那須博之監督による
「ビー・バップ・ハイスクール」(1986)の白眉は、
学校の屋上でツッパリの
清水宏次朗と仲村トオルに向かって、
「あんたたちは転落していくんだ。
そしてどこかの路上で
刺されて犬のように死ぬんだわ」
と言い放つ中山美穂にカメラがぐんと寄る場面に尽きる。
ツッパリの二人を突き放しつつも、
優しく包み込む幸福感と高揚感。
映画の作り手たちが一気に彼女にフォーカスを当て、
その魅力を炸裂させる。
あの場面はまさに映画自体が躍動していた。

アイドル歌手としての中山美穂には
それほど興味はなかったのが正直なところ。
もちろん多くのヒット曲は知っているけれど、
とてもファンとは言えず、語る資格などない。
でも、映画運にめぐまれた人で
シネフィルの記憶に
永遠に刻みつけられる俳優のひとりだと思う。
岩井俊二監督「Love Letter」が
代表作という声に異論はまったくないが、
上記の「ビーバップ」2作に、
金子修介監督「どっちにするの」。
ホイチョイの「波の数だけ抱きしめて」、
竹中直人監督「東京日和」と、
いい映画に出てくれました。
時代が時代なら、岸惠子みたいな
大女優になっていたかもしれず、
「雪国」の駒子とか見てみたかったなあ、と。
残念です。合掌。
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