Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

思いは交錯するか

2023年09月29日 | 映画など
チョン・ジュリ監督「あしたの少女」を見る。
パワハラきわまるブラック企業に
研修生として入った女子高生に起こった悲劇。
その痛ましい事件を追いかける刑事の執念。
1本の映画で2本見たかのような重量感と、
なんといってもペ・ドゥナの存在感。彼女に尽きる。


前半は就職を控えた女子高校生ソヒの物語。
実習生として働き始めたコールセンターの
パワハラまみれの実態。働き手の労働力を搾取し、
利益に邁進する非人間的なエピソードが連なり、
それはそれは身の凍るような展開。
現状を打破し、抵抗するソヒの姿は美しいが、
たかが一人の女の子の抗いなど、おかまいなしの世の中を
見せつけられ、絶望しかないというか。

そんなソヒの生き様を丁寧に捜査する
刑事ユジンが主人公となる後半。
ほぼ全編無表情のこの刑事。
ソヒに起こった悲劇が明らかになっていくにつれて、
目に怒りの炎が立ちこめてくる。
凍りつくような映画のなかに伝わってくる体温。
そのあたたかみを感じることで、少しの救いがもたらされる。

「吠える犬はかまない」や
「子猫をお願い」「リンダリンダリンダ」などで
世界中のシネフィルを虜にしたペ・ドゥナ。
40歳を過ぎて、第二の全盛期を迎えていると思う。
是枝監督の「ベイビー・ブローカー」と同じく、
静かな芝居のなかに、感情のかたまりのようなものが
湧き上がってくる感じが素晴らしい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

草木も喜ぶ辰の刻

2023年09月29日 | 日々、徒然に
NHK朝の連続テレビ小説「らんまん」が終了。
朝ドラを見続けて
10年ほどの若輩者(おっさんだけど)が
言えることではないけれど、名作と断言したい。
半年間、ほんとに楽しませてもらいました。


植物学者、槙野万太郎の
草花に捧げた生涯を演じきった神木くんの
頑張りは賞賛に値すると思う。彼がいてこその
ドラマだったし、安心して見られたというか。
万太郎を支える妻、寿恵子役の浜辺美波の可憐さも
相まって、夫婦愛を謳い上げる最終話も泣かせる。

主役のふたりだけでなく、
脇を固める登場人物たちの描写が丁寧で、
え、こんな脇役も掘り下げるの? と、
作り手の登場人物たちへの愛情はかなりのものがある。

長屋の住人たち、帝国大学の教授や学友たち、
故郷の酒造り問屋の人々など、顔を思い浮かべると
その台詞やたたずまいが脳内にくっきりと浮かんでくる。

俳優はみんな適材適所で好演だったな、と。
印刷所の親方を演じた奥田瑛二、
ああいうコミカルな役どころは新境地かもしれない。
借金取り役で1話だけ登場した六平直政もふくめて、
強面のおっさん(爺さん)ばかり見ていたのはいつものこと。

ヒロイン属性のある成海璃子を
長屋の奥さん役にしたり、高圧的な役が得意な田中哲司に
繊細な芝居をさせたところなど、
多くの俳優の役どころが広がる感じがしたのも楽しかった。

安藤玉恵、前原滉などは安定の脇役ぶりというか。
志尊淳や佐久間由衣もふくめて、
みなさん、さらに売れっ子になっていくことでしょう。

あとナレーションと、
最終週でのまさかのご本人登場。
神様(宮崎あおい)、どうもありがとうございました。

カメラワークも美術も、
まるで映画を見ているような作り込み。
朝ドラの終盤は、いつも予算がなくて
セットの使いまわし感が出ることがあるけれど、
本作は、最終盤で関東大震災を見事に描いていたし。
最後まで飽きることなく見られたわけで、大いに満足。

来週からは「ブギウギ」。
朝ドラ、とくに大阪制作だと芸道ものが多いなと。
戦後日本のアイコンとも言うべき笠置シズ子を
趣里さんがどう演じるのか楽しみです。。
脇を固めるのが草彅くんにギバちゃん、本上まなみ。
それに宇野祥平に岡部たかし、石倉三郎
と、怪しいおっさん(褒め言葉)が
たくさん登場するのも期待が高まる。

そして、なんと神様(蒼井優)も出るっていうじゃないですか。
「らんまん」の神様(宮崎あおい)に続く至福。
いっそ神様(蒼井優)主演でいいんじゃないですかね。
神様(蒼井優)が歌って踊ってくれるだけで号泣ですから。
いまからNHKと趣里さんに断りを入れたっていいですよ。
土下座でも泣き落としでも、いくらでもしてあげますから。
って、ダメですか。んもお。イケズなんだから。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする