Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

ダダ漏れが止まらない

2023年04月18日 | 映画など
城定秀夫監督「銀平町シネマブルース」を見る。
ふうん。ひなびた地方の町にある
ミニシアターに集う人々の群衆劇ですってね。
そんなのいい映画に決まってるじゃないですか。
で、いま見終わったんですけどね、
体じゅうのいろんなところから液体がチビリまくりの
ビショビショでございます。だって、だってなんだもん。


ホラー映画でちょっと名を馳せた映画監督が主人公。
とある理由で監督ができなくなり、
借金を抱えてホームレス寸前になるが、
映画館の館主に拾われ、バイトとして働くことになる。
この主人公が映画への思いを取り戻し再生していくとともに、
映画館に出入りするさまざまな人たちの
細かなドラマが積み重なっていく。
100分ほどの映画なのに、20人近くの登場人物が
よくもまあ見事に散りばめられているなあと思ったら、
脚本はいまおかしんじ。さすがだと思う。

経営が悪化した映画館のために、
映画祭を企画して、クラファンで盛り上げたりと
個人経営のミニシアターのリアルな現状も垣間見える。

俳優はみんな素晴らしく、
一人ひとり挙げるとキリがないけれど、
本作を見たひとは、必ず共感できる人物が見つかると思う。
映画館のファンクラブに
映画監督志望の中学生がいて、
声変わりしてないところがほっこりするし、
映写技師を演じた渡辺裕之がやたらに渋くて、
でもこの人はもういないんだなとしみじみしたり、
売れない役者を演じた中島渉。やっぱりコメディセンス抜群だなとか。
いい映画にはやっぱり片岡礼子さんが出てるな、とか。

特筆すべきは、主人公のホームレス仲間で、
映画だけが生き甲斐の
どうしようもない駄目なおっさんを演じた宇野祥平。
城定作品の常連で、本作でもいい味を出してくれました。
というか、見ていて「真夜中のカーボーイ」の
ダスティン・ホフマンを彷彿とさせるというか、
おかしくて、哀しくて、惨めったらしいのが、いい。
「カサブランカ」を見て号泣する禿頭のおっさんが
これほど美しく撮られているとは。

彼を見たシネフィルは、ああオレも(あたいも)、
宇野祥平みたいになりてえな、と理想を語るだろうけど、
それ、たぶん無理ですよ。
シネフィルの多くは小市民だから、
いざというときは映画なんか知らないよ、と
そそくさと安全地帯に逃げ込むのがオチだったりしませんか。
自分もそうです。残念ながら。
だからこそ、本作の宇野祥平は素晴らしいのです。

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