Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

愛と青春のプロポーズ

2024年08月28日 | いやはやなんとも
「結婚しよう」
「え」
「だから、結婚しよう」
「なに言ってんの?」
「聞こえないの? 結婚しようって言ってるんだよ」
「聞こえてるよ、あたしが言いたいのは、なんでそんなコト言うのかってことよ」
「いや、だって。ネットのニュースで」
「ニュースがどうしたのさ」
「その、結婚したら60万もらえるって」
「なにそれ」
「移住婚っていうやつがあるらしい」
「移住婚?」
「東京23区に住んでる女性が結婚で地方に移住するともらえるんだ」
「なにそれ、女だけなの?」
「そうみたい」
「アホらし! なんであたしが東京を出ないといけないのよ!」
「いや、でも60万だよ」
「あんただって東京に住んでるんじゃない」
「それはそうだけど、コレをきっかけにさあ」
「あんたの実家って名古屋じゃない」
「そうだよ」
「あんた名古屋が大嫌いで東京に出てきたって言ってたよね」
「いや、まあ。いまはそれほどでも」
「あたしは名古屋に縁もゆかりもないんだから、別に住みたくないよ」
「いや、俺、最近ドラゴンズの応援がしたくってさあ」
「知らないよ。あんな弱小球団」
「あ、ひどいコト言うなあ。名古屋がそんなに嫌いなのか?」
「別に何も思ってないよ。大してドラゴンズにも興味ないし」
「これを機会にプロポーズしたんだぜ」
「なにが “だぜ” よ? 金のために? 60万ぽっちで? あたしを名古屋に売り飛ばすつもり?」
「そ、そんなつもりはないよ」
「アホくさ! 名古屋に行っても仕事が見つかるかどうかわかんないじゃない」
「俺、親の鉄工所継ぐからさ」
「ウソばっかり! あんな鉄工所潰れちまえって言ってたじゃないの」
「いや、あれから考えが変わって、親父の鉄工所、けっこう地元で頑張ってるんだ」
「なんかいい話に持っていこうとしてる? ダマされないよ!」
「俺と結婚する気はないってこと?」
「そうね。60万であたしを名古屋に売り飛ばすつもりなら御免よ」
「物騒なコト言うなよ。そんなつもりはなくてさ」
「じゃあどんなつもりなのよ? 60万に目がくらんで、名古屋に引っ込んでドラゴンズ応援して、鉄工所を細々と経営して…あたしが専業主婦やって…うーん、それも悪くないかも」
「おお。じゃあ結婚してくれるの?」
「大阪の●●くんのところに嫁ごうかな。●●くんの実家不動産屋だし、あたしオリックスファンだし」
「ううう…つまりはドラゴンズが嫌いなのか?」
「あんたの次に嫌いかも」

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