの ほとせはみ またむねあはぬ こひもするかな
歌番3540 たちぬはぬ きぬきるひとも なきものを なにやまひめの ぬのさらすらむ
歌番3541 たかために かけてさらせる ぬのなれや よをへてみれと きるひともなき
歌番3542 ぬしならて さらせるぬのを たなはたに わかこころとや けふはかさまし
歌番3543 しらかはに さらすぬのにも あらなくに なそわかこひの ここちかなしき
服飾
歌番3132 わかかたみ みつつしのはせ あらたまの としのをなかく あれもおもはむ
歌番3133 むすひおきし かたみのこたに なかりせは なににしのふの くさをつままし
歌番3134 ゆきのうへの あとをかたみと たのめとも かつかつきえて とむるかたなし
歌番3135 いまはとて かへすことのは ひろひおきて わかものからや かたみとおもはむ
歌番3136 あふまての かたみとてこそ ととめけめ なみたにうかふ みくつなりけり
歌番3137 あふまての かたみもわれは なにせむに みてもこころの なくさまなくに
歌番3138 かきりなき きみかかたみと をるはなは ときしもわかぬ ものにそありける
歌番3139 さくらはな いろはひとしき えたなれと かたみにみれは なくさまなくに
歌番3140 みぬひとの かたみかてらは をらさりき みになすらふる いろにしあらねは
歌番3141 わすれかひ ひろひしもせし しらたまを こふるをたにも かたみとおもはむ
歌番3142 うめかかを そてにこきいれて とめたらは はるはすくとも かたみならまし
歌番3143 うきことを をりをりことに しのふれは つらきもひとの かたみなりけり
歌番3144 いろにより ぬくにはあらす からころも なれにしつまの かたみなりけり
歌番3145 いとまたき すきぬるあきの かたみには えたにもみちそ ちりさしにける
歌番3146 たまほこの みちのやまかせ さむからは かたみかてらに きかむとそおもふ
歌番3147 わかおもひを ひとしるらめや たまくしけ ひらきあけつつ ゆめにしみゆる
歌番3148 たまくしけ おほふをやすみ あけていなは きみなはあれと わかなしをしも
歌番3149 みつのえの うらしまのこか たまくしけ あけさらませは いもにあひなまし
歌番3150 にほひありと ひとにしらるな うくひすの こころみえぬる はなのくしけそ
歌番3151 みつのえの かたみとおもへと うくひすの はなのくしけは あけてたにみす
歌番3152 しらたまの たちわかれにし よひよりは たまのくしけの あけくれはこふ
歌番3153 あきつはの そてふるいもを たまくしけ おくにおもふを みたまへわかきみ
歌番3154 たまくしけ あけはきみかな たちぬへみ ねてわかこしを ひとみけむかも
歌番3155 わかれても けふよりのちは たまくしけ あけくれみえす かたみなりけり
歌番3156 たまくしけ あけかたにある あきのよの こころひとつを さためかねつる
歌番3157 きみにとし おもひかくれは うくひすの はなのくしけも をしまさりけり
歌番3158 うちはへて くるをみるとも たまかつら てにたにとらむ むすひしらねは
歌番3159 へてもみし なかきこころを たまかつら つらなからにし たえむとおもへは
歌番3160 たひをへて かけにみゆるは たまかつら かつらなからに たゆるなりけり
歌番3161 ますらをの ふしゐなけきて つくりたる したもやなきの かつらせわきもこ
歌番3162 わかはかの わさたのほたち つくりたる かつらそわかせ しのはせわかせ
歌番3163 わきもこか はかとつくれる あきのたの はつほのかつら みれとあかぬかも
歌番3164 うはたまの いもかくろかみ こよひもや わかなきとこに なひきいつらむ
歌番3165 ありつつも きみをはまたむ うちなひき わかくろかみに しもはおきまよひ
歌番3166 うはたまの くろかみしきて なかきよを たまくらのうへに いもまつらむか
歌番3167 のちつひに きみをはまたむ うちなひき わかくろかみに ゆきはふるとも
歌番3168 おほよそは たれかみむかも うはたまの わかくろかみを なひきてをらむ
歌番3169 ねくたれの かみけつるよも あはされは こひしきものを けふはくらしつ
歌番3170 くろかみの しろくなりゆく みにしあれは まつはつゆきを あはれとそみる
歌番3171 いてていなは いもこひむかも しきたへの くろかみしきて なかきこのよを
歌番3172 うはたまの わかくろかみを ひきぬらし おもひてひさに けふわたるかも
歌番3173 あさなあさな けつれはいとと みたれつつ わかくろかみの とけぬこころを
歌番3174 たけはぬれ たかねはなかし いもかかみ このころみぬに かきりつらむか
歌番3175 あさねかみ われはけつらし うつくしき ひとのたまくら ふれてしものを
歌番3176 なけきつつ ますらをかけを こふれこそ わかもとゆひの つきてぬれけれ
歌番3177 きみこすは ねやへもいらし こむらさき わかもとゆひに しもはおくとも
歌番3178 きみこすは なそみのかさり はこにある つけのをくしも とらむとおもはす
歌番3179 をとめこか たまくしけなる たまくしの いふかしいまも いもにあはされは
歌番3180 あしのやの なたのしほやき いとまなみ つけのをくしも ささすきにけり
歌番3181 わきもこか くしにあらなむ ひたりての おくてにまきて わかゆはましを
歌番3182 あさつくひ むかふつけくし なるれとも なにそもきみか いやめつらしき
歌番3183 なにはかた なににもあらす みをつくし ふかきこころの しるしはかりそ
歌番3184 ひとひには とへなみしきに おもへとも なそそのてには たままきかたき
歌番3185 つつめとも そてにたまらぬ しらたまは ひとをみぬめの なみたなりけり
歌番3186 ひとことの しけきこのころ たまならは てにまきもちて こひさらましを
歌番3187 ぬしやたれ とへとしらたま しらなくに さらはなへてや あはれとおもはむ
歌番3188 かたいともて わかぬくたまの ををよわみ みたれてこひむ ひとなとかめそ
歌番3189 あしのねの ねむころおもひて むすひこし たまのをといはは ひととらむやは
歌番3190 いもかため われたまひろふ おきへなる しらたまゐてこ おきつしらなみ
歌番3191 しらたまを つつむそてのみ なかるるは はるはなみたの さえぬなりけり
歌番3192 ぬきとむる ひとこそあるらし しらたまの まなくもちるか そてのせはきに
歌番3193 きみとわれ うたかふなかに あらはこそ そていたつらに たまもひろはめ
歌番3194 くものいとを かたいとによりて しらたまの をにしたりとも われたえめやは
歌番3195 まろふたま あふかたつひに あるものを うちはへこひは なとかとそおもふ
歌番3196 わたつうみの てにまきもたる たまゆゑに いそのをくりを かつきつるかな
歌番3197 わたつみの もてるしらたま みまくほり ちたひそのりし かつきするあま
歌番3198 くさまくら たひにもいもは ゐたれとも はこのうちなる たまとこそおもへ
歌番3199 いそのうへに つまきをりたき いもかため わかかつきこし おきつしらたま
歌番3200 たまのをの あひたもおかす みまほしみ わかおもふいもは いへとほくして
歌番3201 たまのをの たえたるこひの みたるれは はなさくのみそ またもあはすして
歌番3202 たまのをを いかてなしけむ なつひきの いとにしあらねは よらしとそおもふ
歌番3203 たまのをの たえてみたれむ こころもて うらふれわたる つきのふるまて
歌番3204 たまのをの たえてみたれむ こころもて うらふれわたる つきのふるまて
歌番3205 あふことは たまのをはかり なのたつは よしののかはの たきつせのこと
歌番3206 たまのをの たえてみしかき なつのよの よはになるまて まつひとのこぬ
歌番3207 しぬるいのち いきもやすると こころみに たまのをはかり あひみてしかな
歌番3208 たまのをを あはをによりて むすへらは ありてののちも あはさらめやは
歌番3209 たまのをの しまこころにや としつきの ゆきかはるまて いもにあはさらむ
歌番3210 かたいとを こなたかなたに よりかけて あはすはなにを たまのをにせむ
歌番3211 いきのをに おもへはくるし たまのをの たえてみたるな しらはしるとも
歌番3212 たまのをの くくりよりつつ すゑつひに ゆきはわかれし おなしをにあらむ
歌番3213 あはれてふ ことををにして ぬくたまは あはてしのふる なみたなりけり
歌番3214 こひしけく まさりていまは たまのをの たえてみたれて しぬへくおもほゆ
歌番3215 したにのみ おもへはくるし たまのをの たえてみたれむ ひとなとかめそ
歌番3216 おもはすは おもはすとやは いひはてぬ なそよのなかの たまたすきなる
歌番3217 おもはすは われしたからむ たまたすき うたてかけたる わかこころかな
歌番3218 たまたすき かけねはくるし かけたれは あなわつらはし ひとのこころや
歌番3219 おもひあまり いともすへなみ たまたすき くもゐるやまに われしめむすふ
歌番3220 ますかかみ たえにしいもを あひみねは わかこひやます としはふれとも
歌番3221 ますかかみ ときしこころを ゆるふれは のちにゆふとも しるしあらめや
歌番3222 ますかかみ てにとりもちて あさなあさな みむときさへや こひのしけけむ
歌番3223 かけみれは むかしににすそ おいにける おもふこころは ふりぬものから
歌番3224 かくはかり こひしくあらすは ますかかみ ねぬひとよなく あらましものを
歌番3225 みをわくる ことのかたさに ますかかみ かけはかりをそ きみにそへつる
歌番3226 ふたこやま ともにこえねは ますかかみ そこなるかけを たつねてそやる
歌番3227 はなのいろを うつしととめよ ますかかみ はるよりのちの かけやみゆると
歌番3228 さととほみ こひわひにけり ますかかみ おもかけさらす ゆめにこそみめ
歌番3229 かはとたに かかみにみゆる ものならは わするるほとも あらましものを
歌番3230 わかこひを ひとしるらめや しきたへの まくらのみこそ しらはしるらめ
歌番3231 まくらより またしるひとも なきこひを なみたせきあへす もらしつるかな
歌番3232 しきたへの まくらよりくる なみたにそ うきねをしつる こひのしけきに
歌番3233 いかはかり おもふいもをか しきたへの まくらかたさり ゆめにみえつる
歌番3234 ゆふされは まくらさためむ かたもなし いかにねしよか ゆめにみえけむ
歌番3235 たまぬしに たまはさつけて かつかつも まくらとわれは いさふたりねむ
歌番3236 いもをこひ わかなくなみた しきたへの まくらとほりて そてさへぬれぬ
歌番3237 みちのくの くりこまやまの ほほのきの まくらはあれと きみかたまくら
歌番3238 しきたへの まくらうこきて いねられす ものおもふこよひ はやあけむかも
歌番3239 ひとりぬる こころはいまも わすれすと つけのまくらは きみにしらせよ
歌番3240 ひとこひて ぬるはるのよは しきたへの まくらねさめに なかれいてぬへし
歌番3241 ひとりねの とこにたまれる なみたには いしのまくらも うきぬへらなり
歌番3242 まくらとて くさひきむすふ こともせし あきのよとたに たのまれなくに
歌番3243 きりきりす まちよろこへる あきのよの ぬるしるしなき まくらとわれは
歌番3244 たひにして あたねするよの こひしくは わかいへのかたに まくらせよきみ
歌番3245 くれなゐの やしほのころも なるるまて いかてたまくら まかむとそおもふ
歌番3246 しるしなき こひをするかな ゆふされは ひとのたまくら まかむこゆゑに
歌番3247 いまさらに きみかたまくら まきねめや わかしたひもの とけつつもとな
歌番3248 おもはしき ひとのまきてし しきたへの わかたまくらを まくひとあらめや
歌番3249 せきなくは かへりにたにも うちゆきて きみかたまくら まきてねましを
歌番3250 わきもこか こさりしよひの うちわひて わかたまくらを われそしてねし
歌番3251 ゆひしひも とくひをとほみ しきたへの わかたまくらに こけおひにけり
歌番3252 かくはかり こひむものそと おもはねは いもかたまくら まかぬよもありき
歌番3253 あしたまも てたまもゆらに おるはたは きみかころもに たたむとそおもふ
歌番3254 さほひめの おりかけさらす うすはたの かすみたちきる はるののへかな
歌番3255 みつひきの しらいとはへて おるはたは たひのころもに たちやかさねむ
歌番3256 あきかせの ふきたたよはす しらくもは たなはたつめの あまころもかも
歌番3257 たなはたの いほはたたてて おるぬのの あきゆくころも たれかとりみむ
歌番3258 たてぬきに みをはうむとも あさはたの おりてはきみに あはしとそおもふ
歌番3259 いくちはた おれはかあきの やまことに かせにみたるる にしきなるらむ
歌番3260 しつはたに おもふこころそ みたれぬる ひとをつらしと うらみきぬれは
歌番3261 くれなゐの こそめのころも したにきて うへにとりきは しるからむかも
歌番3262 いまつくる またらころもの おもつきに われにおもほゆ いまたきねとも
歌番3263 ころもしも おほくあらなむ とりかへて きれはやきみか おもひわすれる
歌番3264 たちはなの しまにしをれは かはとほみ さらさてぬひし わかしたころも
歌番3265 からあゐの やしほのころも あさなあさな なるとはきけと まつめつらしみ
歌番3266 ひくらしに なくともあやな からころも そてこそひちめ こひはさめしを
歌番3267 ふるころも すてつるひとは あきかせの ふきたつときに ものおもふものを
歌番3268 つくはねの にひくはまゆの きぬはあれと きみかみけしし あやにきましを
歌番3269 あきかせの さむきひころは したにきて いもかかたみと かつはしのはせ
歌番3270 いとはやも なきぬるかりか ふるころも あらためきせむ いももあらなくに
歌番3271 さよなかの ねさめねさめに おきゐつつ かへすころもの うらふれにけり
歌番3272 いとせめて こひしきときは うはたまの よるのころもを かへしてそきる
歌番3273 なくさむと たれかいひけむ からころも かへすにこひの まさりけるみを
歌番3274 いつはりの なみたなりせは からころも しのひにそては しほらさらまし
歌番3275 しきしまの やまとにはあらぬ からころも ころもへすして あふよしもかな
歌番3276 うれしさを なににつつまむ からころも たもとゆたかに たてといはましを
歌番3277 しろたへの ころものそてを うちかへし ひとりさねけむ しるしあらはや
歌番3278 よひよひに ぬきてわかぬる からころも かけておもはぬ ときのまもなし
歌番3279 しろたへの そてのかたはし みるからに かかるこひをも われはするかな
歌番3280 たまもかる あまとはなしに きみこふる わかころもては かわくよもなし
歌番3281 あはなくに ゆふけをとふと ぬさにより わかころもては たまそつらつき
歌番3282 みやひとの すれるころもに ゆふたすき かけてこころを たれによすらむ
歌番3283 つるはみの きぬよるひとは ことなしと いひしときより きまほしみおもふ
歌番3284 つるはみの あはせのきぬの うらにゐは われこひめやは きみたちまさぬ
歌番3285 いせのあまの しほやきころも をさをあらみ まとほにあれや いまたきなれす
歌番3286 しかのあまの しほやきころも なれゆけと こひてふものは わすれかねつも
歌番3287 いせのあまの しほやきころも なれてこそ ひとのこひしき こともしらるれ
歌番3288 なれゆけは うけめよるよる すまのあまの しほたれころも まとほなるらむ
歌番3289 いせのうみ しほやくあまの ふちころも なるとはみれと あかぬきみかな
歌番3290 いせのあまの しほやききぬの なれなはか ひとひもきみを わすれておもはむ
歌番3291 なつくさの つゆわけころも きもせぬに わかころもての かわくときなき
歌番3292 なつころも うすきこころと きくからに ことのはさへや もりむとそおもふ
歌番3293 なつころも うすきなからそ たのまるる ひとへなるしも みにちかけれは
歌番3294 なつころも しはしなたちそ ほとときす なくともいまた きこえさりけり
歌番3295 わかために うすきこころの たたれせは なつのころもに たたましものを
歌番3296 わきもこか ころものすそを ふきかへし うらめつらしき あきのはつかせ
歌番3297 あきかせを さむみにはあらす かへしきて こひなくさめむ ころもかせきみ
歌番3298 あきのよの つきのかけこそ このまより おとはころもと みにうつりぬれ
歌番3299 なみのあやを いたくなかせの おりよせそ ころもにたたむ わかつまもなし
歌番3300 わきもこか ころもなりせは あきかせの さむきこのころ したにきましを
歌番3301 かせさむみ わかからころも うつときそ はきのしたはも うつろひにける
歌番3302 たかために うつとかはきく おほそらに ころもかりかね なきわたるなり
歌番3303 からころも うつこゑきけは つききよみ またみぬひとを そらにこそきけ
歌番3304 くさまくら ゆふかせさむく なりぬるを ころもうつなり やとやからまし
歌番3305 かりなきて ふくかせさむみ からころも きみまちかてら うたぬひそなき
歌番3306 ふくかせに ちらすもあらなむ うめのはな わかかりころも ひとよやとさむ
歌番3307 おいさみを ひとなとかめそ かりころも けふはかりとそ たつもなくなる
歌番3308 かりころも こころのうちに ほさなくに なとかみたれて ものおもひをする
歌番3309 かすかのの わかむらさきの すりころも しのふのみたれ かきりしられす
歌番3310 すりころも きるとゆめみつ うつつには いつれのひとの ことかしけけむ
歌番3311 すみよしの とほさとをのの まはきもて すれるころもの さかりすきゆく
歌番3312 みちのくの しのふもちすり たれゆゑに みたれそめにし われならなくに
歌番3313 あさりする あまをとめこか そてなれや ぬれにしころも ほせとかわかす
歌番3314 かにかくに ひとはいふとも おりつかむ わかはたものの しろあさころも
歌番3315 ことしゆく にひしまもりの あさころも かたのまよひを たれかとりみむ
歌番3316 あさころも きれはなつかし きのくにの いもせのやまに をまけわきもこ
歌番3317 とこしへに なつふゆゆけや かはころも あふきはなたす やまにすむひと
歌番3318 きみにより あまのぬれきぬ われきたり おもひにほせと ひるよしもなし
歌番3319 なほきたれ あまのぬれきぬ われほさむ よそふるひとの にくからなくに
歌番3320 にくからぬ ひとのきすなる ぬれきぬは いとひかたくも おもほゆるかな
歌番3321 とひしをる ひともなきみの ぬれきぬは あめのしたにそ ふりてきせける
歌番3322 ぬれきぬと ひとにいはすな きくのつゆ よはひのふとそ わかそほちつる
歌番3323 よそにても にくからすたに あらはこそ しほるしほるも ぬれきぬをきめ
歌番3324 よとともに わかぬれきぬと なるものは わふるなみたの きするなるへし
歌番3325 みやこいてて けふみかのはら いつみかは かはかせさむみ ころもかせやま
歌番3326 いまさらに こふともきみに あはむかも ころもかへすよ ゆめにみえつつ
歌番3327 しろたへの いもかころもに うめのはな かにもいろにも わきそかねつる
歌番3328 そらにとふ あまのはころも もえてしかな うきよのなかに かくものこさし
歌番3329 うめのはな かをふきつくる はるかせに ころもをそめは ひとやとかめむ
歌番3330 あつふすま なこやかしたに ねたれとも いもとしねねは はたへさむしも
歌番3331 にはにたつ あさてこふすま こよひたに つまよしこせぬ あさちこふすま
歌番3332 きへひとの またらふすまに わたせはた いりなましもの いもかをささに
歌番3333 たちておもひ ゐてもそおもふ くれなゐの あかもたれひき いにしすかたを
歌番3334 やまふきの にほへるいもか はねいろの あかもかすかた ゆめにみえつつ
歌番3335 ひとめもる きみかまにまに われともに はやくおきゐて ものすそぬらす
歌番3336 はしきやし あはぬこゆゑに いたつらに このかはのせに ものすそぬらす
歌番3337 いかならむ ひのときにかも わきもこか もひきのすかた あさあけにみむ
歌番3338 なにせむに へたのみるめを おもひけむ おきつたまもを かつくみにして
歌番3339 おもふとも こふともあはむ ものなれや ゆふてもたゆく とくるしたひも
歌番3340 ささらかた にしきのひもを ときそけて あまたはねすみ たたひとよのみ
歌番3341 しらひもを ゆふされかけて ときつれは きみかみそぬふ ひとのしまみゆ
歌番3342 よそにして こふれはくるし いれひもの おなしこころに いさむすひてむ
歌番3343 うはたまの よるのしたひも とけてねよ わかたましひは ゆめにてもこむ
歌番3344 おくやまの しけいりにたちて まとふとも いもをむすひし ひもをとかめや
歌番3345 したひもは とけてやつけぬ たまほこの しをりもしらぬ そらにわふれは
歌番3346 なそひとの かれはつれなき したひもの とけはゆはむと いひてしものを
歌番3347 かきほなす ひとはいへとも こまにしき ひもときあくる きみもあらなくに
歌番3348 こひしとは さらにもいはし したひもの とけむをひとは それとしらなむ
歌番3349 したひもの しるしとするも とけなくに かたるかことは こひすそあるへき
歌番3350 くさまくら むすふとしけむ よひよひは とけさりきやは したのいれひも
歌番3351 わかきぬの ひもとけわたる まゆねかく なれにしきみは こふとしらすも
歌番3352 めつらしき ひとをみむとや しかもせぬ わかしたひもの とけつつあらむ
歌番3353 わきもこか ゆひてしひもを とかめやは たえはたゆとや たたにあふまて
歌番3354 おもへとも ゆめにもみえぬ わきもこそ こよひみえつる ひともきまたむ
歌番3355 けふたいかか まさにおよはむ つくはねの むかしのひとの きけむそのひも
歌番3356 やまさとに ひとめみしより わかこふる はなのしたひも いかにとくらむ
歌番3357 あけたては まつさすひもの いとよわみ たえてあはすは なそいけるかひ
歌番3358 ちきりけむ ことやはたかふ したおひの めくりてあへる つまやなになり
歌番3359 したおひの みちはかたかた わかるとも ゆきめくりても あはむとそおもふ
歌番3360 あつまちの みちのはてなる ひたちおひの かことはかりも あひみてしかな
歌番3361 いにしへの しつはたおひを むすひたれ たれといふとも きみにはまさし
歌番3362 みつかきの ひさしきよより こひられは わかおひゆへあふ あさにひことに
歌番3363 たきものの かはかりおもふ このころの ひとりはいかて きみにしらせむ
歌番3364 たきものの このしたけふり ふすふとも われひとりをは しなすましやは
歌番3365 このしたに ひとりやわひし たきものの それもおもひに たへてとかきく
歌番3366 わかためは ねふたきものを ひとりしも おきあかさしと おもほゆるかな
歌番3367 つゆはかり たのめおかなむ ことのはに しはしもとまる いのちありやと
歌番3368 きえはてて みよりもまさる ことのはを なみたならては なににかはせむ
歌番3369 たのめこし ことのはいまは かへしてむ わかみふるれは おきところなし
歌番3370 あきこそは もみちもちらめ たつたやま はるとてもなと ことのはのなき
歌番3371 ちきりおきし ことのはかはる うきよには ふみもこころも やかてこそふれ
歌番3372 よのなかに たえていつはり なかりせは たのみぬへくも みゆるたまつさ
歌番3373 たまつさも もてこぬものを あきかせの ふきくることに ひとそこひしき
歌番3374 うちよする なみやけつらむ はまちとり ふみこしあとの うらみれとなき
歌番3375 ひとしれぬ みちとおもはすは たまつさな うちたくひつつ ゆくへきものを
歌番3376 やれはをし やらねはひとに みえぬへし なくなくもなほ かへすまされり
歌番3377 やれといはむ わかうしろみも おもほえす こころともれて たたにけならむ
歌番3378 はなちらす えたやあるとて うくひすの ふみみてかくに つゆそおきける
歌番3379 かひなしと おもひなけちそ みつくきの あとそちとせの かたみともなる
歌番3380 たまつさの あるかなきかに ゆくみつの たえせぬきみを あひみてしかな
歌番3381 わすられむ ときしのへとそ はまちとり ゆくへもしらぬ あとをととむる
歌番3382 みつくきの かよふはかりを すくせにて きくもなからに はてねとやきく
歌番3383 あらをたを うちかへすとも はまちとり なほふみつけて あとはととめよ
歌番3384 はるかすみ たちなからみし はななれと ふみとめてける あとそうれしき
歌番3385 きみかため いはふこころの ふかけれは ひしりのみよの あとならへとそ
歌番3386 をしへたく ことたかはすは ゆくすゑの みちとほくとも あとはまとはし
歌番3387 やまのをの かつらはたえて なけれとも こゑはのこせり きくひとのため
歌番3388 ひさにふる たまのをことの ことならは いとかくはかり われこひむかも
歌番3389 あきかせに かきなすことの こゑにさへ はかなくひとの こひしかるらむ
歌番3390 やまとこと ひとにありせは いかはかり ことなつかしき ことちきかまし
歌番3391 たれそこの こゑなつかしき やまとこと ねさめわひしき ひとのきかくに
歌番3392 ことのねを ききしるひとの ありけれは いまそたちいてて ををもすくへき
歌番3393 あしひきの やましたみつは ゆきかへり ことのねさへに なかるへらなり
歌番3394 むつのをの よりめことにそ かはにほふ ひくをとめこか そてやふれつる
歌番3395 みやこまて ひひきかよへる からことは なみのをよりて かせそひきける
歌番3396 なみのおとの けさからことに きこゆるは はるのしらへや あらたまるらむ
歌番3397 ことのねに みねのまつかせ かよふなり いつれのをより しらへそめけむ
歌番3398 こととれは なけきさきたつ けたしくも ことのしたひに いもやかくれる
歌番3399 ひくことの ねのうちつけに つきかけを あきのゆきかと おとろかれつつ
歌番3401 あつまこと はるのしらへを かりしかは かへしものとは おもはさりけり
歌番3402 かへしても あかぬこころを そへつれは つねよりこゑの まさるなるらむ
歌番3403 まつのおとを ことにしらふる まつかせは たきのいとをや すけてひくらむ
歌番3404 いかならむ ひのときにかも こゑしらむ ひとのひさのうへ わかまくらせよ
歌番3405 こととはぬ よにもありとも わかせこか たなれのみこと つちにおちめやも
歌番3406 からたけの こちくのこゑも きかせなむ あなうれしとも おもひしるへく
歌番3407 ふえたけの ххххねこそ かなしけれ ひとふしにして よのみすくれは
歌番3408 ひとりふし いとかくたけの ねなれとも こちくのこゑは きかしとそおもふ
歌番3409 いへはえに ふかくかなしき ふえたけの よこゑやたれと とふひともかな
歌番3410 こまふえの こまにわれのり なくさなむ みきともいはし あなにくけとも
歌番3411 ふえたけの ひとよむなしき こゑにたに よそにふけとも おもはさりしを
歌番3412 ふえたけの いけのつつみは とほくとも こちくてふなを わすれさらなむ
歌番3413 かつらきの こつひこまゆみ あらきにも よらめやきみか わかなつけかね
歌番3414 あつさゆみ ひきののつつら すゑつひに わかおもふひとに ことのしけけむ
歌番3415 あつさゆみ いそへのこまつ たかよにか よろつよかねて たねをまきけむ
歌番3416 あつさゆみ ひきみゆるめみ こすはこす こはこそをなと よそにこそみめ
歌番3417 あつさゆみ ひけはもとすゑ わかかたに よるこそまされ こひしきことは
歌番3418 あつさゆみ はるかなれとも わすられて きみおもひつるの たえむものかは
歌番3419 あつさゆみ はるのやまへに いるときは かさしにのみそ はなはちりける
歌番3420 あつさゆみ すゑのたつきは しらねとも こころはきみに よりにしものを
歌番3421 あつさゆみ ひきはりもちて ゆるさすと わかおもふいもは しるやしらすや
歌番3422 あつさゆみ つるとりはけて ひくひとは のちのこころを しるひとそひく
歌番3423 あつさゆみ ゆつかまきかへ なかみさし さらにひくとも きみかまにまに
歌番3424 てもふれて つきひへにける しらまゆみ おきふしよるは ものをこそおもへ
歌番3425 かくこひむ ものとしりせは あつさゆみ すゑのなかころ あひみてましを
歌番3426 あまのはら ふりさけみれは しらまゆみ はりてつけたる よるみちよにも
歌番3427 おくやまに たつひとつきの しらまゆみ まろやわりなく ひとをうらむる
歌番3428 みこもかる しなののまゆみ わかひかは うまひとさらひて いなといはむかも
歌番3429 みちのくの あたちのまゆみ たむれとも こころこはさは やますさりける
歌番3430 ますらをの ゆすゑふりたて いつるやを のちみむひとを かたりつくかに
歌番3431 つるきたち なのをしけくも われはなし きみにあらすて としのへぬれは
歌番3432 つるきたち みるとりそふる ますらをそ こひのみたれの もとにはありける
歌番3433 うちなけき はなをそひつる つるきたち みにそふいもか おもひくらしも
歌番3434 つるきたち みになそそふる ますらをや こひてふものは しのひかねつも
歌番3435 つるきたち もろはのうへに ゆきふれて しにかもしなむ こひつつあらすは
歌番3436 つるきたち みにとりそふと いめにみつ いかなるけそも きみにあはむため
歌番3437 たちのしり たまくらたゐに いつまてか いもをこひつつ いへこひをらむ
歌番3438 あふことの かたなさしたる ななつこの さやかにひとの こひらるるかな
歌番3439 ひとことに しけしやきみに ふたさやの いつをへたてて こひしかるらむ
歌番3440 ななつこの さやのくちくち つとひつつ われをかたなに さしてゆくなり
歌番3441 かけつれは ちちのこかねも かすしりぬ なそわかこひの あふはかりなき
歌番3442 いまこむと いひしはかりに かけられて ひとのつらさの かすはしりにき
歌番3443 くれはかり われをななめに たのめつつ さよちかきみか かけてはかるか
歌番3444 わかつめる いたつらいねの かすならは あふはかりなし なににかかけまし
歌番3445 なにしおはは たのみぬへきを なそもかく あふきゆゆしと なつけそめけむ
歌番3446 よのひとの いみけるものを わかために なしといはぬは たれかうきなり
歌番3447 ふなてする きみにたむくと ふくかせは なれてとしへし あふきなりけり
歌番3448 そへてやる あふきのかせし こころあらは おもはむひとの てをなはなれそ
歌番3449 ゆゆしとて いむともいまは かひあらし よのつきことは これにつけても
歌番3450 いまはとて こきつるふねの さはりなみ あふきのかせは へにもかけなむ
歌番3451 あふけとも つきせぬかせは きみかため わかこころさす あふきなりけり
歌番3452 あまのかは あふきのかせに きりはれて そらすみわたる かささきのはし
歌番3453 かはほりに わかはりこむる すすしさを おもふかかたの かせそいとふな
歌番3454 ひさかたの あまてるつきを あみにして わかおほきみは かさにつくれり
歌番3455 ひさかたの あめにはぬれす ふるかこと おつるなみたは さすかさそなき
歌番3456 かきつはた ささぬのすけほ かさにぬひ きむひをまつに としそへにける
歌番3457 おしてるや なにはすかかさ おきふるし のちはたかきむ かさならなくに
歌番3458 わきもこか かさのかりての わすみのに われはいりぬと いもにつけこせ
歌番3459 かさとりの やまをたのみし かひもなく しくれにそてを ぬらしてそゆく
歌番3460 ちるまては きてもみるへく はるさめに われをぬらすな うめのはなかさ
歌番3461 かさなしと ひとにはいひて あまつつみ とまりしきみか すかたおもほゆ
歌番3462 わきもこか たもとをたのみ まののうらの こすけのかさを きてそきにける
歌番3463 きみかきる みかさのやまに ゐるくもの たえてはつかる こひもするかな
歌番3464 わかせこか つかひをまつと かさもきて いてつつそみし あめのふらくに
歌番3465 ひとかたの あめふるひひを わかことに みのかさもきて くるひとやたれ
歌番3466 はなかたみ めならふひとの あまたあれは わすられぬらむ かすならぬみは
歌番3467 きみをまた うつつにみぬや あふことの かたみにもりぬ みつはありとも
歌番3468 あかてこそ おもはむなかは わかれなめ そをたにのちの わすれかたみに
歌番3469 いせのうみの おきつしらなみ たまにもか つつみていもか いへつとにせむ
歌番3470 みてのみや ひとにかたらむ さくらはな てことにをりて いへつとにせむ
歌番3471 たまつしま みれともあかす いかにして つつみもたらむ みぬひとのため
歌番3472 うちかはに おふるすかもを かははやみ とらすきにけり つとにせましを
歌番3473 あしひきの やまゆきしかは やまひとの われによしめし やまつとそこれ
歌番3474 をみなへし あきのはきをれ たまほこの みちゆきつとと こはむこのため
歌番3475 ふくかせの わかたもとにし つつまれは おもふひとには つとにしてまし
色
歌番3476 あはれとも うしともおもふ いろなれや おつるなみたに そてのしむらむ
歌番3477 いろみえて うつろふものは よのなかの ひとのこころの はなにそありける
歌番3478 そめはこそ いろともみえめ すみそめの おほつかなくも たつわかなかな
歌番3479 としふれと いろもかはらぬ きみをしも いかなるいろに おもひそめけむ
歌番3480 よのなかの ひとのこころは はなそめの うつろひやすき ものにそありける
歌番3481 いろなしと ひとやみるらむ むかしより ふかきこころに そめてしものを
歌番3482 おほつかな なにのいろとは しらねとも たたふかくのみ おもひそめけむ
歌番3483 たかまきし くれなゐなれか みわやまを ひたくれなゐに にほはせるらむ
歌番3484 かくらくの とませのやまを すそへらと とよすめかみの まきしくれなゐ
歌番3485 くれなゐの やしほのころも かくしあらは おもひそめすそ あるへかりける
歌番3486 かくはかり こひしわたらは くれなゐの すゑつむはなの いろにいてぬへし
歌番3487 たつたかは いろくれなゐに なりにけり やまのもみちも いまはちるらし
歌番3488 いかにして こひをかくさむ くれなゐの やしほのころも まくりてにして
歌番3489 くれなゐの はつはなそめの いろころも おもひしこころ われはわすれす
歌番3490 くれなゐの はなにしあらは ころもてに そめつきもちて ゆくへきものを
歌番3491 しろたへの わかころもてに くれなゐの しみなむこころ うつろはむやは
歌番3492 くれなゐに そめしころもの たのまれす ひとをあくにし かへるとおもへは
歌番3493 ひとしれす おもへはくるし くれなゐの すゑつむはなの いろにいてなむ
歌番3494 よそにのみ みつつをこひむ くれなゐの すゑつむはなの いろにいてすとも
歌番3495 おもふにも いまはあまりぬ くれなゐの いろにいてなむ ひとののるへく
歌番3496 くれなゐに そてそむあきは すきにしを はるさへなにの いろまさるらむ
歌番3497 くれなゐに そめてしころも あめふりて にほひはすとも うつろはむやも
歌番3498 くれなゐの いろにはいてし かくれぬの したにかよひて こひはしぬとも
歌番3499 あきののは からくれなゐに なりにけり いくしほしくれ ふりてそめけむ
歌番3500 むらさきの ひともとゆゑに むさしのの くさはなへても なつかしきかな
歌番3501 むらさきの いろこきときは めもはるに のなるくさきも あはれなりけり
歌番3502 むらさきの ねはふよしのの はるののは きみをこひつつ うくひすそなく
歌番3503 からひとの ころもそむてふ むらさきの こころにしみて おもほゆるかも
歌番3504 こむらさき ほすひはくれぬ いつくにか たまやとからむ さとはしにして
歌番3505 おもふとも したにやあはむ むらさきの ねすりのころも いろにいつなゆめ
歌番3506 つくまのに おふるむらさき きぬにすり またもきなくに いろにいつらむ
歌番3507 しらねとも むさしのといへは かこたれぬ よしやそこそは むらさきのゆゑ
歌番3508 おもふとも こふともいはし くちなしの いろにころもを そめてこそきめ
歌番3509 やまふきの はないろころも ぬしやたれ とへとこたへす くちなしにして
歌番3510 くちなしの いろにこころを そめしより いはてこころに ものをこそおもへ
歌番3511 ときはなる まつのみとりも はるくれは いまひとしほの いろまさりけり
歌番3512 したもみち ありけるものを まつのはの うへはみとりを たのみけるかな
歌番3513 うみにのみ ひちたるまつの ふかみとり いくしほとかは しるへかるらむ
歌番3514 あさみとり のへのかすみは つつめとも こほれてにほふ はなさくらかな
錦綾
歌番3515 おもふとち まとゐせるよは からにしき たたまくをしき ものにさりける
歌番3516 しものたて つゆのぬきこそ もろからし やまのにしきの おれはかつちる
歌番3517 なそさらに あきかととはむ からにしき たつたのやまの もみちしるきを
歌番3518 なほさりに あきののやまを わけゆけは にしきをきぬに きぬひとそなき
歌番3519 かみなひの みむろのやまを わけゆけは にしきたちきる ここちこそすれ
歌番3520 たちよりて みるへきひとの あれはこそ あきのはやしに にしきしるらめ
歌番3521 もみちはを をしきにしきと みしかとも しくれとともに ふりててそこし
歌番3522 あきかせの うちふくからに のもやまも なへてにしきに おりかへすかな
歌番3523 もみちはを わけつつゆけは にしききて いへへかへると ひとやみるらむ
歌番3524 このもとに おらぬにしきの とまれるは くものはやしの にしきなりけり
歌番3525 からにしき ひもときあけて ゆふへとも しらぬいのちに こひつつやあらむ
歌番3526 あきかせに ちるもみちはは をみなへし やとにおりきる にしきなりけり
歌番3527 たつたかは もみちはおちて なかるなり わたらはにしき なかやたえなむ
歌番3528 もみちはの ふりしくあきの やまへこそ たちてくやしき にしきなりけれ
歌番3529 もみちはの なかるるあきは かはことに にしきあらふと ひとやみるらむ
歌番3530 かきほなる ひとといへとも からにしき ひもときあくる ひともなきかな
歌番3531 なつひきの てひきのいとを くりかへし ことしけくとも たえむとおもふな
歌番3532 かたいとの これかれよそに よられつつ あひなむのちは なにかたゆへき
歌番3533 かふちめの てそめのいとを くりかへし いとにありとも たえむとおもふな
歌番3534 たしまいとの よれともあはぬ おもひをは なにのたたりに つけてはらへむ
歌番3535 かくはかり やめにかくてふ たしまいとの まゆめかきては うれしかりけり
歌番3536 みたれいとの われにはとけす ありしかと たつねてよらむと おもふこころあり
歌番3537 しらぬひの つきしのわたは みにつきて またはきねとも あたたかにみゆ
歌番3538 たまかはに さらすてつくり さらさらに むかしのいもか こひしきやなと
歌番3539 みちのくの けふのさぬのの ほとせはみ またむねあはぬ こひもするかな
歌番3540 たちぬはぬ きぬきるひとも なきものを なにやまひめの ぬのさらすらむ
歌番3541 たかために かけてさらせる ぬのなれや よをへてみれと きるひともなき
歌番3542 ぬしならて さらせるぬのを たなはたに わかこころとや けふはかさまし
歌番3543 しらかはに さらすぬのにも あらなくに なそわかこひの ここちかなしき
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