クリス・クリストファーソン追悼ということで、
少し前、ずいぶん久しぶりに見て、書き途中だった
「アリスの恋」についてつらつらと。
マーティン・スコセッシ監督「アリスの恋」を見る。
遠い遠い昔。テレビでやっていたのを見たきりで、
いい映画だったという記憶がうっすらとあるのだけど、
その認識は間違っていた。いい映画どころか、
とんでもない傑作ではないか。
そんな映画を35ミリで見られるとは
ありがとう早稲田松竹。
本作は日本で初めて公開されたスコセッシ作品であり、
ほとんどの日本人は「明日に処刑を…」も
「ミーンストリート」も見ていなかったはず。
監督の名ではなく、作品自体が評価されたようで、
実際、主演のエレン・バーンスティンが
オスカー主演賞を獲ったし、キネ旬ではベストテン3位。
かなり高い評価を受けたのに、
なぜか忘れられた映画になっている感がある。
才気走ったカット割りやカメラワーク、
Tレックスやレオン・ラッセルなどの
ロックミュージックの使い方など、
スコセッシらしい演出が見受けられるけれど、
これはバーンスティンの映画であり、
女性のための映画であることがわかる。
今見ると、シスターフッド的な側面も強い。
DV夫と死に別れ、
生意気な息子と共に、
仕事を探しながら旅をする主人公。
どうしてもDV男に惹かれてしまう性分もありつつ、
比較的まともな男である
(というか、本作に出ている男の中で、いちばん真っ当な)、
クリス・クリストファーソンの愛を受け入れる物語で、
最後の最後にほっこりして終わる。
本作のクリストファーソンは、
けっこうマッチョではあるけれど、
少なくともバーンスティンを尊重する姿勢はあり、
対話を重んじる傾向も感じられて好感が持てる。
50年前の映画とは思えない、かなり現代的で理想的な
男性像かもしれないと思ったりする。
追悼クリス・クリストファーソン。
本作は彼の代表作とは言えないかもしれないが、
いまだテーマは古びていないことがわかるし、
あらためて再評価するべきだと思うわけです。
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