人身事故らしい。
ここは帰りの電車のなか。
救出作業がけっこう大変らしく、
電車が動き出すまで40分ぐらいかかるという。
メチャ混みの止まった電車内で、つり革で体を支えつつ、
松村雄策「僕の樹には誰もいない」を読む。
死後はじめて出た著作で、遺作になるんだろうか。
冒頭の章は、当然のようにジョンのこと。
そうだ。昨日はジョンの命日だったんだよな。
忘れていたわけではないのだけど。
と思いながら読み進める。その次の章もジョン。
「ウソつけ、お前、忘れていただろう。
ジョンの命日なんかどうでもいいんだろう」
と松村さんに言われているような気がしてきた。
電車を降り、駅を出て歩く。
ベンチで続きを読もうと思ったけど、寒くて寒くて。
すみません。忘れていたわけじゃないんですけど。
ぶつぶつとつぶやきながら、歩く。