Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

紋切り型を遙かに超えて

2021年11月15日 | 読んでいろいろ思うところが
武田砂鉄「コンプレックス文化論」(文春文庫)を読む。
天然パーマとか下戸、背が低い、ハゲ、といった
コンプレックスを持っている人のパワーが文化をつくる、
という仮定のもと、該当する人たちにインタビューを試みる本。
なかには、親が金持ち、実家暮らし、遅刻など、
そういうものもコンプレックスになるんだという驚きと共に、
どんな着地点になるのだろう、
と興味津々に読み通したのでした。


コンプレックスをバネにして、努力しました、
成功しました。逆に武器にしました、
といった体験談はよく聞く。
でも、本書に出てくる人たちは、
コンプレックスに対して、とても複雑だ。
克服した人も、たまに苛まれる人も、
うまく飼い慣らしている人も、それぞれ複雑。

たとえば「下戸」がコンプレックスな人は、
「なんだよ、呑めないのか」という同調圧力に苛まれつつ、
居酒屋でなくバーミヤンでドリンクバーを頼み、
日々、自己研鑽に励むわけで、
著者はそうした人たちを応援する。

「遅刻」がコンプレックスな章では、
安齋肇との対談が爆笑もの。
遅刻が軽犯罪なのは明らかだと話す安齋さんの、
「すみません〜」と言って遅れてくる姿は
結局のところ、周りの人たちを笑顔にする不思議。
遅刻だけでなく、締切を守らない人を絶対的に許さない
いまの風潮に溜息をつく著者。

さらに「背が低い」がコンプレックスな章では、
フラワーカンパニーズのボーカル鈴木圭介が登場。
「俺が180cm超えてたら、
東京ドームやってるんじゃないですか」と
自嘲気味だったと思いきや、
背が低いからこそできたことも大いに語る
低身長の長所も短所も味わい尽くしたあとに、
あの切実なロックンロールがあると著者は分析する。

そうか。確かにフラカンの「深夜高速」は名曲であり、
あのデカくてほとばしるような鈴木圭介のボーカルは、
159cmという身長があったからこそ、なのだろうか。

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