トッド・ヘインズ監督「キャロル」を見る。
美しい映画だと聞いていたけれど、
確かに美しい。それは映像が美しいだけでなく、
登場人物たち、特に主役の二人の佇まいとその精神性にいたるまで
美しいなあ、と。
簡単に言ってみれば、
50年代のアメリカを舞台にした、
人妻と若い女の禁じられた恋を描いたメロドラマなのだけど、
人妻キャロルの意味深な笑みと、
写真家志望の若い女テレーズの純粋さ。
そんなふたりが、クルマに乗って旅をするロードムービー的展開になり、
ついには結ばれるまでの高揚感に心を奪われる。
女同士の恋愛ということで、
題材は非常に現代的ではあるけれど、
当時の風俗や衣裳、そして保守的な雰囲気もふくめて
美術設定をしたスタッフが優秀なのだろう。
また淡い光線を効果的に生かし、
クラシカルな画面づくりに腐心した撮影スタッフもお見事。
映画って総合芸術なのだな、とあらためて思った次第。
ケイト・ブランシェットって
ほんと上手な女優さんだなあと思う。
妖しくて、艶めかしくて、繊細だと思っていたら、
とんでもない芯の強さを示す人妻役。
「ブルー・ジャスミン」でアイデンティティがグラグラしていた女を
演じていた人とは思えないというか。
テレーザを演じたルーニー・マーラも可愛らしい。
受けの芝居に徹しておきながら、愛を貫くピュアな魅力が。
聞くところによると、
最初はこの役をミア・ワシコウスカが演じるはずだったらしく、
それはそれで見てみたかったという気もするけれど、
ルーニー・マーラで大正解だったと思う。
とにもかくにも、名作の風格あふれる映画でしょう。
お前、監督、分かってるな、と。
この映画、ここで終われ!って瞬間にブラックアウトだよ。すばらしい。愛はああ描かねば。
SFXとかじゃなくて、普通に視線をとらえるだけで、うわっ!ってことなんですよ。
本当に、映画っていいなって思いました。